ハイライト
トレンド1:公正な移行に向けた広い視野
これまで、「公正な移行」に関する議論の多くが、雇用に焦点を当てていました。しかし、これから目を向けるべきは、先進国と新興国の間における、投資、開発およびサステナビリティの成果の公平な分配です。今後1年間で、各国政府や国際機関が「公正な移行」の定義を拡大することが予想されます。それにともない、国家、セクターおよび市民の間での協力が促されるでしょう。
トレンド2:地政学の変化
コラボレーションやパートナーシップ、信頼が不足し、地政学的・経済的な逆風が吹くなかで、ビジネスにおける実際のリスクや想定されるリスクは多種多様化しています。今年、インフラ企業や投資家は、不確実性のリスクを測定、管理、軽減するための方法を探ることに注力すると考えられます。KPMGは、保護主義や分裂的な短期戦略に対し、経済学や優れた政策が勝利を収めるだろうと、慎重ながらも楽観視しています。
トレンド3:フィランソロピー資金の増加
インフラ開発に割り当てられるフィランソロピー資金は増加しています。国際開発金融機関(MDB)や開発当局とのパートナーシップのもと、フィランソロピー投資家は自らの資金力と、期待されるリターンを活用し、MDBが「ブレンデッド・ファイナンス」の手法で民間セクターの資金がより多くのプロジェクトに投じられるよう支援しています。これが成功すれば、より規模の大きいプロジェクトが市場、特に新興市場に参入し始めることになります。
トレンド4:「インフラネットワーク」への動き
都心の魅力は薄れつつあり、同時にインフラの分散化が進んでいます。一方で、それはインフラのプランナーや投資家にとってはまったく異なる世界です。規制当局もこの新しい環境への対応に苦慮することでしょう。しかし、新たなメカニズムを見つけ出さなければなりません。インフラの設計者や開発者はシステム全体の概念を設計に取り入れ、コネクティビティをモデル自体に取り入れるアプローチを再検討する必要があります。
トレンド5:テクノロジーの契約
政府および資産所有者の多くが、テクノロジーは既存の資産や投資の価値を最大化する手段であると考えています。最近では、イノベーションやテクノロジーに関する適切な契約の締結方法について、熟考し始めている政府や国際機関が増加しています。特に、エネルギー、建造環境および都市インフラなどの重要なセクターでは、インフラのイノベーションのさらなる進歩と導入が期待されています。
トレンド6:エネルギー転換の推進
ネットゼロへの道のりは、ますます複雑化しています。取組みの必要性を迫られているのは、政治家に限りません。今年は、投資家が資本配分によって圧力を強めることが予想されます。規制当局はこの問題の突破口を見出さなければなりません。また、消費者は経済的なコストを負担することに寛容にならなければなりません。グローバル機関は、新興市場におけるエネルギー転換のイニシアチブへの資金投入を促進させるための革新的メカニズムやプログラムを構築しなければならないでしょう。
トレンド7:規制権限の刷新
規制当局の対象範囲は、サイバーセキュリティ、レジリエンス、脱炭素化、資金調達、イノベーションなどのリスクにまで拡大しています。多くの人々が、これらのトピックは、規制当局ではなく政治家や政策立案者の管轄であると主張しています。今年はこの議論が多くの市場で重要な局面を迎えると予想されます。規制権限の強化・拡大に向け、規制当局と政府の協力のもと、改革への一定の取組みが始まると考えられます。
トレンド8:壊すのではなく柔軟に対応する
ネイチャー・ベースド・ソリューション(自然を基盤とした解決策)の推進をの加速させているのは、「グリーン・インフラ」が従来の「グレー・インフラ」よりも効果的で、サステナブルかつ経済的なアプローチである「グリーン・インフラ」のが確実性が高まっているためです。自然に根差した資産や取組みへの評価が普及していけば、企業は自社のバランスシート上でこれら資産をより適切に計上処理することができるようになるでしょう。実際、デベロッパーがコンクリートを流し込むだけではなく、ネイチャー・ベースド・ソリューションを標準とする日は遠くないでしょう。
トレンド9:環境社会を目指して
ほとんどの政府はIRAに対抗できないかもしれませんが、自国のグリーンエネルギーやレジリエンス市場への投資流入を改善するためにできることはまだ多くあります。短期的には、一部の国が保護主義に傾く可能性があるものの、政策立案者やリーダーは、均一に分散された公平なグリーン成長を促すことが数々の問題への解決策であると認識すべきです。ただし、必要なのは競争ではなく協力です。
トレンド10:次のフロンティア
テクノロジーの進歩は、より短いサイクルで起き、かつより大きなインパクトを与えています。そのため、各国政府やインフラプランナーは、インフラの設計や資産に柔軟性を持たせることを一層重視することが予想されます。新しいテクノロジーが計画に混乱を及ぼしても、既存の投資をより長期にわたって効果的に活用することで、混乱が生じた際に対処できる選択肢を持つことができます。
英語コンテンツ(原文)
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