1.グローバル
10億ドル以上のメガディールが世界のベンチャーキャピタルによる投資総額を押し上げる
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2025年第2四半期に注目すべきトレンド
産業用途に特化したAIソリューションに加え、先進的なロボティクスやレーザー光を使って測定するLiDAR(ライダー)といった実装技術は、今後ますます関心が集まる可能性があります。また、地政学的な緊張が続くなかで、防衛テックやサイバーセキュリティ分野への投資も活発化することが見込まれます。
一方で、世界的に貿易摩擦が激化するなか、多くの投資家は経済への影響を見極めようとしており、ベンチャーキャピタルによる投資は低調に推移する可能性があります。また、IPOをめぐる不透明感が続くなかで、M&Aは戦略的なイグジットを模索する企業にとって、依然として有力な選択肢であり続けると考えられます。
2.米国
投資総額は増加した一方で、投資件数は4四半期連続で減少
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2025年第2四半期に注目すべきトレンド
地政学的緊張や経済不安の影響から、一部のベンチャーキャピタルは慎重な姿勢を崩さずに投資を手控える可能性があります。一方で、AI分野への投資は引き続き米国における最大の注目領域になると予想されます。
今後は、小規模言語モデル(SLM)やロボティクス、自律型のAIエージェントなどから、防衛テック、医療・バイオテクノロジーといった産業向けのAIソリューションまで、幅広い分野へと拡大していくと考えられます。また、市場の不透明感が続くなか、戦略的なイグジットの手段として買収を選択する企業も出てくる可能性があり、M&A市場の動向が注目されます。
3.南北アメリカ
LLM分野でのメガディールに牽引され、投資総額が13四半期で最高額を記録
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2025年第2四半期に注目すべきトレンド
米国とカナダやメキシコをはじめとした世界各国・地域との間で進行する貿易摩擦により、南北アメリカ全体で不透明感が大きなテーマとなる可能性があります。多くの投資家が経済見通しや株式市場の動向、関税政策の方向性が見えるまで投資に慎重な姿勢を続けることから、IPO活動は引き続き控えめに推移すると予想されます。
カナダでは、小規模スタートアップが合併によって規模拡大を図る動きが加速する可能性があります。AIやクリーンテック分野は依然として投資家から高い関心を集めていますが、市場の不透明さから資金調達活動は抑えられると考えられます。メキシコでは、大手フィンテック企業が成長を遂げるなか、競争力維持や淘汰を避けるために合併を目指す動きがフィンテック市場において見られる可能性があります。
4.欧州
5億ドル超のメガディールが増加。投資家の関心が大規模なレイターステージへとシフト
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2025年第2四半期に注目すべきトレンド
米国との貿易摩擦が激化するなかで、欧州の投資家は慎重な姿勢を崩していないため、取引件数は引き続き低調に推移する可能性が高いと見られます。投資家とスタートアップの双方が、自社の事業運営全般や国境を越えた事業展開計画に及ぼす影響を見極めることに注力すると考えられます。このような不透明性にもかかわらず、AI、防衛テック、クリーンテック分野は、今後もメガディールを誘致し続ける分野として注目されます。
5.アジア
投資総額と投資件数ともに減少。シンガポールのデータセンター企業による12億ドルが最大案件に
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日本のベンチャーキャピタル市場は比較的安定を維持
日本のベンチャーキャピタル市場は比較的堅調に推移し、290件で9億200万ドルに達しました。アジア全体が下落するなか、日本のパフォーマンスは際立って安定していましたが、市場は逆風に直面しています。IPO活動の低迷が続いており、イグジットの機会が限られていると考えられ、ベンチャーキャピタルのパフォーマンスに対する期待が低下しています。さらに、継続的な資金調達に苦戦するスタートアップが増えており、2025年第2四半期に向けて売却の増加や倒産につながる可能性があります。
日本における宇宙テックに対する政府支援
日本では2025年第1四半期、AI、ディープテック、宇宙テック分野に加え、創薬やESG関連ソリューション、SaaS ITソリューション分野がベンチャーキャピタルから最も注目を集めました。なかでも宇宙テック分野は、超小型衛星企業ArkEdge Spaceが5,100万ドルを調達したほか、宇宙輸送および衛星開発企業Interstellar Technologiesが4,400万ドルを調達しました。
宇宙衛星セクターに対する政府の支援、国内でのロケット打ち上げ場所の準備、そして日本が宇宙関連の防衛予算を増やすとの期待から、宇宙テック分野は2025年第2四半期に向けてイノベーションと投資のホットな分野であり続けると考えられます。
2025年第2四半期に注目すべきトレンド
地政学的な不確実性が続くなか、アジアにおけるベンチャーキャピタルによる投資は依然として控えめな水準にとどまる可能性が高いと考えられます。
一方で、中国政府が民間企業の成長支援に向けた政策を打ち出した場合には、中国市場への投資が再び活性化する可能性もあります。インドでは2025年第2四半期も引き続きやや軟調に推移すると考えられますが、堅調なマクロ経済環境を背景に、中長期的には依然としてポジティブな見通しです。日本については、コーポレートベンチャーキャピタルによる直接的な投資とM&Aの動向が注視すべきポイントとなると思われます。
英語コンテンツ(原文)