本稿は「月刊テレコミュニケーション(2023年11月号)」に掲載された記事の転載です。転載にあたっては、株式会社リックテレコムの許可を得ており、無断での複写・転載は禁じます。
以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の修正・補足を加えていることを、予めお断りします。
日本の通信業界は、今、目まぐるしい環境変化に晒されています。
KPMGは、通信業界の“V字回復”には、“脱・自前主義”と“協調と共創”が必要だと考えます。また、5G/ローカル5Gの普及には、業界の枠を超えた連携によってユースケースを創出していくことが重要です。
本稿では、通信業界の持続的な成長と、それを可能にする“協調と共創”を誘発する仕組みづくりについて解説します。
通信業界における持続的成長とは
近年、通信インフラのライフライン化が進んでいます。ベストエフォートで音声通話を提供していた時代とは異なり、すべてのものが通信で繋がっている現在、ひとたび通信が停止すると、人命に影響を及ぼしかねないほどミッションクリティカルになってきていると言えます。
その一方で、通信トラフィックは増大の一途を辿っています。総務省の調査によると、トラフィックは直近10年間で約17倍に増加しており、今後も増え続けるトラフィックへの対応は急務となっています。しかし、政府主導の通信料金値下げなどにより回線系ARPU(契約回線当たりの売上)が右肩下がりの減少を続けるなか、5Gインフラへの投資も後手に回っています。さらに、環境に配慮した通信インフラの整備と運用も今後は求められることとなります。
こうした環境変化に晒されている日本の通信業界が、持続的に成長を続けていくには、通信インフラの高度化と効率化の両立、新しい収益源の確保、コスト削減を同時に推し進めていく必要があります。
そのためには、“脱・自前主義”と“協調と共創”が重要だとKPMGは考えます。たとえば、通信インフラでは、大胆なインフラシェアリングの活用により、CAPEX、OPEXを削減し、その分を新しい収益源となる事業領域、顧客基盤を活用した新規サービスや、人材不足が想定される医療/物流/製造業に向けたソリューション開発などへの投資に回すことができます。しかし、これらを“自前”で作り上げるのは難しく、そのため、スタートアップなど他業種との“協調と共創”でユースケースを開拓していくことが重要となります。
業界を超えて“協調と共創”を
KPMGは、通信業界全体の底上げにつながる“協調と共創”を誘発する仕組みづくりに注力しています。近年、多くの企業が採用している「パーパス経営」の概念を、事業者単位から業界全体へ広げ、5G/Beyond 5G時代のパーパス、ミッション、ビジョン、バリュー(PMVV)を定義すると、それぞれの競合領域では競争をしつつも、企業のPMVVと業界のPMVVの重なった部分では競合企業とも協業できる可能性が見えてきます。PMVVの重なりあう部分では共感が生まれ、その芽を大きく育てれば、業界の“V字回復”が期待できるのではないでしょうか。
KPMGの支援
インフラシェアリングでは、競合する通信事業者の連携が必須ですが、そこには中立な立場から事業者間を調整していく役割を担う存在が必要となります。日本は、インフラシェアリング後進国であり、世界から学ぶことも多いでしょう。
ローカル5Gの制度では世界の先頭集団にいる日本ですが、プライベートネットワークの活用ではPrivate LTEで先行するグローバルのベンチマークが必要です。ローカル5GではB2Bのユースケース創出が鍵を握りますが、業界ごとに異なる経営課題を解決するには、通信業界のみならずさまざまな業界ナレッジを有する専門家による連携が有効です。
KPMGが提供する5G/ローカル5G導入支援サービスは、業界の枠を超えた混成チームにより、業界ごとに5G/Beyond 5G時代の在りたい姿を定義し、経営課題解決に資するソリューションを提供しています。
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【5G/ローカル5G導入支援サービスで活用するフレームワーク例】
執筆者
KPMGコンサルティング
ディレクター 石原 剛
シニアマネジャー 土生 由希子
マネジャー 根岸 次郎