リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ - 医療機器業界の持続可能性 -

※当レポートは、2023年3月にKPMG英国が発行したレポートを一部翻訳したものです。

欧州グリーンディール^※1は、今世紀半ばまでに温室効果ガス排出量を実質ゼロにし、EUを近代的で資源効率が高く競争力のある経済に変革することを目指す戦略です。その主な目標は、低排出技術、持続可能な製品およびサービスの世界市場における大きな潜在能力を活用し、2050年までに気候中立（クライメート・ニュートラル）を達成することです。しかしながら、気候中立（クライメート・ニュートラル）と循環型経済（サーキュラーエコノミー）を達成するには、産業界が全面的に関与し、各加盟国が各々の役割を果たす必要があります。EUの産業戦略は、グリーンとデジタル双方の転換を牽引することで、世界的な競争力をより高めることを目指しています。その結果、産業界は手頃な価格でクリーンなテクノロジーソリューションを提供し、新しいビジネスモデルを開発することによって、二酸化炭素排出量を削減できるようになると期待されています。

「ドイツ持続可能な開発戦略」（GSDS）の例を見てみましょう。この戦略は、EUグリーンディールの要件を満たすための唯一かつ最重要な成長のドライバーです。この広範な取組みの中で欠かせない要素が、2021年のいわゆる「サプライチェーン法（Lieferkettengesetz）」^※2です。この法律により、2023年には従業員3,000人超のドイツ企業、2024年には1,000人超の企業に影響が及ぶことになります。これは、原材料から最終製品に至る製造業のサプライチェーンにおける持続可能性の側面をカバーし、ドイツの持続可能性目標の達成を支援する手段となるでしょう。すべての製造業者に対するアプローチについては分からないものの、この種の政策は医療機器メーカーによって真剣に検討されるべきであると我々は考えています（注：国連による2022年の「欧州の持続可能な開発目標報告」によると、ドイツは持続可能性達成の進捗度ランキングで参加34ヵ国中6位にランクされています^※3）。

医療技術およびヘルスケア業界に影響を及ぼしているもう1つのより直接的な例は、英国における倫理的かつ持続可能な慣行と、NHSにサービスを提供するサプライチェーンの重点化です。英国は現在、国連のSDGsの進捗度ランキングで20位であり、この分野は順位を向上させるうえで重要な分野です。現在、NHSの入札では、入札企業が健全なESG戦略を実証できなければならず、入札プロセスではそうした企業に重点が置かれています。「調達ポリシーノート（PPN）06/20 - 中央政府の契約締結における社会的価値の考慮」^※4ではこうした基準を定めており、NHSとの取引を希望するサプライヤーおよび請負業者はその基準を遵守していること、NHSの持続可能性と倫理の基準で定められた目標を達成する軌道に乗っていることを証明しなければなりません。全体として、業界の慣行はより持続可能なサプライチェーンへと移行しており、このことは、世界規模で事業を展開する企業がサプライヤーに対し、持続可能なビジネス慣行のエビデンス提供を求めているという事実が示すとおりです。こうした企業はそのために、EcoVadis（エコバディス）などの認証を採用しています。

各国は、持続可能性を支援するために、新しい指令や規制の制定にも熱心に取り組んでいます。大手医療機器メーカーにとってESGアジェンダの重要性は全体的に高まっており、こうした企業はグリーンなオペレーションとサプライチェーンの確立に懸命に取り組んでいます。

本レポートでは、以下について解説しています。

• 規制
  
• 単回使用医療機器（SUD）
  
• 機器の再処理
  
• 機器のリサイクル
  
• ケーススタディ

出典：
※1　Industry and the Green Deal
※2　Lieferkettengesetz | BMZ
※3　Europe Sustainable Development Report 2022（PDF）
※4　Procurement Policy Note 06/20 – taking account of social value in the award of central government contracts

当該レポート全文は、From Linear to Circular – Sustainability in the Medical Device Industry（原文PDF／英語）よりご覧ください。