本調査は、2024年夏に実施した「KPMGグローバルCEO調査2024」の全回答者のなかから、テクノロジーと通信セクターのCEO240名の見解を分析し、CEOにとっての目標、課題、戦略を明らかにしています。回答者全員が年商5億米ドル以上の企業であり、調査対象企業の3分の1は年商100億米ドル以上です。
数多くの産業と同様に、テクノロジーと通信は世界経済の継続的な成長の恩恵を受けており、CEOのセクター、経済、企業の将来の成長見通しは概して楽観的であることが判明しました。
生成AIは、生産性、製品開発、顧客体験など多くの分野に影響を与える可能性があり、テクノロジーと通信セクターにもその波紋が広がると考えられています。大半の企業が国際的な事業展開をしていることもあり、CEOは世界経済の不確実性と地政学的な複雑さを問題として挙げています。
自社をとりまく環境は激動であっても、CEOの75%近くが、自社のセクターの成長について見通しがよいと考えています。CEOはネットゼロ目標や労働力、企業のステークホルダー、社会全体を支える環境・社会・ガバナンス(ESG)の優先事項の重要性を認識しています。また、成功の鍵の1つは、長期的で持続可能な成長を実現させるために、企業のすべての機能を横断した戦略や計画の立案と遂行にあると考えています。
エグゼクティブサマリー
前述のように、テクノロジーおよび通信セクターのCEOは、セクター、経済、企業の将来の成長について概して楽観的であることが判明しました。しかし、その一方で、71%のCEOは、事業の長期的な繁栄を確保するために、ますますプレッシャーを感じているとも回答していることから、依然足元の好調な経済をいかに持続可能なものとしていくのかについては、苦悩のなか、難しい舵取りが求められている状況がみてとれます。CEOにとっての課題のトップ3は、生成AIの導入(55%)、経済の不確実性(49%)、地政学的な複雑さ(49%)でした。
生成AIを導入する際の最大の障壁は倫理的な懸念であり、運用コストやサイバーセキュリティは企業の成長に対する最大の脅威となっています。生成AIへの期待は、従業員のスキルアップや不正行為の検出、サイバー攻撃への対応、イノベーションの促進にあるとみられており、約23%のCEOが、生成AIを理解して実装し、すべての機能領域のデジタル化と接続性を推進することは、今後3年間の業務上の最優先事項であると考えています。
ワークフォースの観点からのCEOの課題は、リモート環境から職場復帰への促進、および従業員の高齢化と次世代へのスキルやノウハウの円滑な移転であることが判明しました。CEOは、対面でのコミュニケーション促進は業績にプラスの影響をもたらすと確信する一方、従業員はより柔軟な働き方を志向しているとのギャップが浮き彫りとなりました。CEOは柔軟な働き方について一定の理解を示し許容するものの、定期的にオフィスで働く従業員にはボーナスや昇給、昇進などの報酬で報いようとする傾向もみられました。
ESGにおいては、ESG戦略が顧客との関係を改善し積極的なブランドイメージを築き上げ、資本配分を形成するのに役立つことは理解しつつ、サプライチェーンの脱炭素化の複雑さや、スキルや専門知識、テクノロジーソリューションの欠如などといった、実現に向けた実務においては難しさを感じる局面があることを、調査結果は示しています。
地政学的な観点からは、世界経済の不確実性と地政学的な複雑さを背景とした、主にグローバルバリューチェーンの分断によって引き起こされる脱グローバル化についても、課題として挙げられています。
調査結果:重要な3つのポイント
CEOは、対応すべき主な課題として、生成AIとESG、特にサプライチェーンの脱炭素化への対応を挙げています。生成AIについては、業務改善への期待を持ちながらも、運用コストやサイバーセキュリティなどのリスクだとも捉えていることが判明しました。
主な回答結果を、以下に示します。
※調査結果の全文は、PDFからご覧になれます。