本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

スマートシティ化に積極的な京都府の取組み

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」。その重要な柱として位置付けられるのが「デジタル田園都市国家構想」です。同構想は「官が呼び水となって民間の投資を集め、官民連携で社会課題を解決する」とし「デジタル技術を活用して地方活性化を加速する」狙いがあります。人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTの技術を地域づくりに取り入れ、2025年度までにスマートシティを100地域構築することを目指します。

国の政策と連動しながら、スマートシティに積極的に取り組む自治体の1つに京都府が挙げられます。
京都府は全国に先駆けて、スマートシティの実現を目指す産官学プロジェクト「京都ビッグデー夕活用プラットフォーム」を構築しました。自治体や企業、大学・研究機関のビジネスマッチングやアライアンスを促すもので、2022年8月時点で151の企業・団体が参加、府下の20自治体が名を連ねます。
「京都スマートシティエキスポ」というイベントも2014年から毎年開催されており、2022年も10月6、7日の2日間に行われました。同イベントでは、スマートシティに積極的に取り組む自治体をシンポジウムに招くなど、全国のトレンドを集約し、企業との交流を実現させる場としています。京都からデジタル田園都市国家構想とスマートシティを生み出す機運を醸成する狙いもあるようです。

京都府は、場の提供のみならず、個別プロジェクトの組成も支援しています。目玉事業の1つとして準備が進むのが「けいはんなサステナブルスマートシティ事業」です。
同事業は、国の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」のうち、高度な事業性などが求められる「デジタルTYPE2」の採択を受けています。地元企業のウェアラブル端末などを使って、住民の健康増進と消費促進につながる行動変容を促すサービスを提供するほか、利用者の移動・消費など生活データを蓄積・分析することで都市サービスの改善も目指しています。
同事業は交付金を活用して2022年度内にスモールスタートで事業を開始し、2023年度以降は公的な財政負担なく「自走」を目指します。

スマートシティのサービスを社会実装する際に課題となるのが、持続可能なビジネスモデルの確立です。
各地で技術実証が進みますが、採算が合わず実装に至らないケースが散見されています。「けいはんなサステナブルスマートシティ事業」では、府が事務局として事業組成を支援する一方、事業の主体は民間企業とすることで、事業のスケーラビリティ(拡張性)を確保します。
京都府の取組みが軌道に乗れば、広域自治体による支援のもと、社会的課題を解決する官民連携事業の新規創出に成功した1つのモデルとなるでしょう。

政府は「地方創生推進交付金」「地方創生拠点整備交付金」「デジタル田園都市国家構想推進交付金」の3つの交付金を再編し、新たに「デジタル田園都市国家構想交付金」として2023年度予算の概算要求で1,200億円を計上しました。
政府の施策を追い風としながら、「京都ビッグデータ活用プラットフォーム」に参加する自治体と企業などが連携して第2、第3の自走型事業を生み出し、持続可能な形で社会課題が解決されていくことが期待されます。

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日経産業新聞 2022年10月5日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
マネジャー 平田 篤郎

スマートシティの社会実装に向けて

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