人工知能(AI)と自動車分野に牽引され、産業の成長が見込まれるも、依然として人材不足が懸念される

KPMGは、Global Semiconductor Alliance(GSA)と協力して、2023年第4四半期に第19回グローバル半導体産業調査を実施しました。この調査では、半導体企業のエグゼクティブ172人に対してアンケートを行い、2024年以降の半導体業界の見通しについて調査しました。回答者の半数以上は、年間売上高10億ドル以上の企業に所属しています。

来年度の半導体業界信頼指数は54となりました(50を超える値はポジティブな見通しを示します)。前回調査のスコア(56)と概ね同等の値となりますが、過去5年間で最も低い水準となっています。この結果は、労働力の増加や研究開発(R&D)費、設備投資の見通しがやや低いことが主な要因です。実際51%のエグゼクティブが、自社の設備投資について延期を決定済み、または来年延期する予定であると回答しています。

業界リーダーは依然として堅調な収益増加を見込む

前回調査とほぼ同じく、83%の回答者が自社の収益が翌年度に増加すると予想しています(前回は81%)。ただし、予測成長率はわずかに低下しています。今回の調査では、リーダーの約40%が10%以上の収益増加を見込んでおり、これは堅調な値ですが、昨年の調査では半数の回答者が同様の見通しを持っていました。

エグゼクティブたちの業界の収益増加への見通しは、昨年よりも大幅に高まっています。実際、翌年度に業界収益が増加すると見込む回答者の割合は、前回調査の64%から今回は85%に増加しています。

自動車分野が引き続き最も重要な成長ドライバー

半導体企業の収益向上を牽引する最も重要な半導体の用途として、前回調査で自動車分野が初めて首位に立ちました。今回の調査でも、自動車のコンピューター化と電動化の進行を背景に、再びトップになりました。

過去数年の調査では無線通信が最も重要な収益ドライバーだった年もありましたが、昨年はトップから2位となり、さらに今年は3位に後退しました。
前回調査で3位だったクラウドコンピューティング/データセンターとモノのインターネット(IoT)は今回も同じく3位で、無線通信と同順位でした。

人工知能(AI)の重要性が急上昇

過去2回の調査によると、AIは半導体企業の収益向上を牽引する用途として4番目に重要視されていました。しかし、今回の調査では、昨年の無線通信に代わり2位に浮上しました。
また、AI向けの画像処理装置(GPU)などのマイクロプロセッサは、来年度、業界の成長機会をもたらす製品として首位となりました。なお、これまでの3回の調査では、マイクロプロセッサは年によって2位か3位の結果でした。
生成AI(Gen AI)は、半導体企業が今後3年間の戦略上の優先事項のトップ3に挙げた1つです。他の主な優先事項としては、人材の育成・維持とサプライチェーンのレジリエンス、M&A(合併・買収)、政府補助金の獲得、サイバーセキュリティ、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組みなどがありますが、生成AIはこれらの事項よりも上位に位置付けられています。

半導体企業が今後2年以内に生成AIを導入したいと考えている部門のトップ3は、R&D、マーケティング、製造です。

人材不足への懸念

技術分野の人材に対する需要は増加しており、人材リスクは半導体業界が今後3年間で直面する最大の課題とされています。過去2回の調査でもこの課題は首位でしたが、今回の調査では他の項目との差が広がりました。
また、人材の育成と維持は、業界リーダーにとって依然として戦略上の最優先事項であり、前回同様にサプライチェーンのレジリエンスよりも高い優先順位です。
業界リーダーは、非従来型の半導体企業(大手テクノロジー企業、プラットフォーム企業、自動車メーカーなど)が社内でシリコンの製造能力を拡大し続けており、これが人材不足の問題をさらに深刻化させているため、今後ますます競争が激化すると予想しています。
これらの人材問題に対応するため、半導体企業は過去に取り組んできた対策の上位3つとして、大学とのパートナーシップの強化、従業員への価値提供の向上、リモートやハイブリッドな働き方の導入を挙げています。

エグゼクティブによる余剰在庫の見通し

前回の調査では、24%の回答者が既に半導体の余剰在庫が発生していると回答しました。今回の調査では、その割合が30%に増加し、さらに12%の回答者が2024年末までに次の余剰在庫が発生すると予測しています。
市場の原理と経済環境に応じて在庫水準を下げることは半導体企業でよく行われる対策であり、調査結果でも、既に実施済みまたは来年実施予定の対策の2番目に位置しています。なお、1番目の対策は、先ほど述べたように設備投資の延期です。
過剰な製造能力は、今後3年間の業界の課題として上位4位にランクされており、前回の調査から順位を上げています。

一方で、AIなどの新技術の出現を信じるエグゼクティブも一定数存在し、持続的な成長に意欲を示しています。19%のエグゼクティブは需要が増加し続け、今後4年間は余剰在庫が発生しないと予測しています。この数値は昨年の調査から倍増しています。

2024年グローバル半導体業界の展望図表

当該レポート全文はGlobal semiconductor industry outlook for 2024(原文/英語)よりご覧いただけます。
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