国際会計基準審議会、「経営者による説明」の改訂を決定

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2024年6月19日に、「経営者による説明」の改訂を決定したことを公表しました。

国際会計基準審議会(以下、IASB)は、2024年6月19日に、「経営者による説明」の改訂を決定したことを公表しました。

1. 概要

2024年6月19日、国際会計基準審議会(以下、IASB)は、IFRS実務記述書第1号「経営者による説明」(以下、マネジメントコメンタリー)の改訂について、2021年5月公表の公開草案による改訂提案について限定的な改善を行ったうえで最終化することを全会一致で決定しました。IASBは、国際サステナビリティ基準審議会(以下、ISSB)およびIntegrated Reporting and Connectivity Council(以下、IRCC)と連携しながら改善された改訂版マネジメントコメンタリーを2025年前半に公表予定であるとしています。

2. 背景

IASBは、企業報告を取り巻く環境の変化を踏まえ、2010年に公表したマネジメントコメンタリーを拡充するため、2017年にマネジメントコメンタリー・プロジェクトを立ち上げ、改訂に着手しました。IASBが2021年に公表した公開草案に対しては、多くの利害関係者から本プロジェクトへの支持が表明された一方で、IASBとISSBの協働を求める声が寄せられました。これを受けてIASBおよびISSBの双方のスタッフは、2023年4月にマネジメントコメンタリー公開草案と統合報告フレームワーク※の類似点と相違点を比較分析した結果を、IFRS財団の諮問機関であるIFRS諮問会議およびIRCCに報告しました。本分析では、統合報告フレームワークが求める内容要素のうち、「ガバナンス」と「作成と表示の基礎」に相当する要求事項がマネジメントコメンタリー公開草案にはないこと等を除いて、両者の目的、原則、報告内容に大きな違いはないとされています。

他方、ISSBは、2023年5月に情報要請「アジェンダの優先度に関する協議」を公表し、今後2年間の作業計画で優先すべき事項に関する意見募集を行う中で、「報告における統合プロジェクト」を候補として示しました。しかし、2024年1月に開催したIASBとの合同会議における本プロジェクトに関する進め方の協議、および情報要請に対して寄せられたコメント内容の審議結果等を踏まえ、同年4月に「報告における統合プロジェクト」を作業計画に追加しないことを暫定的に決定しています。なお、今後2年という短期間での最優先事項には含めないという決定はしているものの、ISSBおよびIASBは今後とも統合報告フレームワークの利用を継続することを奨励する旨を再度表明し、包括的な企業報告システムの提供に向けて引き続き取り組むとしています。

2022年5月に公表された共同声明にもあるとおり、IASBとISSBは、両者が協働して包括的な企業報告システムを提供するほか、両者が要求する報告内容のつながり(connectivity)に関し企業をサポートするガイダンスを提供することを目指しています。

※ 2022年のIFRS財団と価値報告財団(VRF)の統合後、統合報告フレームワークはIFRS財団の所有となっています。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
サステナブルバリュー推進部
伊藤 友希

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