ハイライト
KPMGによる2022年バイオ医薬品業界のディール予測
2022年におけるバイオ医薬品業界のディール予測のポイントは以下のとおりです。
- 300億ドルを超える大型合併を敬遠する傾向が続く
- バリュエーションは割れるものの、バイオ医薬品業界の業績と見通しは健全である
- バイオ医薬品業界は、パイプライン全体のイノベーションを追求するため、中小規模のディールにフォーカスすると予想される
- リスク源が多様化し、R&Dの生産性・効率化への関心が再燃するなか、業界ではディールストラテジーによるリスク低減や開発加速への関心が高まるか、あるいはリスクシェアリング戦略により、戦略的R&Dコラボレーションなどのアライアンスが結ばれることが予測される
- 大手バイオ医薬品企業が完全企業買収のターゲットとして評価するのは、魅力的なパイプライン資産を持ち、革新的なプラットフォームがあるかである
2022年に入り、経営幹部間でディールについて楽観的な見方が強まる
2020年にディール件数が増加し、2021年もその勢いが続いたことから、経営幹部の過半数(〜65%)が2022年もM&A活動が増えると予測しました。新型コロナウイルス感染症の影響や世界経済の回復には不確実性があるものの、製薬企業のパイプラインでは破壊的なイノベーションが続き、大手製薬企業にとって魅力的な状況が続きました。しかし、インフレや景気後退のリスクも考慮すべき要因となっていることは明らかです。製薬業界のイノベーションを後押しする強力な追い風を受け、特許出願件数も増加しています。大手バイオ医薬品企業が狙う小規模のイノベーティブな企業を取り巻く環境は充実しており、今後もディールの小型化が進む傾向が促進されるでしょう。
2022年の不確実性の高まりがディールストラテジーの方向性を決める
2021年初頭、KPMG米国はFTC(米国連邦取引委員会)が規制を強化する可能性を指摘しました。現時点ではFTCが製薬会社のディールを阻止したとの発表はないものの、専門家はFTCがセカンドレビューに関与し、ディールの精査回数が増えていると述べています。この動きが2020年と比べて2021年にディール件数が減少した要因の1つと考えられ、2022年もこの傾向は変わっていません。
製薬業界では、イノベーションの追求とパイプライン拡充の必要性により、M&Aは魅力的な状況が続いているものの、インフレや金利上昇、景気後退のリスクも考慮すべきです。2022年第1四半期のディール数は261件で、過去2年と同じペースですが、バイオ医薬品企業はリスク管理に取り組んでおり、製品買収などリスクを抑えたストラテジーが増えています。バイオ医薬品業界の完全企業買収に関しては、2022年後半に完全企業買収が加速しない限り、2022年のディール数とサイズは減少する見通しです。
小規模のバイオ医薬品企業とのディールを通じたイノベーションは引き続き重要な戦略に
2022年第1四半期のディールを見ると、大型企業買収トップ3のうち、2件はアーリーステージのプラットフォーム企業の買収でした。これら2件の取引は、パイプライン資産だけでなく、さまざまなアセットの開発基盤となる可能性を見込んだ科学プラットフォームを獲得するための買収です。全体的に見ると、細胞・遺伝子関連ディール活動が活発であり、2022年もこの傾向が継続すると予想されます。また、戦略的R&Dコラボレーションの増加が見られ、完全企業買収よりコラボレーションが重視されるという変化が業界内に広がりつつあります。さらに、補完代替治療薬(大麻・サイケデリックス医薬品(幻覚剤))領域のパイプライン資産に関するイノベーションにも注目が集まっており、大手製薬企業が関連企業を買収する動きがあります。
最終的な見解
- リスクや不確実性があるにもかかわらず、製薬業界のディール活動は停滞していない。逆に新たなオポチュニティを見つけて自社のポートフォリオに重要なパイプラインを構築しながら、不確実性を軽減するディールストラテジーを追求している。
- 規制・監視を強めるFTCへの対応リスクや、世界経済の不確実性が非常に大きいため、大型合併は引き続き敬遠される。
- 賢明に資産を運用するには、小規模でイノベーティブなバイオテクノロジー企業やアセットをターゲットとしたディールが得策である。ターゲットを取り巻く環境が充実しているため、破壊的パイプラインを構築するさまざまな機会に資本を分散して投じることができる。
英語コンテンツ(原文)
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