序文「患者の治療は持続可能なビジネスモデルなのか」
ライフサイエンス業界は患者数の減少だけではなく、新型コロナウイルス感染症の流行や気候変動が健康に及ぼす長期的な影響、SDGsの達成など、さまざまな課題に直面しています。そして、業界全体がオムニチャネルによるデジタル化に取り組んでおり、このハイパーコネクティビティは、大きな利益をもたらすことができる一方で、それを正しく理解・実行するのは至難の業となっています。
不確実な時代のパートナーシップ
ライフサイエンス業界は、将来的に健康イニシアティブに重要な役割を果たすことになるでしょう。しかし、大手製薬企業が革新的なソリューションを迅速に開発できるかどうか、バイオテクノロジー企業が十分な資本と支援を得られるかどうか、また企業が急速に変化する規制に遵守しながら、リスクやコンプライアンスを管理できる可能性は未知数です。
新しい医薬品や医療機器を開発するには、ますます複雑なプロセスが必要になるため、自社内での研究開発だけでは追いつかなくなっています。
戦略的なパートナーシップやコラボレーションの構築
大手製薬企業とバイオテクノロジー企業がパートナーシップを結ぶことによって、患者中心の治療に焦点を当てやすくなるほか、金額に見合う価値を提供し、リスクを分散し、多様なテクノロジーを導入し、知識を普及させることができます。
バイオテクノロジー企業は、大手製薬企業の財力やカバー範囲を利用して、ターゲットを絞ったソリューションの開発に専念することができます。他方で大手製薬企業は、バイオテクノロジー企業の柔軟性を利用して、現実的なスケジュールと予算どおりの目標達成を手にすることができます。
このパートナーシップには、特許ライセンシング、株式取得、非資本提携(業務提携)などがありますが、戦略的・協業的なアプローチを含むことが多くなっています。
立ち止まり、手を携え、耳を傾けよう
すべてのパートナーシップが成功するわけではありません。製品が失敗する、市場が変化する、ライバル企業に先を越される、目標や関心が変わる、コミュニケーション不足、異なる文化、不明確な役割、人間関係など、さまざまな事象が原因になることもあります。
しかし、それらの要因を軽減し、効率や協力関係、パフォーマンスの最大化に焦点を当てたパートナーシップを構築する方法があります。パートナーシップを成功に導くためには、7つのステップがあります。
- リスクを検討する(メリットだけを考えない)
- パートナーシップの範囲を決める
- 詳細なパートナーシップ契約をまとめる
- テクノロジーとコンピテンシーを監査する
- パートナーシップの期間と、その間に実現したい目標を検討する
- 出口戦略をまとめる
- 適時の意思決定ポイントとして確実に測定できるマイルストーンを決めることで、定期的・計画的なビジネス評価を実施する
大切な一歩を踏み出そう
世界は変化しており、人々のつながりが増え、社会や環境に対する意識が高まっています。すべての人にヘルスケアが必要とされているなか、バイオテクノロジー企業と大手製薬企業が重要な役割を担っています。両者は協力し、競争優位性を持つ革新的なソリューションを開発することによって、あらゆる人が優れた医療的な成果を手にできるように後押しできるでしょう。
英語コンテンツ(原文)
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