Article Posted date
06 November 2024
「KPMGグローバルCEO調査2024」によると、エネルギー・天然資源・化学(ENRC)業界のCEOは、足元における不安定な経済・地政学情勢に注意を払いつつも、生成AIなどの革新的テクノロジーの有効活用やESGの戦略への組み込みを加速することで、より強靭で回復力のある事業運営を目指していることが明らかとなりました。
経済的見通し
- 業界特性上、ENRCのCEOの多く(55%)は、引き続き、地政学情勢を今後数年間における最大の課題と認識しています(全業界平均47%)。特に、重要鉱物に対する取引規制のさらなる厳格化といった地政学的な懸念の高まりを背景に、業務上の最大のリスクとして貿易・取引規制を挙げるCEOは73%にのぼりました。また、今回の調査からは、CEOの間で、生成AIなどの革新的テクノロジーの導入について、競合他社に遅れをとることへの恐怖感、倫理的な課題、技術的な複雑さ、導入コストや人材獲得競争に対する懸念が高まっていることがわかります。
- 一方、約3分の2がこれら多岐にわたる課題に対する対策・戦略を既に導入済みと回答しており、82%が自社事業の成長見通しについて楽観的な見方を維持しています(全業界平均78%)。今後3年間における具体的な業績見通しについては、43%のCEOが0.01~2.49%、30%が2.50~4.99%と回答しています。ただし、業界全体の成長見通しについて自信があると回答したCEOは72%と、全業界平均をやや下振れしており、再生可能エネルギー、化石燃料や鉱物など、エネルギー事業の内容によって見通しが大きく異なることがわかります。
- 事業目標を実現するための主な手段として、資本・投入コストのインフレ対策に加えて、業務の外部委託、事業提携やジョイントベンチャーを通じたインオーガニック成長を優先事項として位置づけるCEOの割合も多く、前回調査と比較すると、業務変革をより意識した戦略へ焦点が移っているようです。
革新的テクノロジー
- 今回の調査では、生成AIを最優先投資分野に位置づけると回答したCEOは、前回調査の64%から58%まで減少しました。また、投資収益率(ROI)を達成するまでに3~5年かかると見込んでいるCEOの割合は65%で、前回調査の48%から増加しています。これは、CEOが、生成AIに対する理解を深め、導入から収益化までのプロセスを長期的な投資として捉え、価値実現までに要する時間について、より現実的な見方をするようになったことを示しています。
- 同様に、前回の調査では、生成AIの導入によるメリットとして、収益性の向上が最も期待されていましたが、今回の調査では、イノベーションの加速、効率性・生産性の向上、そして従業員のスキル向上などが上位に挙がり、CEOの生成AIの活用方法に対する認識が昨年から大きく変化していることが明らかとなりました。
- 生成AIの導入に伴う課題については、データプライバシー、アルゴリズムの偏りや責任ある利用方法などの倫理的な課題を挙げるCEOが57%に上る反面、導入コスト(44%)を課題視するCEOは、昨年比で大幅に減少(65%)しました。
- また、72%のCEOが、AI導入に伴い、サイバーセキュリティへの投資を増やしており、58%が組織内での将来のサイバー攻撃に対して十分な準備ができていると回答しています(前回調査46%)。
人材
- 現役世代が引退し、リモートワークやハイブリッドワークを志向する若い世代の割合が増えているにもかかわらず、オフィス回帰を期待するCEOの割合は93%と前回調査(73%)を上回り、さらには、回答したCEOの全員(100%)が出社する従業員に報酬を付与する意思があると回答しています。
- CEOの3分の2が、今後も組織における多様性パフォーマンスの監視がさらに強化されると考えています。一方で、半数以上(58%)が、業界全体で多様性とインクルージョンの進展が遅れていると感じており、77%のCEOが、経営層や幹部レベルでの男女平等の実現が組織の成長を促進する要因となると考えているようです。
ESG
- CEOの72%が、既に事業戦略にESGを完全に組み込み、価値向上の手段として活用していると回答しています。また、79%が厳格化が進むESG報告基準に対応する能力に自信があると答えており、気候変動や脱炭素に積極的に取り組んでいることがうかがえます。
- ESGアプローチの導入によるメリットについて、資本配分やパートナーシップ、アライアンス、M&A戦略の形成において重要な役割を果たすと回答したCEOは29%に達しており(前回調査17%)、事業における魅力的なESG戦略の重要性が高まっていることがわかります。
- CEOの過半数(58%)は、2030年までのネットゼロ実現が可能と見込んでいますが、サプライチェーンの脱炭素化の複雑さ(35%)やスキル・専門知識の不足(22%)等の課題に直面しています。
- 変化するステークホルダーのニーズや期待に応えるため、気候アジェンダに関するコミュニケーション方法を調整したと回答したCEOは74%に上りました。また、4分の3以上のCEOが、収益性が高くてもリピュテーションリスクが高い事業については、売却する意向があると回答しています。
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