医療機器業界におけるニューノーマル

世界的パンデミックによって医療技術の市場投入は迅速化した一方、サプライチェーンは地政学的な影響を受け重大な課題に直面しています。医療機器企業を取り巻く規制やサプライチェーンについて考察します。

医療機器のサプライチェーンは地政学的な影響を受け重大な課題に直面しています。医療機器企業を取り巻く規制やサプライチェーンについて考察します。

※当レポートは、2022年にKPMG英国が発行したレポートを一部翻訳したものです。

絶えず変化していると思われる規制状況のなか、医療機器業界は、EU医療機器規制2017/745の導入や世界的パンデミックなどの事象に迅速に適応しなければなりませんでした。

医療機器規制は、それまでの医療機器指令の弱点として認識されていたものに対処するために制定されたものであり、制定のきっかけとなった過去の事例には、患者にひどい病変を引き起こすMetal-on-Metal 関節形成インプラントやシリコン乳房インプラントに関連する問題などがありました。この2つの事例は、患者の安全性を向上させ、この種の事例が再び起こることを防ぐために、医療機器の規制強化が確実に必要であることを明確に裏付けています。

患者の安全性向上が価値ある目標ではないと主張する人はほとんどいないでしょうが、規制負担の増大によって革新的な医療技術の市場投入が遅れたり、さらには妨げられたりすることで、利用できる医療機器が減り、全体的に患者の安全性が低い環境となるリスクは少なからずあるかもしれません。

世界的パンデミックは、医療技術のTTM(Time to Market:製品開発から上市までの期間)に2つの相反する影響を及ぼしました。まず、規制当局は、製造業者との協働性を高められ、多くの緊急使用許可の発行によって医療技術の市場投入を迅速化しつつ、患者の安全を維持するためのチェックアンドバランスを維持しました。その好例は初のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)ワクチンの開発であり、他の非パンデミックワクチンでは10~15年かかるところ、1年以内に開発され、使用許可が下りました。しかしながらその一方で、パンデミックはサプライチェーンの効率性に悪影響も及ぼしています。

実際、医療機器企業は激動の時代に身を置いていると感じており、パンデミックとそれに伴う継続的な「ロックダウン」だけでなく、地政学的な緊張の高まりによってももたらされるサプライチェーンの重大な課題に直面しています。報道でたびたび「chippageddon(Chip+Armageddon)」と表現される半導体チップ不足や、人材のリテンションに多大な影響を及ぼす「大量離職」は、慎重な航海が必要な荒れた海域のわずか2つの例にすぎません。

とはいえ、準備が整い、オーガナイズされ、うまく運営されている医療技術企業には、課題とともにチャンスが訪れます。こうした企業は、規制やサプライチェーン、人材の優れたパフォーマンスを十分に活用できるからです。

当該レポート全文は、Medical Devices, The new normal(原文PDF/英語)よりご覧ください。

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