生成AIの環境変化と価値創出に必要な5つのステップ

生成AIのテクノロジーの進化は急速に進み、この半年でビジネスにおける利活用が現実的に捉えられるようになり、人々の抵抗感が少なくなってきました。今日では、ビジネスシーンに即した課題解決やAIエージェントによるプロセスの自動化、個人の能力拡張や組織全体での業務効率化など、AIを活用した変革が進んでいます。

しかし、AIによる価値創出を最大化させるためには、テクノロジーありきではなく、効果が高い箇所の見極めや戦略立案、信頼性確保のための仕組みづくり、従業員への浸透、必要なデータ・技術の吟味など、テクノロジーの実装を行う前に必要な検討課題があります。

5つの課題・検討事項

KPMGのグローバルAI戦略

KPMGでは、1.販売方法、2.提供する商品・サービス、3.サービス提供方法と顧客体験の向上、4.ビジネスモデルの変革への対応、5.オペレーションの効率化の5つを柱に据えたグローバルのAI戦略を掲げ、AIの活用を進めてきました。

AI戦略5つの柱

成功のための重要要素(enabler)としては以下の項目が重要であると考えています。

成功のための重要要素(enabler)

また、KPMGでは、AI関連のシステム開発・利用において「Trusted AI」というフレームワークを用いて信頼性を第一に確保しています。Trusted AIとは、KPMGにおけるAIデザイン・開発・運用及び利用における戦略的フレームワークであり、クライアントへの迅速な価値提供を責任を持って、かつ倫理的に行うための根幹となっており、KPMGのオープンでインクルーシブな企業カルチャーを形成し、最も高い倫理的な規範に基づいた行動を奨励する「Our Values」を、AI開発においても利用しています。開発時には、構成員やクライアントなどの利用者に考慮し、彼らのニーズの充足を目指し、Trusted AIフレームワークをAIのライフサイクル全体に適用し、そこで定義されている10のピラー(柱)に従って、なぜ、どのようにAIを利用するのかを確認しています。

Trusted AI フレームワーク

Trusted AI フレームワーク

KPMGが志向するAI活用の要点

これまでの取り組みを踏まえ、KPMGはAI利活用における要点を、下記の3点だと考えています。

1.個々のユースケースのニーズを満たすプラットフォームの構築

各国・チームでの個別開発を経て、生成AIに関するプラットフォームやツールをグローバルで統一しました。AIやデータ分析の基盤となるデータインフラ、AIソリューション開発のためのガバナンス、AI主体のエクスペリエンスを向上させるためのデザインなどを網羅的に備えたグローバルプラットフォームを設けています。

2.AI時代に向けた従業員のスキル強化

AIの進化によるビジネスモデルの逆転により、既存の稼働時間ベースの課金から、5年以内に「提供価値」に基づいた課金への変更を迫られると考えられます。そうしたAI時代に備え、KPMGでは全従業員がAIを活用し、クライアントへの価値提供を最大化するための様々な研修プログラムをグローバルで展開し、人材のAIスキル強化を図っています。

aIQ

3.適切な効果測定

KPMGでは、メンバーファームやソリューションの段階ごとに異なる指標で価値を評価しています。適切な効果測定および管理手法を用いることで、ビジネス環境に応じたポートフォリオの再構築が可能となります。また、効果測定サイクルを継続的に実施し、厳密に管理することが重要です。

AI Portfolio AI/生成AIのライフサイクルとパイプライン

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