本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

さいたま市におけるカーボンニュートラルの取組み

スマートシティに求められるのは、人口減少やインフラの老朽化などへの対応だけではありません。地域の「脱炭素化」も課題となります。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を受け、政府は2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを2020年に宣言しました。2021年5月の改正地球温暖化対策推進法の成立を機に、地方自治体でも2050年までに二酸化炭素(CO2)の実質排出量ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言する都市が急増しました。
政府2021年6月、国と地方が協力して脱炭素を進めるため「地域脱炭素ロードマップ」を公表し、特に中間目標となる2030年までに、全国で少なくとも100ヵ所の「脱炭素先行地域」の実現を目指すとしています。

従来より地域課題の解決のためにスマートシティに取り組むなかで、脱炭素化にも柔軟に対応しているのが、さいたま市です。
さいたま市は、2009年にスマートシティの取組みの前身となる「E-KIZUNA Project」(イー・キズナ・プロジェクト)」を開始しました。充電網を整備するなど需要創出とインセンティブの付与で、電気自動車(EV)など次世代自動車の普及を目指したものです。
2011年には「次世代自動車・スマートエネルギー特区」の指定を受け、「環境未来都市」の実現を目指して、再生可能エネルギーを活用し地域で電力を融通する「スマートホーム・コミュニティ」や、EVバイクを共有する「低炭素型パーソナルモビリティ」の普及に取り組んできました。2015年には分野横断型の「スマートシティさいたまモデル」に向けて、「公民+学」の連携での街づくりを始動させています。

2022年の環境省の「脱炭素先行地域」の第1回募集では、目指す地域脱炭素の姿として「さいたま発の公民学によるグリーン共創モデル」を掲げた計画が選定されました。脱炭素先行地域とは、脱炭素を全国に広げる「脱炭素ドミノ」のモデル地域を指します。
同市の計画の特徴としては、再生可能エネルギーのポテンシャルの低い自治体であっても取組み・実現可能な汎用性の高いサステナブル(持続可能)な都市型モデルである点、民間事業者や学術機関と連携してスピード感を持って取組みを進める共創モデルである点の2つが挙げられます。

具体的には、市全体の再生可能エネルギーを活用して、電動アシスト自転車やスクーター、超小型EVを共有する「シェア型マルチモビリティサービス」の導入拡大により、住民の利便性の向上や混雑緩和、ウォーカブル(居心地が良く歩きたくなる)な人中心の街区空間の整備、災害時の対応といったさまざまな課題を複合的に解決する取組みとなります。2022年9月には米環境保護局(EPA)のマイケル・リーガン長官が同市を視察しました。
同市は今後、都市全体でのCO2削減量など、施策の効果の可視化をどう進めていくかについても検討を重ねる予定です。

解決しなければいけない課題が山積するなかで、その1つである「地域脱炭素」を流行で終わらせないためには、視野を広げて考える必要があるでしょう。脱炭素化への取組みが、地域の成長戦略ともなり、地方創生に役立ち、地域課題の解決による住民の暮らしの質の向上につながるなど、一石何鳥もの取組みになることが重要です。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日経産業新聞 2022年10月7日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 河江 美里

スマートシティの社会実装に向けて

お問合せ