ESGデューデリジェンスの重要性が高まっている

KPMGでは、2022年の欧州・中東・アフリカ(EMA)地域、2023年の米国での調査に引き続き、35の国・地域の600名超のディールメーカーを対象に、ESGデューデリジェンス(ESG DD)に関するグローバル調査を実施しました。日本企業からも約20社にご協力いただきました。

直近12~18か月を振り返ると、M&A市場は多くの地域で金利上昇の影響を受け減速し、地政学的・経済的な不確実性は多くの企業に戦略の見直しを迫りました。また一部の国では、投資意思決定にESG要因を織り込むことのメリットや正当性について議論が起きています。

こうした逆風にもかかわらず、本調査の結果、ESG DDは依然としてディールメーカーにとっての重要事項であり、その優先順位が上昇していることもわかりました。

グローバル調査からの考察

    ESGデューデリジェンスの重要性は、逆風にも関わらず高まり続けています。ディールメーカーによれば、直近12~18か月でESG DDの重要性が高まっており、今後も一層高まる予想とのことです。これは、M&A活動の鈍化、経済の不確実性、一部地域におけるESGへの反発によりESG要素の重要性が低下するという当初の予想に反するものです。


    先進的な投資家は、投資テーマにESGを組み込んで財務的価値を引き出しています。彼らは、ESG規制やステークホルダーの期待の変化に伴うビジネス面・オペレーション面・財務面のリスク・機会に関する深い理解と投資期間における財務的リターンの規律ある追求とを組み合わせることでこれを可能にしています。投資先のパフォーマンスを向上させるため、包括的なベースラインの設定、統合的な100日アクションプラン、資金調達先の体系的な精査などの手段を活用しています。ESGパフォーマンスの向上は、環境・社会・ガバナンスのさまざまな領域にわたって収益拡大、コスト削減、投資リスクの低減につながります。現在、特に親和性が高いテーマは脱炭素化、リサイクル・サーキュラリティ、サプライチェーンマネジメントです。


    ESGデューデリジェンスの実施には依然として課題があるものの、打開策が登場し始めています。投資家は、有益かつ実行可能な調査スコープを決定し対象会社から高品質なデータを取得することや、発見事項を定量化することに苦慮してきました。しかし、これらの課題を解決する新たな方法が生まれてきています。スコープ決定に関しては、ESG DDに組み込むべきテーマが明確化してきており、着眼点も「価値観」から「価値そのもの」へと移ってきています。データの質に関しては、ESGに関する高品質なベンダー資料の作成を外部委託することで、売り手やそのアドバイザーにとって売却による価値を高められる絶好の機会となります。また定量化については、ESG DDのチームと、コマーシャル/オペレーショナルDDのチームが協力することによる相乗効果が明らかになってきました。


重要な発見事項

世界のディールメーカーの8割超が、ESG要素はM&Aにおける検討事項の1つであると回答
55 % の回答者が、ESG成熟度の高い投資先について1~10%程度のプレミアムを支払ってもよいと回答
ESG DDを実施する主な理由:

1. ESGリスク・機会を早期に特定することが経済的価値をもたらすから(回答者の58%が同意)

2. 規制の要求事項への対応強化(回答者の44%が同意)


45 % の回答者が、ESG DDの重要な発見事項がディールに重大な影響を及ぼした(うち半数以上が「ディールブレーカー」に遭遇)と回答
コーポレート投資家よりも金融投資家のほうが、投資先の企業価値維持・向上のためにESGに関するリスク・機会に注力する傾向がある
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