IASB、IFRS実務記述書第1号「経営者による説明」の改訂版を公表

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2025年6月23日に、IFRS実務記述書第1号「経営者による説明(Management Commentary)」の改訂版を公表しました。

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2025年6月23日に、IFRS実務記述書第1号「経営者による説明(Management Commentary)」の改訂版を公表しました。

本改訂の背景

「経営者による説明」は、企業の財務諸表を補完する一般目的財務報告書であり、主要な利用者である投資家、融資者および他の債権者(以下「投資家等」という)の情報ニーズを満たすために作成されます。現行のIFRS実務記述書第1号「経営者による説明」が公表された2010年以後、投資家等の情報ニーズが進化しており、国際会計基準審議会(IASB)によるリサーチの結果、「経営者による説明」が必ずしも投資家等の必要としている情報を提供していないことが明らかになりました。具体的には、次の点が示されました。

  • 企業の(特に長期的な)見通しにとって重要な事項に焦点を当てていない。
  • 一般的な情報が多すぎる一方で、企業固有の情報が不足している。
  • 情報が断片的であり、企業が他の報告書で提供している情報との関連性を理解しづらい。
  • 情報がバランスを欠き、不完全であり、異なる報告期間にわたる比較や同業他社との比較が困難である。

このような報告実務における課題に対処し、投資家等の情報ニーズを満たす情報を経営者の視点から提供可能とするため、IASBは2017年に本実務記述書の改訂に着手しました。

本改訂のポイント

【本改訂の趣旨】

  • 本改訂は、「経営者による説明」に関して従前から指摘されてきた課題を踏まえ、企業が投資家等の必要とする情報を報告可能にするための包括的なガイダンスを提供することを目的としています。
  • 本実務記述書は、今後、規制当局が経営者の説明に関する国内の要求事項を策定する際に利用可能なグローバルベンチマークとなることを期待して作成されました。
  • 本実務記述書は、企業に固有の主要事項(企業が価値を創出しキャッシュ・フローを生み出す能力に不可欠な事項)に焦点を当て、6つの内容領域(事業モデル、戦略、資源および関係、リスク、外部環境、並びに財務業績および財政状態)の開示目的に基づく一体性のある報告を企業に求めるものです。

 

【本実務記述書(改訂版)の概要】

  • 本実務記述書における「経営者による説明」とは、財務諸表を補完し、企業の将来予測に対して洞察を与える情報を経営者の視点から提供する一般目的財務報告であり、経営者による検討および分析(MD&A)などと呼称されることもあります。
  • 企業に対して本実務記述書への準拠を義務付けるかどうかは、各法域の規制当局によって判断されます(本実務記述書はIFRS基準書を構成せず、IFRS基準への準拠とは直接の関係がありません)。
  • 本改訂は、他の企業報告(統合報告フレームワーク等)の進展を反映しており、IFRSサステナビリティ開示基準との間のつながりについても配慮されています。

 

【適用日】

  • 本実務記述書は、発行日(2025年6月23日)以後開始する事業年度から本改訂版に置き換わります。
  • 早期適用は認められており、企業が本実務記述書を早期適用する場合には、その旨を開示する必要があります。

 

PDFの内容

  1. IFRS実務記述書第1号「経営者による説明」改訂の背景
  2. 本改訂の趣旨
  3. 改訂版「経営者による説明」の概要
  4. 適用日

執筆者

あずさ監査法人
会計・開示プラクティス部
パートナー 関口 智和
パートナー 植木 恵
パートナー 髙橋 範江
テクニカル・ディレクター 荒井 謙二

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