試験と試練 ‐ 新しいEU CTR
患者の安全と透明性を重視するためEU全域で臨床試験規制(EU CTR)が2022年1月より適用されました。EUにおける規制変更の内容と企業への影響について紹介します。
患者の安全と透明性を重視するためEU全域で臨床試験規制(EU CTR)が2022年1月より適用されました。
※当レポートは、2021年11月にKPMG英国が発行したレポートを一部翻訳したものです。
2022年1月31日に適用開始となるEU臨床試験規制536/2014(EU CTR)によって、EU全域での臨床試験は大きく変わります。
適用開始が数ヵ月後に迫り、大きな疑問、すなわち「自分たちは準備ができているのだろうか」という疑問がわいてきます。EU CTRは「EU内での臨床試験を管理する行政規定を簡素化し、調和させる」ことを目指しており、2022年1月末にEUポータルの臨床試験情報システム(CTIS)が稼働すると、既存の臨床試験指令(指令2001/20/EC)に取って代わります。臨床試験の責任主体に大きな課題がもたらされることは確実です。移行期間が設けられてはいますが、最終的にEU CTR に従っていない場合、EU内で臨床試験を実施することはできません。
臨床試験指令はデータの質と参加者の安全性の向上に役立ちましたが、複数の要因によって新たな規制の必要性が生まれました。2007年から2011年までの間に、EU内の臨床試験の申請数は25%減少し、臨床試験の費用は増加し、臨床試験開始までの平均待期期間は90%増えました。さらに、試験実施の遅延、独立性の高いアカデミックトライアルから主に大手製薬会社主導の臨床試験への移行、評価されるデータの減少、多国籍試験の開始の遅れ、治療最適化試験が施される患者の減少といった批判もありました。これらは一部の例に過ぎません。
全体として新たな規制が目指すのは、EUを臨床研究の実施場所として魅力的なものにする(すなわち、加盟国全域における臨床研究のさらなる効率化と調和を図る)とともに、患者の安全と透明性を重視することです。この規制が求めているのは、EU内の臨床試験についてのよりシンプルで一貫性のあるルールであり、具体的な情報を一般に公開する必要があります。この最後のポイントは重要です。グレニス・ウィルモット(Glenis Willmott)元欧州議会議員は次のように述べています。「あまりにも長い間、新薬に関する不都合な研究は公開されてきませんでした。すべての臨床試験の約半数は一切公表されていません。(中略)ネガティブな研究結果 について知らされることが非常に重要です。」
当該レポート全文は、Trials and tribulations – The new EU CTR(原文PDF/英語)よりご覧ください。