はじめに:RWDが昨今さらに重要視されている理由
ヘルスケアおよびライフサイエンス組織(医療施設および関連企業)は、自らが生成するヘルスケアデータに非常に大きな価値があることをより認識しています。このデータは、組織内部では患者のアウトカムや処方者の行動をより深く理解するために役立ち、外部ではバイオ医薬品、医療機器会社、AI/機械学習企業などのライフサイエンス分野のパートナーを支援する資産として機能します。
生成AIモデルの出現と普及、臨床開発プログラム(例:精密医療)の複雑化、業界向けのFDAガイダンスにおけるリアルワールドデータ(RWD)の規制申請への組み込み、価値に基づく提供・支払いモデルへの移行など、いくつかの要因がこのデータに対する需要をさらに高めています。
データ供給の側面では、過去数十年間のインフラおよび相互運用性への投資(例:電子カルテシステム、クラウドストレージ、匿名化ツール)により、医療提供者は高品質で多様な形式の長期RWDを蓄積できるようになりました。先行導入者はこのデータを活用してイノベーションを推進し、臨床および運用ワークフローを改善し、新たな業界パートナーシップを追求しています。これによりデータを十分に活用できていない組織との差別化を図っています。
同時に、生成AIの台頭により、ヘルスケアおよびライフサイエンス組織は、データ分析と洞察を共有する新たな機会を得ています。新たに登場した機械学習、人工知能、生成AIのアプリケーションはデータの品質と信頼性に注目を集めており、ステークホルダーは新しいモデルが次々と登場するなかで、データの出所や、最も関連性の高いデータを提供できる情報源について疑問を抱いています。
また、高品質なデータが不足しているなかで、データを効率的に収集・整理している企業が業界パートナーから大きな関心を集め、競合他社との差別化をさらに進めています。こうした動向は、ヘルスケア・ライフサイエンス組織に対し、AIによる技術革新の時代においてデータ戦略をどのように変革すべきかを見直すよう促しています。
革新的な組織は、RWDを効果的に活用して患者中心のケアを推進する方法を模索しており、特に治療結果の改善に役立つ洞察の発見に注力しています。ただし、RWDの潜在能力を最大限に引き出し、一般的なリスクを回避するには、明確で一貫性のあるアプローチが求められます。
本レポートは、生成AIがRWDに与える影響を評価し、ヘルスケア・ライフサイエンス企業および団体が、データの価値を最大限引き出せるように支援することを目的としています。
目次
1.RWDとは何か、どのように最適に活用できるか?
RWDは、外部で管理されている実験や試験など、さまざまなソースから収集された情報や測定値を指す広義の用語です。消費者の購入履歴、交通パターン、ソーシャルメディアのユーザーデータ、そして環境測定データのようなRWDは、あらゆる業界の組織が意思決定を行い、イノベーションを起こし、業務を最適化し、消費者体験を向上させるのに役立ちます。
本レポートでは、臨床データ、画像データ、分子データなど、患者ジャーニーの過程で収集されるヘルスケアに関連するRWDに焦点を当てています。
医療システム、病院、かかりつけ診療所、救急センター、検査室、画像センター、薬局などのヘルスケアプロバイダー、およびウェアラブルデバイスや患者サマリーを通じて得られる患者データが、ヘルスケアRWDの主要な生成元です。ライフサイエンス企業、人工知能/機械学習プラットフォーム、保険者などが、医療RWDの需要とユースケースのほとんどを占めています。
ヘルスケアRWDの幅広いユースケース
患者の人口統計、医療提供者の記録、薬剤情報、患者アウトカム、その他の電子カルテ等の情報などの臨床データは、医療提供者や保険者が患者パス(標準治療)や、バリューベースドケア(医療の質や治療アウトカムを測定して報酬を決定する支払いモデル)のパフォーマンス改善に活用される、組織内で最も一般的に使用するデータの種類です。
もともと、医療請求データは、リアルワールドエビデンス(RWE)に使用されるデータソースの1つでした。現在、電子健康記録(EHR)と電子患者記録によって、臨床データは請求データだけではない多くの情報を包含しています。臨床データは、ライフサイエンス企業の製品発見、前臨床、臨床開発、商品化の各段階にわたって幅広く利用されています。
さらに、放射線画像データ・病理画像データやケア提供中に記録された実際の画像や動画は、プロバイダーによって組織内部の医療従事者のトレーニングや品質改善に使用され、また外部では製品と治療アプローチの評価と改善に使用されます。分子データには、ゲノム、プロテオーム、エピゲノムなどのデータを含む、構造、機能、および分子の相互作用が含まれます。
分子データには、KRASのポリメラーゼ連鎖反応検査(PCR)、腫瘍分野におけるBRCAなどの生殖細胞系列異変の配列検査、嚢胞性繊維症におけるCFTR遺伝子検査、その他の希少遺伝性疾患検査など、バイオマーカーテストが含まれます。臨床データ、画像データ、分子データなどの複数のソースを統合するマルチモーダルRWDは、ヘルスケア・ライフサイエンス組織にとって非常に価値が高く、その需要は急速に増加しています。
2.ヘルスケアRWDの需要はなぜ高まっているのか?
(1)RWDを活用した技術の進歩と臨床意思決定支援(CDS)ツール
現在の臨床意思決定支援ツール(CDS)は、ヘルスケア現場において、ヘルスケアRWDを統合し、患者ケアに革新をもたらす最前線に立っています。2023年10月時点で、690を超える人工知能/機械学習に対応する医療機器がFDAに承認されており、さらに多くの機器が現在開発中です。そのため、CDS開発者と医療従事者は、今後も質の高いRWDに対する大きな需要を生み出し続けるでしょう。
このようなCDSツールの急増により、医療機関は多様なケア環境で医療従事者をトレーニングし、大学病院に限定されることなく患者が高品質な医療を受けられる機会が増します。その結果、さまざまな医療環境における治療の標準化が可能になり、医療格差の解消が促されます。ヘルスケアRWDの需要が拡大している理由は、実世界の臨床シナリオの複雑さを反映するその飛び抜けた能力にあります。
対照的に、合成データは製造や梱包などの特定の文脈では有用ですが、実世界の相互作用における複雑なパターンや、治療プロトコルを最適化するために必要な結果のばらつきを一貫して捉えるには不十分です。ヘルスケアRWDは、医療提供の独特で複雑なニーズに適応できる効果的なCDSツールを開発するために欠かせません。
(2)研究開発の複雑さと規制強化
ヘルスケア・ライフサイエンス分野における研究開発の状況はますます複雑化しています。この複雑化は、より微妙な患者の治療アウトカムを理解する必要性、革新的な治療法の需要、そして製品の安全性と有効性を守るための規制要件から生じています。
ヘルスケアRWDは、これらの複雑な研究開発プロセスを支える役割を果たしており、バイオ医薬品企業や医療機器メーカーによる需要は引き続き増加しています。彼らは開発プロセスを加速し、臨床試験の効率を向上させ、承認後においては介入の有効性を評価し、費用対効果と価値を保証することを目指しているためです。
さらに、世界の規制当局はRWDの価値を認識しつつあり、特に希少疾患向けの新規治療薬の開発では、医薬品の承認や市販後調査のための規制申請でRWDを受け入れる方向で進んでいます。この変化は、FDAがRWDとRWEを使用して規制決定をサポートするための評価フレームワークにも表れています。
規制がRWDを取り入れる方向に変化していくなかで、初期の研究段階から市販後の研究に至るまで、研究開発全体におけるRWDの需要とユースケースの増加が見込まれます。
(3)精密医療および治療の個別化
患者ケアが「画一的な」アプローチから精密医療へと移行するにつれて、ヘルスケアRWDは今後も個人レベルで、治療の意思決定に役立つパターンを特定するために利用されるでしょう。
将来の治療計画が、遺伝子、生活習慣、環境に基づいて高度に個別化されるようになると、すでに高い需要があるマルチモーダルヘルスケアRWDの需要はさらに高まるでしょう。もともと、精密医療は患者の体重に基づいて治療薬の投与量を調整することを基本としていましたが、精密医療が成熟するにつれ、たとえばがん患者の化学療法後の治療方法変更のように、以前に失敗した治療に基づいて治療薬を調整することがより一般的になりました。また、精密医療がさらに進化するにつれ、治療は単一のバイオマーカー(例:HER2)に基づいて行われるようになりました。
現在では、精密医療は患者の人口統計学的データ、以前の治療ライン、タンパク質の発現レベル、臨床病理学、複数のDNAに基づくバイオマーカー、薬理ゲノミクス、さらには遺伝子発現など複数の要因を考慮するためにマルチモーダルデータを使用しています。
3.新たに登場するAIアプリケーションがRWDの必要性をどのように進化させるか?
AIの導入により、医療提供の現場は大きく変わりつつあります。AIは、肉眼では見えないパターンを理解し、従来は関連づけることができなかったデータを結びつけることによって、臨床医が患者を診断、治療、モニタリングする方法を変えつつあります。
医療従事者はAIを活用した臨床意思決定支援ツールやAIによる放射線診断ツールのような医療提供ツールの消費者であるだけでなく、自施設内のパフォーマンスを最大化し、さらに将来的には外部向けにも活用するために、ツールを自ら開発する事業も展開しています。ヘルスケア分野におけるAIアプリケーションの数が増え続けるなか、仮説を立て、アルゴリズムの質を検証し、パフォーマンスを向上させ続けるためには、高品質なRWDの必要性は高まるばかりです。
AIアプリの爆発的な増加に伴い、必要とされるデータ量は増加しており、また、新しいアルゴリズムを支えるために必要なデータモダリティの種類も増えています。これまでにFDAが承認した人工知能・機械学習対応医療機器の75%(総計531件)は、放射線診断分野に関するものですが、現在では、病理画像、DNA解析、バイオセンサー、患者パスプラットフォームといった分野での研究開発も増加しており、これらの技術の適応範囲が拡大していることや、より広範なヘルスケア・ライフサイエンス組織が価値あるリアルワールドデータの提供に貢献できる可能性を示しています。
ライフサイエンスアプリの影響
AIを活用した医療提供が1つのユースケースと考えると、製薬企業やバイオテクノロジー企業は、AIを活用してパイプラインの発見、開発、商業化に向けた独自の取組みを行っています。
しかし、それぞれのAIアプリは各用途に応じて独自のデータセットを利用し、推論を導き出し、パターンを認識しています。そのため、新規の薬剤ターゲットを特定する、あるいは薬剤に反応する可能性が高い、または低い患者を層別化するAIアプリの性能は、基盤となるデータの質に依存します。
生成AIブームにおいても高品質なRWDが肝要
ヘルスケア、バイオ医薬品、医療機器のAIアプリにおいて、アルゴリズムの原動力は、リアルで、適切に整理された質の高い患者データです。このデータにはさまざまな課題があり、データが欠損していることもあれば、異なるシステムに分散して保存されていることもあります。しかし、臨床レベルの結論を導き出すAIアプリにおいては、これらのモデルの基盤となるデータが実際の患者データであることが重要です。このため、ヘルスケア・ライフサイエンス分野における生成AIアプリの台頭に伴い、RWDの必要性はさらに高まっています。
生成AIツールは、情報の集約やデータ処理速度の指数関数的な向上を可能にする一方で、しばしば「ハルシネーション」と呼ばれる、データ内には実際に存在しない結果を生み出します。これがヘルスケアデータの範囲内で発生した場合、ハルシネーションは実際には起こっていない治療アウトカムを示すことがあり、臨床用AIアプリを利用不可能にしてしまう可能性があります。
生成AIアプリはヘルスケア・ライフサイエンス分野において優れたユースケースを持っているものの、臨床グレードのAIツールを開発する際には依然としてRWD、および従来の人工知能/機械学習が優位性を保っており、生成AIモデルに取って代わられるリスクはほとんどありません。
テクノロジーや生成AIの進化がもたらす意味とは?
AIアプリを支えるためのRWDの必要性が、ヘルスケア・ライフサイエンス分野のパートナー企業において増加し続けるなか、多くの組織が自社データの価値を最大化するための戦略や施策を実施しています。また、AIがヘルスケア・ライフサイエンス分野全体で企業の取組みの中核となりつつあるなかで、その存在を無視することはますます難しくなっています。
これは、病院、薬局、流通業者、民間保険会社、薬剤給付管理者(米国において、医薬品の支払いや処方薬の薬価管理、薬剤リスト管理、薬局ネットワーク管理等の業務を担う第三者機関)、在宅医療提供者、またはその他のケア施設などの、患者とのやり取りを管理するヘルスケア・ライフサイエンス組織自体が、組織内部または外部での使用のために、データを適切に整理・精査し、次の段階で利用可能な状態にするための措置を講じていることを意味します。
RWDの需要という観点では、顧客の関心は高まっていますが、同時により多くのRWDの選択肢が増えるため、データの精査と選別の目も厳しくなっています。データ内で患者の特性(例:年齢、人種、人口統計学的要因、地理的位置など)が適切に反映されているかどうか、データの一貫性、データの取扱いやすさ、さらに州や連邦の規制当局とやり取りする際にデータが妥当であると評価されるかなど、顧客からはさらなる疑問が寄せられています。
4.企業はどのようにしてRWDの価値を引き出せるか?
ヘルスケア・ライフサイエンス業界では膨大な量のデータが生成されています。世界のデータ総量の約30%は、ライフサイエンス・ヘルスケア業界によって生成されており、そのデータ量は年間36%の割合で増加しています。このなかには、時系列で暗号化されたテキスト、画像、音声、映像といった多種多様なデータモダリティ(例:放射線画像、ラボデータ、ゲノム情報、ウェアラブルデバイスデータなど)が含まれています。現在、病院1件あたり年平均50ペタバイトを超えるデータが生成されています。
しかし、病院で生成されるデータの95%は構造化されないまま活用もされていないため、ヘルスケアおよびライフサイエンス組織には、RWDをより効果的に活用し、治療・疾病の管理における意思決定を最適化し、より賢明な経営判断を行うための大きなチャンスがあることを示しています。また、質の高い生成AIツールの普及によりデータ分析の新しい方法が切り開かれるなか、ヘルスケア・ライフサイエンス組織が、自らが生成するデータの種類、そのデータの価値、そして、現在そのデータがどのように活用されているのかを理解することがますます重要になっています。
RWDの機能への投資効果を見極める
多くのヘルスケア・ライフサイエンス組織が自社のデータを活用しようとするなかで、最初に尋ねられる質問の1つは「投資回収は具体的にいくら見込めるか?潜在的リスクを考慮したうえで、本当に投資価値があるのか?」というものです。具体的なメリットは各サービサーによって異なりますが、これらの投資効果を明確にし、意思決定者に伝える能力は、多くの組織のRWD活用の取組みにおいて依然として重要な足掛かりとなります。
包括的なRWD戦略によるメリットは多岐にわたり、以下が含まれます。
臨床の卓越性
優れた分散型の患者ケアを提供することは、ヘルスケア・ライフサイエンス組織がRWD活用能力を開発する際の主な原動力であり、組織内で指針に関する意見を取りまとめるための手段でもあります。強力なAIを活用したデータ分析、診療所外での患者の長期的な治療アウトカムのモニタリングなどRWDによって可能となる新たな科学的知見の導入がケアの質を向上させます。
評価とランキング
公式のRWDロードマップを策定することで業界のパートナーシップが強化され、共同開発やデータ共有といった新しいタイプの協業モデルが促進されます。生成AIやRWDに投資しているヘルスケア・ライフサイエンス企業は、最先端の研究分野での地位を確立し、世界レベルの医師や科学者を惹きつけ、研究助成金を最大限活用できるようになります。その結果、論文発表やプレスリリースの新たな機会が生まれ、組織内の部門間でコラボレーションが最適化されます。早期にAIを導入した組織は競合他社との明確な差別化を実現していますが、対応が遅れた組織は淘汰されるリスクを抱えるかもしれません。
財務的な機会
データを通じて得られる価値全体を定量化することは、その広範にわたる影響を考えると難しいかもしれませんが、RWDは従来の臨床手法を超えた収益源を生み出します。潜在的な利点には、ライセンス契約、スピンアウト(新事業立ち上げ)、バリューベースドケア(経済価値に基づくケア)パフォーマンスの最適化、自動化によるコスト削減、評判の向上による患者数の増加、そして臨床試験登録の加速などが含まれます。
RWDの旅の道筋を設定する
ヘルスケア・ライフサイエンス組織は、プロジェクトの承認や市場投入計画に伴うハードルを経験しています。多くのヘルスケア・ライフサイエンス組織は、初期段階からの計画構造の欠如により、有望な取組みが頓挫するのを目の当たりにしてきました。RWDと生成AIの交わる箇所は非常に楽しみな領域ですが、市場は急速に進化しており、競争も激化しています。このようなダイナミックな状況下でヘルスケア・ライフサイエンス組織がRWDを効果的に活用するには、慎重かつ将来を見据えた戦略的なアプローチが求められます。
5.KPMGの支援
ステップ1:RWDビジョンを確立し組織内の合意を得る ステップ2:データの強みとギャップを明らかにする ステップ3:実行のためのロードマップを作成する |
ステップ1:RWDビジョンを確立し組織内の合意を得る
RWD戦略の成功は、明確なビジョンと組織内の合意にかかっており、ステップ1の重要性を軽く見てはいけません。RWDに対する明確なビジョンと、すべてのステークホルダーの賛同がなければ、目標はすぐに失敗に終わってしまう可能性があります。考慮すべき主要なポイントは次のとおりです。
- 指針の確立
データの機会をどのように評価し追求するかを決定する基本原則を確立し、RWDパートナーシップのための具体的なガイドラインを設定することは、RWDの取組みの全体的な方向性を定め、チームが共通の目標に向かって前進するのに役立ちます。 - データインフラストラクチャー、ガバナンス、データ管理・操作性の設計
主要なデータ意思決定者を決定し、明確なガバナンスプロセスを確立し、既存のデータ管理プロジェクトとシステムを把握し、RWD活動に関与するすべての利害関係者の役割と責任を明確にする必要があります。 - 経営陣および部門横断的な合意の獲得
RWDの共有モデルに関して経営陣の全面的な支持を得られない、あるいは、実行に関与する部門横断的な利害関係者と指針を効果的に共有できない場合、RWDプロジェクトが遅れる可能性があります。
ステップ2:データの強みとギャップを明らかにする
内部データの評価にはさまざまな形式がありますが、一般的には、内部にどのようなデータ資産が存在するかを把握し、RWD資産を強化するためにどのインフラストラクチャーのギャップに対応する必要があるかを明確にすることが含まれます。
- データ資産の把握
部門全体、モダリティ(診断や治療手法)、治療領域、および顧客チャンネルに渡るデータ資産を、包括的に一覧にまとめることは、強み領域と相対的な差別化を理解するために非常に重要です。また、市場参入戦略を形づくるための基盤ともなります。 - 技術データシステムの把握
データを保存・管理するためにどのオンプレミス、およびクラウドベースのストレージシステムが存在するか、また、どのシステムがデータの匿名化に使用され、現在、医学研究者がデータ解釈に用いられているかを把握します。これは強固なヘルスケアRWD機能をサポートするために必要な投資を評価するための起点となります。 - リスク評価および軽減計画
これは、データ共有の前に患者のプライバシーやデータセキュリティを保護し、潜在的な法的・財務的な影響を回避するために不可欠です。 - ギャップ評価とインフラストラクチャーの必要性
インフラストラクチャーのギャップに対して「構築」「パートナーシップ」「購入」の決定を評価することで、RWDパートナーシップを安全に管理するための十分な技術的能力とプロセスが確保されます。これにより、商業活動を効率的に拡大することも可能になります。
ステップ3:実行のためのロードマップを作成する
RWD戦略を形式化する最終段階では、ロードマップの策定と短期・長期の目標(財務・非財務)の設定が含まれます。重要な考慮事項は次のとおりです。
- 差別化と市場ポジショニング
組織の差別化ポイント、競争優位性のある領域、そして各RWD活用機会の市場の魅力度に基づいて、さまざまなデータ共有モデル、顧客チャネルおよび流通の仕組みに優先順位を決定する必要があります。 - 運用モデル
RWDの機会を実行するには、最終的な目標として「商業的な考え方を採用する」ことを念頭に、既存の運用モデルを変更する必要があります。
KPIおよびパフォーマンス評価
長期的な戦略方針に適応できるよう、十分な柔軟性を持って、財務予測、KPI、パフォーマンス指標を設定します。
※本稿は、KPMG米国が2024年に発表した「Unlocking the value of healthcare's Real World Data in the era of Generative AI」を翻訳したものです。翻訳と英語原文に齟齬がある場合には、英語原文が優先するものとします。
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