NFTの発行に係る会計処理の考察~Web3.0関連ビジネスの論点検討
メディア、エンターテインメント、テレコム業界などで活発化するWeb3.0ビジネスでは、非代替性トークン(NFT)が欠かせない存在になっています。企業がNFTを発行する場合、日本の会計基準の下でNFTに係る収益をどのように認識すべきか考察します。
Web3.0ビジネスで欠かせない非代替性トークン(NFT)に係る収益を日本の会計基準ではどのように認識すべきか考察します。
ハイライト
- NFTとは何か
- NFTを含むトークンの発行に係る現行の会計基準
- NFTの「発行」に係る会計処理
- おわりに
NFTとは何か
NFTはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略で、ブロックチェーンのデータに固有のIDが付与されるものを指します。NFTには明確な定義や法規制はありませんが、一般的にはデジタルコンテンツの流通やデジタルアートの閲覧権をトークンとして表現することや、仮想空間上の土地の利用権をトークンとして表現することなどが見られます。
NFTには商品設計によって金融規制の適用を受ける可能性がある一方、一般的に"NFT"と呼ばれるものは、既存の金融規制に該当しないトークンです。それぞれのトークンは固有の権利を表現し、非代替性の性質を持つと考えられています。
NFTを含むトークンの発行に係る現行の会計基準
現在、日本にはNFTや暗号資産を含むトークンの会計処理に特化した基準は存在しません。ただし、ICOトークンの発行に関する会計処理については、企業会計基準委員会(ASBJ)が開発を進めています。しかし、適切な会計処理方法には課題があります。 NFTは主に権利の移転による取引が行われるため、収益認識会計基準を適用することができる可能性が高く、既存の会計基準で対応できる場合が多いと考えられています。
NFTの「発行」に係る会計処理
NFTの発行によって移転する財やサービスが企業の通常の営業活動から生じたアウトプットかどうかを検討し、それに基づいて収益認識会計基準の適用を判断する必要があります。もし収益認識会計基準が適用されない場合、例えば移転対象が著作権の譲渡である場合、収益ではなく著作権の処分益を認識することが考えられます。ただし、NFTの発行によって知的財産のライセンス供与や関連するサービスを提供する企業は、通常の営業活動によってこれらを提供することが多いため、一般的には収益認識会計基準が適用されると考えられます。
収益認識の検討は、以下の5つのステップに従って行われます。
- 顧客との契約の識別
- 契約における履行義務の識別
- 取引価格の算定
- 契約における履行義務への取引価格の配分
- 履行義務を充足した時、または充足する際の収益の認識
おわりに
NFTの発行に関する会計処理について考察しました。しかし、NFTの販売には発行企業以外にも関連する企業があります。各々がどのように収益認識をするのかについては別途考察が必要です。
執筆者
KPMGジャパン テクノロジー・メディア・通信セクター
あずさ監査法人
パートナー 中根 正文
監修者
KPMGジャパン テクノロジー・メディア・通信セクター
通信セクター統轄リーダー
KPMGコンサルティング
ディレクター 石原 剛
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