本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。本連載は、日経産業新聞(2022年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

スマートシティ実現に向けた都市OSの取組み

都市OS(データ連携基盤)とは、都市をまたがったデータ連携サービスを実現するための仕組みを言います。本稿では、コンピュータの基本ソフト(OS)になぞらえて、スマートシティにおける都市OSの目的や役割を解説します。

「入力装置」は、都市のさまざまな情報を収集するための装置です。防犯・防災用の監視カメラのほか、道路上の車両の通過を把握する装置など、情報をリアルタイムで取得可能なセンサーなどがそれにあたります。
都市に関する情報発信や機器などを遠隔操作する装置は「出力装置」と言えます。デジタルサイネージ(電子看板)、信号機やエレベーターなど人流や交通を制御する機器も出力装置になります。
一方、収集した情報をストックするのが「記憶装置」です。データを安全に管理するため、都市OSではさまざまなデバイスを活用します。また、最新技術を活用して情報を解析したり、入出力装置を制御したりするのが「演算機能」です。たとえば、監視カメラの映像から交通渋滞を感知してその原因を特定し、渋滞解消のための演算を施して交通管制することなどがこれにあたります。

都市の情報ネットワークは高速通信規格「5G」などで形成します。あらゆるモノがネットにつながるIoT技術の進化により急増する情報に対応でき、安定した通信環境を実現する5Gなどの高度な通信ネットワーク技術の役割は重要です。都市OSをコンピュータのOSが果たす役割に置き換えてみると、目的が(1)都市の運営管理の効率化(2)都市のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じたサービス連携の2つであることがわかりやすくなります。

政府は、日本社会が目指すべき未来社会の姿を「超スマート社会」と名づけ、その実現に向けた取組みとして「ソサエティ5.0」を推進しています。スマートシティ実現に向けた取組みが進むにつれて「都市OS」という言葉がたびたび登場するようになってきました。一方で、都市OSが必ずしも成功していない事例も散見されます。
たとえば、国の補助金を活用して都市OSを導入する際に、地域課題を解決するためのユースケースやそれを具体化したサービス(アプリケーション)が明確に定義できていない場合、導入はできたものの運用するための維持費や改修費が捻出できず、放置されているケースなどです。

他の地域で導入された都市OSをそのまま横展開するといった活用ではスマートシティの実現はおぼつかないでしょう。都市OSの構築時にそれぞれの地域の課題に対応するのに必要な事項を洗い出し、それに対応するアプリケーションソフトウエアを検討・設計し、オーンイノベーションを通じて、都市OSを活用したサービスを継続して利用・改善していくことが重要です。

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日経産業新聞 2022年9月13日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日経産業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
ディレクター 大関 洋

スマートシティの社会実装に向けて

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