KPMGは、16ヵ国、9業種の経営幹部2,100名に対し、デジタル変革(DX)の加速における認識や課題について調査を実施し、その結果をとりまとめた「KPMGグローバルテクノロジーレポート2023」を発刊しました。本調査により、多くのエネルギー企業が、自身が市場で直面する課題を克服するための重要要素として革新的テクノロジーを位置づけ、投資を拡大していることが明らかになりました。

KPMGグローバルテクノロジーレポート2023のポイント(エネルギーセクター)
  • エネルギー企業は、規制の不透明性、地政学情勢の悪化・変動、コストの高騰等、市場の混乱に対する取組みの展開・強化を通じて、革新的テクノロジーへの投資に対する自信を高めていることが判明しました。
  • 多くのエネルギー企業において、革新的テクノロジーへの投資を拡大させるなか、これらのテクノロジーを自身の事業に有効活用する素地が整いつつあるようです。実際に、「ローコード・ノーコードの採用やサイバーセキュリティシステムの導入を含むDXの取組みを通じて、過去2年で収益・業績が改善した」と回答したエネルギー企業は、72%にのぼります。
  • 一方、エネルギーセクターでは、他セクターと比較すると、人工知能(AI)に関する専門性の不足・欠如が、イノベーションや競争力維持の足かせとなることを懸念する企業も多く、革新的テクノロジーを通じたイノベーションの加速に関する課題に直面していることがわかります。
  • サイバーセキュリティやデータプライバシーの強化に関する規制当局や需要家・顧客からの監視がますます強まるなか、エネルギー企業では、このような規制要件・義務とセキュリティに対する懸念が、DXを推進する原動力として作用しているようです。
  • 本レポートで、多くのエネルギー企業が、既に導入を進めた既存テクノロジーインフラに高い自信を示す一方、2023年KPMGグローバルCEO調査では、CEOの多くが人材投資の重要性を指摘しています。エネルギーセクターにおけるDXプロジェクトでは、テクノロジーインフラへの投資と並行して、業界知識・スキルやAI分野のトレーニング等を通じたデジタルスキルや専門性の強化等、人材への投資を両輪で進めることが重要となるでしょう。

エネルギー企業の主な回答例

KPMGグローバルテクノロジーレポート2023円グラフ
KPMGグローバルテクノロジーレポート2023円グラフ

テクノロジーと人材への投資を両輪で進めることが優先事項

本レポートでは、回答企業の大半が、これまで構築・導入してきたテクノロジーインフラに対して高い信頼を置いていることがわかりました。実際に、「自社で導入を進めたテクノロジーを利活用することで、効率化・コスト削減を実現できると確信している」と回答したエネルギー企業は、全体の85%にのぼります(全体平均は75%)。

一方、2023年KPMGグローバルCEO調査では、エネルギー企業の半数以上が、スキル・能力向上に向けた人材投資の拡大を検討しているという調査結果が明らかになりました。エネルギーセクターにおけるDXプロジェクトでは、テクノロジーインフラへの投資と並行して、業界知識・スキルやAI分野のトレーニング等を通じたデジタルスキルの強化等、人材への投資を両輪で進めることが重要となるでしょう。

ローコード・ノーコードを導入するエネルギー企業が増加

これまで革新技術導入の最前線に立ってきたエネルギーセクターでは、72%にのぼる企業が、「ローコード・ノーコードの採用やサイバーセキュリティシステムの導入を含むDXの取組みを通じて、過去2年で収益・業績が改善した」と回答しており、多くのエネルギー企業において、さまざまなプロセスを迅速に(従来比で最大5倍)トラッキングできるローコード・ノーコードプラットフォームの導入が加速していることがわかります。

顧客体験やサービス品質の向上、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関するコンプライアンスの遵守のほか、全社的コラボレーションの加速を目的に利用されるローコード・ノーコードプラットフォームについては、74%のエネルギー企業が、これらを基盤としたアプリケーションのレジリエンスの高さに自信があると回答しています(全体平均は59%)。

セキュリティ上の懸念がDX推進の原動力として作用

サイバーセキュリティやデータプライバシーの強化に関する規制当局や需要家・顧客からの監視がますます強まるなか、エネルギー企業では、このような規制要件・義務とセキュリティに対する懸念が、DXを推進する原動力として作用しているようです。

このような規制当局や需要家・顧客の期待に応えるべく、エネルギー企業は、自社だけでなく、広範なバリューチェーン全体で遵守すべきガバナンスモデルを策定のうえ、高いセキュリティ基準を採用する傾向にあります。再生可能エネルギーなど、顧客体験が重視される新たな下流ビジネスが普及拡大するなか、今後も、サイバーセキュリティとコンプライアンスは、信頼性の高いDXイニシアチブを生み出すための重要ドライバーとして機能するでしょう。

英語コンテンツ(原文)

KPMG global tech report 2023: Energy sector insights

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