ブラジルの移転価格制度:ブラジル連邦歳入庁による意見公募
2023年7月3日、ブラジル連邦歳入庁(Receita Federal do Brasil-RFB)は、新たな移転価格制度を制定した法律14,596/23に関する細則を定める新たな規範指令(IN)に関する意見および提案を集めることを目的とした意見公募RFB第1号/2023を公表しました。
ブラジル連邦歳入庁は、新たな移転価格制度を制定した法律に関する細則を定める新たな規範指令に関する意意見公募を公表しました。
意見公募は2023年7月3日から7月25日までに開催される予定であり、当該問題の複雑さから、今回の意見公募の開催は各ステークホルダーから歓迎されています。
KPMGブラジルでは、規範指令の草案のなかで注目すべきトピックを挙げた意見公募RFB第1号/2023に関するニューズレター(ポルトガル語)を発行しました。
(ポルトガル語原文)
Preços de transferência no Brasil: Consulta Pública RFB
なお、以下は日本語訳です。
2023年7月3日、ブラジル連邦歳入庁(Receita Federal do Brasil-RFB)は、新たな移転価格制度を制定した法律14,596/23に関する細則を定める新たな規範指令(IN)に関する意見および提案を集めることを目的とした意見公募RFB第1号/2023を公表しました。
意見公募は2023年7月3日から7月25日までに開催される予定であり、当該問題の複雑さから、今回の意見公募の開催は各ステークホルダーから歓迎されています。
規範指令の草案のなかで注目すべきトピックとして、以下が挙げられます。
- OECDが公表する「OECD移転価格ガイドライン2022年版」および今後の改訂は、法律14,596/23、またはその改正法、規範指令、またRFBが公布するその他の規制に対して反する、もしくは不整合が存在しない限り、移転価格の規制の解釈のための補完的な情報源として扱われる可能性があります。独立企業間原則の適用には主観的要因が存在し、その解釈の余地が大きいことから、当該ガイドラインの使用は非常に重要視されています。
- 草案では関連当事者間の取引の例が提示されており、そのなかで、株式およびその他の持分の譲渡に関する取引が含まれています。したがって、事業のリストラクチャリングといった企業再編が移転価格の対象となることが確実視されています。
- 草案では機能分析および関連当事者間の取引の特定に重要とされる下記のファンクションに関する例が提示されています。
- 経済的に重要なリスク
- 商品、権利およびサービスの特性
- 経済状況
- 事業戦略
- 比較可能性の調整
- 移転価格の算定において使用される比較対象について、検証対象が事業を行っている市場(comparáveis domésticas)において比較対象として使用可能な取引が特定できない場合、重要な差異に対して合理的な調整が可能であることを条件に、他国の市場の比較対象(comparáveis não domésticas)の使用が認められています。
- MLT法の適用において、信頼性が高くかつ適切な比較対象であれば、企業全体のデータ(dados não transacionais)を使用することが認められます。
- 異なる関連当事者間の取引の間でベネフィットを相殺することが認められます。ただし、他の租税事象に関する扱いについては明確なオリエンテーションが示されていません。
- 草案ではOECDガイドラインに沿う形で、PIC法の適用において、非関連当事者間の取引を比較対象として使用することが可能となるよう、広範な基準が定められています。
- コモディティ商品の概念、またコモディティ商品を含む関連当事者間の取引を検証するために適用される移転価格算定方法は、法律14,596/23の規定に沿った形となっています。
- コモディティ商品の輸出入に関する契約および補足書類をRFBのシステムに登録する義務は維持されています。登録は、契約または補足書類が締結された日から10日後までに行う必要があります。
- 従来の移転価格算定方法(PIC、PRL、MCL)について、重要と考えられる比較可能なファクターの例が提示されています。
- 取引単位に基づいた移転価格の算定方法(MLTおよびMDL)の実務上の適用は、OECDガイドラインに沿ったものとなっています。
- 法令で定められた移転価格算定方法を、信頼性を保障する形で適用できない場合に限り、代替的な移転価格算定方法を適用する可能性が改めて明言されています。
- 検証対象は、原則として、機能上の特徴が複雑でない方が選択されることが示されています。
- 補償調整は、申告書類(ECF)の提出までに行うことができます。但し、関連当事者間の取引が行われた年度の帳簿上に記録する場合のみ認められます。
- MLT法を適用する場合、他の税金の課税標準に補償調整が含まれないことが明示されています。
- 低付加価値サービスの概念はOECDガイドラインに基づいており、独立企業間原則の観点から認められるためには、対象取引の総利益率が5%であることを証明すれば十分であるとされています。
- 移転価格の文書化において以下の書類が含まれます。
- マスターファイル:企業が属する多国籍グループおよび多国籍グループを構成する他の企業の組織構造および活動に関する情報
- ローカルファイル:関連当事者間の取引および関連当事者に関する情報
- CbC(country-by-country)レポート:多国籍グループのグローバルでの収益、資産および法人税の配分に関する情報
- 上記のファイルは裏付け文書とともに、RFBの電子上の手続きを通じて、ECFと同様の提出期限までに送信する必要があります。
- 法令上、移転価格文書の未提出、または不完全、不正確な情報、または記載漏れが確認された場合、罰則が課されることが規定されています。原則として、移転価格文書の提出義務を免除する基準は想定されていません。
- 2023年度における関連当事者間の取引への新移転価格制度の任意適用を選択する期限は2023年9月30日と定められていましたが、2023年11月1日から30日までに変更されています。
- 最後に、草案では、カントリーリスクの差異に関する比較可能性の調整に対するガイダンスが附属されています。
- 上述のトピックの他に規制を要する多くの課題が存在します。RFBは、実務上で必要となるガイダンスおよび特定の事項に対する明確化を反映すべく、規範指令を定期的に更新することを示しています。
なお、上記の日本語訳は一般的な情報の提供を目的に作成しているものであり、正確性を期すためにも必ず原文をご参照ください。また、何らかの行動を取られる場合は、ここにある情報のみを根拠とせず、必ずプロフェッショナルが特定の状況を綿密に調査したうえで提案する適切なアドバイスをもとにご判断ください。