本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

東北大学との連携と市内エリア別実施主体の存在

仙台市のスマートシティの取組みには、大学との連携と、市内エリア別の複数組織による推進という2つの特徴があります。
同市は、世界トップレベルの知見や技術などを有する東北大学と連携してスマートシティに取り組むため、2022年1月に「仙台市×東北大学スーパーシティ構想推進協議会」を設立しました。今後、先端技術を使ったスマートシティの実証と、ソーシャルイノベーションモデル、ビジネスモデルの構築を目指していくと言います。

スマートシティはさまざまな形が考えられますが、内閣府が2021年に作成した「スマートシティ・ガイドブック」では規模別に2つの典型的な類型を示しています。都市圏や都市を対象とする「行政主導型」と特定の地区を対象とする「エリアマネジメント型」の2つです。

仙台市は、人口約109万人の政令指定都市であり、多様なニーズをもつ住民が居住することから、市全域を対象とするのではなく、地域ごとに住民・事業主・地権者などが主体的に取り組むエリアマネジメント型のスマートシティづくりを進めており、スマートシティに取り組む実施主体が仙台市で複数立ち上がっています。具体的には、(1)「仙台市×東北大学スーパーシティ構想推進協議会」(2)「仙台市泉区における先進取組協議会」(3)「仙台市中心部商店街活性化協議会」などがあります。
東北大学との協議会は、同大の青葉山キャンパスを中心に先端サービスの導入・実装を推進し、泉区の協議会は、約1万世帯が居住する郊外型住宅団地「泉パークタウン」の社会課題解決に向けて、先進的技術の導入やタウンマネジメントの仕組み構想に向けた検討・研究活動に取り組んでいます。市中心部の商店街活性化協議会は、街の魅力向上や課題解決に向けて、面的にデータを取得する試みを始めています。

仙台市ではさらに「(仮称)仙台市スマートシティ推進協議会」の設立・運営に向けて検討を進めています。分野横断のデータ活用を可能とするデータ連携基盤を2021年度に構築しており、各実施主体の取組みを有機的に連携させて、市全体としてのスマートシティ推進につなげるため、実施主体間の調整をする横断的な組織を立ち上げようとする考えです。
あわせてデータ連携基盤の効果的な活用方法を検討するほか、協議会の参加者間で共通データとして取り扱うべくルールを整備し、多様なデータを活用して新たな価値を創出するために必要な事項などを整理していくと言います。

仙台市のスマートシティの取組みは、「エリアマネジメント型を束ねる行政主導型」の枠組みという全国的にも珍しい「入れ子型」の構造をとりながら、市全体としてスマートシティづくりを進めていく点が大きな特徴となっています。

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日経産業新聞 2022年10月6日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 黒澤 隆

スマートシティの社会実装に向けて

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