他の企業の義務に対して発行する保証(IFRS第9号)-IFRS-ICニュース
IFRS解釈指針委員会ニュース -「他の企業の義務に対して発行する保証(IFRS第9号)」については、2024年9月のIFRS-IC会議において新規に取り上げられました。
IFRS解釈指針委員会ニュース -「他の企業の義務に対して発行する保証(IFRS第9号)」については、2024年9月のIFRS-IC会議において新規に取り上げられました。
概要
委員会は、企業が発行する保証を個別財務諸表においてIFRS第9号「金融商品」に基づいて会計処理するのか、そうでない場合はどのIFRS会計基準が適用されるのかについて質問を受け取りました。質問では、ジョイント・ベンチャーがサービス契約やパートナーシップ契約において契約に基づく義務を履行できなかった場合に、ジョイント・ベンチャーの義務に対して企業が、銀行や顧客又はその他の第三者に支払を行うという保証を発行する事例が示されていました。
保証に適用されるIFRS会計基準について、委員会は以下の分析を行いました。
保証の契約条件の分析
IFRS会計基準には保証の定義は示されておらず、あらゆる保証に適用される特定のIFRS会計基準はない。発行する保証に適用するIFRS会計基準を決定する際には、企業は黙示的なものも暗示的なものも含め、すべての契約条件を分析する必要がある。ただし、契約条件が実質を有していない場合はその限りではない。
保証は金融保証契約に該当するか
IFRS第9号、IFRS第17号「保険契約」、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の範囲に関する要求事項に基づき、企業はまず保証が金融保証契約に該当するか検討する。金融保証契約の定義はIFRS第9号に規定されており、金融保証契約はIFRS第9号の範囲に含まれる。ただし、実務上は、金融保証契約の定義に含まれる「負債性金融商品」の解釈にばらつきが見られる状況である。なお、金融保証契約を保険契約とみなすことを過去に明言しており、保険契約に適用される会計処理を用いている場合には、IFRS第17号の範囲に含めることを選択することも可能である。
保証は保険契約に該当するか
保証が金融保証契約の定義に該当しないと判断する場合、企業は保証が保険契約に該当するか検討する。保険契約の定義はIFRS第17号に規定されており、保険契約を発行する企業の種類にかかわらず、保険契約にはIFRS第17号が適用される。ただし、IFRS第17号第8項、第8A項の特定の条件を満たす場合、IFRS第17号を適用するか否かを企業が選択することが認められている。
適用される可能性のあるその他のIFRS会計基準の要求事項
保証が金融保証契約にも保険契約にも該当しないと判断する場合、以下を含むその他のIFRS会計基準に基づき会計処理を検討する。
- IFRS第9号-ローンコミットメント(IFRS 9.2.3)かデリバティブ(IFRS 9.付録A)であるか、またはIAS第32号「金融商品:表示」の金融負債の定義を満たす場合、保証はIFRS第9号の範囲に含まれる可能性がある。
- IFRS第15号-保証の相手先が顧客であり、その保証が他のIFRS会計基準の範囲に含まれない場合、IFRS第15号が適用される可能性がある(IFRS15.5-8)。
- IAS第37号-保証が、他のIFRS会計基準の範囲に含まれない引当金、偶発負債又は偶発資産を生じさせる場合にのみIAS37号が適用される(IAS37.5)。
委員会は、保証の会計処理はIFRS会計基準の要求事項に基づき決定し、企業の事業活動の性質に基づくものではないと考えました。企業は、発行する保証に適用するIFRS会計基準の決定や、具体的な事実と状況、その保証契約の契約条件を考慮するにあたり判断を適用します。
金融保証契約の定義に含まれる「負債性金融商品」の解釈に関する実務上のばらつきについては、 2024年4月のIASB会議において議論され、次回のアジェンダ協議にこの点を含め、より幅広く金融保証契約に関する適用上の問題について検討することとしました。委員会は、これを踏まえ、保証を金融保証契約として会計処理すべきか否かの判断に際して、企業は「負債性金融商品」の解釈について判断を適用すると結論づけました。
ステータス
委員会の暫定決定
委員会は、企業が発行する保証についてのIFRS会計基準上の扱いは明らかであるとして、本件に対処するための基準設定プロジェクトを作業計画(アジェンダ)に追加しないことを暫定的に決定しました。
コメント期限
2024年11月18日