はじめに

消費者が自分の好きな食べ物を購入するのは、自分が何を欲しているか、いつどのように欲しくなるかを知っているからですが、必ずしもその理由について考えているわけではありません。今日の消費者は購買の意思決定において、リアルタイム情報へのアクセスやソーシャルメディアを通じた情報共有など、かつてないほどさまざまな影響を受けており、食品・飲料メーカーにとって購買トレンドの早期把握は以前ほど簡単ではなくなってきています。

KPMGは、人の消費行動における変化を示す最新の兆候について分析し、米国の消費者需要に変化をもたらしている6つの重要な側面を特定しました。これら6つの側面を理解することで、食品・飲料メーカーは、製品ポートフォリオや投資をより適切に管理し、効率的なマーケティング活動を行うとともに、消費者の購買意欲を高めることが可能になるでしょう。

米国における食品・飲料消費の変化:ハンガーサイン(空腹の兆候)を見逃さないで-1

ライフスタイルと価値観

コロナ禍をきっかけに、多くの消費者は自分にとって本当に価値のあるものは何かを、強く意識するようになり、今や自己の価値観に基づいた購買が主流になっています。おおよそ3人に1人が、何を購入し、決定の動機は何かを含め、購入の意思決定をより意識的に行うようになったと述べ、43%が自分の価値観に合ったブランドから購入したいと考えています。特にZ世代の消費者は、コロナ禍に自分の価値観を磨いたと回答する割合が高く、自分の価値観に照らして購入の意思決定を下す傾向も高くなっています。

健康、免疫力、メンタルヘルス

コロナ禍によって、栄養ある食生活は精神の安定と健康を支えるということが広く理解されるようになりました。半数以上(56%)が、この1年で健康的な食事に対する関心が強くなったと述べており、特に若い世代の消費者ほど健康的な食事の重要性が高まったとしています。また、消費者は気分をよくするために食べ物に頼るようになりました。おおよそ4人のうち3人が、食べ物は心地よさをもたらし、気持ちを高揚させ、精神の健康を改善し、喜びの感覚をもたらすと述べています。しかしZ世代では、食べ物が疲労感や不安感、罪悪感をもたらすと考える回答者の割合が高いことに、食品・飲料メーカーは注意する必要があります。

罪悪感のない間食

消費者は、健康的な食生活を送るという目標を犠牲にすることなく、食欲をそそり、欲求を満たしてくれる間食を求めています。ほとんどの消費者が食べ物で気分が良くなると考えていますが、大抵の場合、気分を良くする食品には、消費者が避けたい成分が含まれています。多くの企業は、罪悪感をもたらす食べ物をより少量のパッケージにする、消費者が好む食べ物に含まれるカロリー、炭水化物、脂肪などを減らす、栄養添加物で間食をより健康的なものにするといった手段で、消費者を取り込んでいます。

グローバル化と高級化

消費者は世界各国のフレーバーを楽しんでいます。回答者の少なくとも60%が、イタリアン、アメリカンバーベキュー、南米・メキシコ料理、中華料理などのフレーバーのスナック類の購入に関心を示し、地中海、カリブ海、アジア各国のフレーバーも回答者の3分の1以上から需要がありました。今回の調査では、ミレニアル世代、Z世代、そして年収が10万ドル以上の層が、新しいフレーバーに平均以上の関心を示していました。若年層は、ソーシャルメディアなどを通じて異文化に触れる機会が多く、高所得層は旅行に出掛けて、世界の味を直接体験している可能性が高いといえます。

利便性 vs. 持続可能性

人間が間食をする主な理由は、欲求を満たし、空腹を抑えることですが、Z世代では、より便利で価格が手頃であることを理由に、食事代わりにスナックを食べる傾向が強くなっています。そして彼らは、退屈、寂しい、疲れている、機嫌が悪いといった理由でスナックを食べる傾向があります。また、消費者のあいだで需要が高まっているのが、環境に負担をかけない食品です。83%は、食品の調達・調理において、廃棄物を最小限に抑えるべきであると考え、63%は、持続可能な、あるいは倫理的に調達された食品を購入することが重要だと述べています。

ブランドのメタバース進出

メタバースにおけるビジネスチャンスは急拡大しており、食品・飲料メーカーの商取引に新たな変革をもたらす可能性があります。過去3ヵ月間において、Z世代の消費者の44%がメタバースプラットフォームを使用し、35%がプラットフォーム上で商品を購入しています。2025年までには、ビデオゲーム内の仮想グッズだけで1,900億ドルの売上になると予想されます。仮想世界と物理世界の橋渡しとなるビジネスモデルが出現しつつある今こそ、企業にとって戦略やユースケースを試すチャンスです。メタバースを利用して消費者にリーチした企業の多くは、大きな成果を得たと報告しています。

次のステップ

クレジットカードや携帯電話のデータなど消費者の需要や動態に関する貴重な情報を正確に活用するために、食品・飲料メーカーは、消費者や需要に関するより深く幅広い情報にアクセスできるよう、データ分析機能を強化することが重要です。データ駆動型の分析能力は、次のような成長戦略と優先項目に適用することができます。

  • 需要の主な側面のうち、現在および潜在的な顧客にとって重要なものを特定する。
  • 消費者の主な動機と意思決定要因に関して詳細に理解する。
  • 自社の成長計画に即してイノベーションや買収上の優先順位を絞り込み、M&Aや有機的成長の機会についての既存の分析を補完する。
  • 高級化によって成長を牽引している場合、消費者がどの程度まで支払うかを判断し、複数の消費者セグメントのニーズに合わせて製品ポートフォリオや価格帯を調整する。
  • ESG目標の進捗状況を見える化し、利害関係者に提示できるようにする。
  • 意図的なメタバース参加戦略を策定し、購入までに時間がかかる消費者を惹きつける。

食品・飲料メーカーは、包括的で高度な消費者データ分析に基づいた成長戦略を武器にすれば、今日の購入者の進化する需要に対応し、将来に向けた適切な製品ポートフォリオを定義することができます。

英語コンテンツ(原文)

Hunger signs

お問合せ

こちらは「KPMG Japan Insight Plus」会員限定コンテンツです。
会員の方は「ログインして閲覧する」ボタンよりコンテンツをご覧ください。
新規会員登録は「会員登録する」よりお手続きをお願いします。

競合他社の方は、登録をご遠慮させていただいております。