エグゼクティブサマリー
エネルギーセクターは、他のセクターよりも回復力が高くリスク志向の傾向があるものの、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取組みをさらに加速するには、データ能力や人工知能(AI)向けの投資を拡大する必要があります。
エネルギーセクターは、前例のない課題と機会が交錯する重要な岐路に立っています。足元で直面する課題を克服しつつ、エネルギートランジションの機会を最大限に活かすには、テクノロジー、データ、戦略を事業全体に統合する包括的なアプローチが求められます。この取組みには、革新的なソリューションの導入と戦略的な先見性を持つリーダーシップが不可欠です。エネルギーセクターのリーダーは、革新的テクノロジーやデータドリブンな洞察を活用のもと、次世代のDXを推進することが重要となるでしょう。
今回の調査結果から、エネルギーセクターの特徴として、他セクターに比べて回復力が高く、リスクへの適応力が強い一方で、データ能力やAI投資の拡充が喫緊の課題であることが明らかになりました。なお、本レポートは、エネルギーセクターにおけるDXの現状と課題についての洞察を提供することを目的とし、19ヵ国にわたる2,450人のグローバルテクノロジー企業のリーダー(そのうち122人はエネルギーテクノロジー企業のリーダー)を対象とした調査の結果を分析したものです。
これまでエネルギーセクターは、IT分野での取組みにおいて、他セクターに匹敵する、またはそれを上回る成果を上げてきました。しかし、実際には、多くの取組みが組織全体やエコシステム全体に効果的に展開されず、特定の機能分野に限定されるという課題に直面しています。エネルギーセクターのリーダーは、AIの導入を体系的に実証しながら、デジタルイノベーションを妨げる脅威から組織を守る強固なサイバーセキュリティの枠組みを活用することで、このような状況を打破し、組織内でのDX推進をさらに加速することができるでしょう。
主な調査結果
1. エネルギーセクターはテクノロジー投資・導入に対して積極的
2. エネルギー企業はAI活用に向けた実証を体系的に推進
エネルギー企業の多くは、5段階のAIの成熟度において上位2段階に位置しており、67%がAI導入に向けた実証事業からすでにビジネス価値を生み出していると回答しています。一方で、慎重なアプローチを取る企業も少なくなく、実証の取組みが概念実証(PoC)の段階にとどまっている企業も一部存在します。実際に、エネルギーセクターでは、AI導入の取組みが初期段階(下位2段階)にある割合が全体平均よりも8ポイント高いことが分かりました。
3. データ成熟度での後れがテクノロジーの真価を評価する障壁に
エネルギーセクターは、すべてのデータ管理カテゴリにおいて、データ成熟度が全体平均を下回っており、その傾向は特にデータの互換性や運用性、セキュリティ、そして有益なインサイトの抽出といった分野で顕著に表れています。しかし、多くのエネルギー企業のリーダーは、自社が抱えるデータ品質に関する課題を認識しており、それらを解決するための計画を積極的に推進しています。
4. エネルギーセクターはサイバーセキュリティからの価値創出能力で強み
エネルギーセクターは、サイバーセキュリティ投資における価値創出の観点で、調査対象分野のなかで最高値を記録し、最も高い収益性を生み出す可能性を持つセクターであることが明らかになりました。
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