はじめに

KPMGは、2023年3月、グローバル企業の経営層を対象に、生成AIが業界に与える影響や企業の導入準備状況を把握することを目的に調査を実施しました。6月には米国のエグゼクティブを対象にフォローアップ調査も行っています。テクノロジー・メディア・通信セクターの経営層は、生成AIが生産性の向上、競争優位性の獲得、成長の牽引役であるとの認識が高く、他業界の大半のビジネスリーダーよりも自社テクノロジーのインフラは新しいAIにいつでも対応できると確信し、すでにユースケースを検討していることが明らかになりました。

  • テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の41%が、生成AIが収益や市場シェアを拡大する重要な機会であると強く思うと回答(全体では31%)
  • テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の60%が、生成AIを活用する企業は競争優位に立つと強く思うと回答(全体では48%)
  • テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の72%が、生成AIが従業員のイノベーションを促進すると予想(全体では63%)
  • テクノロジー・メディア・通信企業の15%が、すでに少なくとも1つの生成AIソリューションを実装(全体では9%)

テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の大多数は生成AIに前向きだが、リスクも十分に認識している

テクノロジー・メディア・通信セクター経営層は生成AIを最有力の新興テクノロジーであると見ており、その考えはますます強まっています。一方で、3月の調査ではテクノロジー・メディア・通信セクター経営層の42%が、生成AIに伴うリスクとリスク緩和が極めて重要な課題であると回答しています。6月の調査では、76%が個人情報のプライバシー問題のリスク緩和が優先事項であると回答しました。

豊富なユースケース

テクノロジー・メディア・通信セクター経営層が回答した自社が生成AIを応用する可能性が高い上位分野は、以下のとおりです。

  • AIベースのバーチャル・リアリティ・ゲームを含むソフトウェア開発(55%)
  • メディアコンテンツ生成(55%)
  • 会話要約(55%)
  • サイバーセキュリティとデータ保護(50%)

過半数が、これら4分野で2024年中に生成AIの実装があると予想しています。

サブセクター別ユースケース

テクノロジー

テクノロジー業界は、業務効率の向上や、提供する製品やサービスの魅力向上に生成AIを利用しています。具体的には、ソフトウェア開発におけるコードの生成からユーザーインターフェースのデザイン、ソフトウェアプログラム全体に至るまで活用でき、ラピッドプロトタイピングやドキュメントの生成、反復の多いコーディング作業の自動化に貢献します。ロゴや商品パッケージの作成にも生成AIを利用できます。

メディア

メディア業界では、執筆、音楽、画像・映像などのコンテンツ創作が生成AIの有望な活用分野です。テレビCMや番組、映画の原案づくりから、映像編集、音声の文字起こし、字幕作成のプロセス自動化まで創作プロセスを効率化し、コンテンツの魅力を高める役割を果たすと考えられています。また、データや情報を視覚的に表現するために生成AIを利用すれば、データを駆使したニュースをより容易に報道できるようになります。

通信

通信業界では、まず通信ネットワークの改善が生成AIの活用分野です。潜在的なボトルネックの特定、リソース割当ての最適化、保守管理ニーズの予測に生成AIを利用できます。データプランやサブスクリプションのアップグレード、付加価値サービスなど顧客に合わせたサービス提案にも活用できるでしょう。

テクノロジー・メディア・通信企業が生成AIの導入で直面する障壁

テクノロジー・メディア・通信セクターの経営層は、他業界と比較して、生成AIに対応する準備ができていると見ています。

  • テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の37%が、自社に高度なITインフラがあると回答(全体では18%以下)
  • テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の25%が、適切な人材がそろっていると回答(全体では15%)
  • テクノロジー・メディア・通信セクター経営層の60%が、おそらく今後半年から1年で社内の対応能力を評価すると回答(全体では51%)

テクノロジー・メディア・通信企業が直面する課題の1つは、組織内で利用される多数の生成AIエンジンをどう調整するかです。急速に変化する生成AIのエコシステムが、組織の既存テクノロジーと今後導入するテクノロジーの統合に与える影響を効率的かつ責任を持って理解することが求められます。

次のアクション

いち早く行動するテクノロジー・メディア・通信企業には生成AIの先行者利益を獲得する大きな機会があります。KPMGは、企業が生成AIの活用を始めるための5つの重要アクションを特定しました。

  1. データとデータシステムに対応する
  2. 初期ユースケースを特定し、追求する
  3. 導入およびガバナンス戦略を策定する
  4. 従業員の体制を整える
  5. 適切なパートナーを探す

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