購買行動の変化

2022年前半は堅調な消費活動が報告され、粘り強い消費力が景気を下支えしていますが、インフレによる消費意欲の減退から、一部の消費者は買い物を控えたり、見送ったりしています。

調査対象となった消費者の約70%は、インフレを理由に裁量支出額を変更する予定だと回答しています。また、49%はレストランやバーでの支出を減らし、41%は贅沢品の購入を減らし、38%は旅行費用を減らす予定だと回答しています 。

購買行動が変化している

購買習慣の変更で物価上昇分を吸収しようとする消費者もいます。20%は買う商品数を減らすとし、14%はバーゲンセールを探すために時間をかけると回答しています。また、13%はセール品の購入を増やす、購入先をディスカウント店に切り替える、などと回答しています。注目すべきは、43%が変更点はないと回答している点です。

消費者がお金を節約しようとするなか、量販店や1ドルショップは市場シェアを拡大するのに有利な立場にありますが、高級品店や専門店は大きな課題に直面することになるでしょう。

カテゴリー別に見た小売価格の上昇

消費者は何ヵ月もの間、物価上昇を受容してきましたが、商品カテゴリーのすべてで物価上昇を感じるようになり、意欲が薄れてきている可能性があります。95%が過去6ヵ月間に物価上昇を実感しており、食料品・生活雑貨(79%)、外食(73%)、旅行・行楽(66%)が高い上昇率を示しています。

87%はインフレを懸念しており、43%は「強い懸念」と回答しています。商品カテゴリー別では、食料品・生活雑貨(89%)とガソリン(85%)の値上がりへの懸念が強く、いずれも半数以上が 「強い懸念」と回答しています。

在庫不足とサプライチェーン

消費者は商品の価格上昇に加え、品切れも経験しており、59%が過去3ヵ月間に、食料品・生活雑貨が品切れになっているのを見たことがあると回答しています。商品の品切れや品不足を、「いくらか懸念している」から「非常に懸念している」とした回答者は、約70%に上っています。

サプライチェーンの課題は当面解決しない

インフレの継続、上昇する燃料価格や輸送コスト、工場の操業停止、不確実な地政学的情勢などの悪条件によってサプライチェーンが深刻な問題を抱えた結果、小売業者も課題に直面しています。例えば、ロシアとウクライナの紛争によって、小麦等のウクライナ産品のサプライチェーンはひっ迫していることに加え、中国がゼロコロナ政策のもとでロックダウンを実施しているため、テクノロジー製品を中心に物資の流れが混乱しています。

旅行への意欲

消費者が家計に不安を感じているとしたら、旅行を控えるのではないか、という推論もできますが、新型コロナウィルス感染症による行動制限が緩和され、需要が累積している今、消費者の間では旅行や行楽に出かけようとする意欲が高まっています。夏の旅行を計画している回答者は2021年の49%から2022年には62%まで上昇しましたが、59%は物価高に対応するため予算は抑えたいと回答しています。

燃料高騰で変化が加速

KPMGの調査によると、85%がガソリン価格の上昇を懸念しており、自動車の所有者はガソリン購入の行動や通勤方法を見直しています。37%は購入前に周辺のガソリン価格を入念に調べています。また、29%は車の利用を控えており、このことが実店舗への客足に影響を与える可能性があります 。

ガソリン価格の上昇をきっかけに、電気自動車やハイブリッド車への乗り換えに関心を持つ消費者(48%)もいます。そのうち35%は1~2年以内に電気自動車またはハイブリッド車の購入を検討していると答え、28%は1年以内の購入を予定しています。

現在、大半がガソリン車を所有していますが、特定の層は、電気自動車やハイブリッド車を運転する可能性が高くなっており、代表例として、男性、Z世代、ミレニアル世代、高所得者などが挙げられます。

今後に向けて

旺盛な消費支出に支えられていた経済環境が変化し、消費者は経済の不確実性に不安を抱き、コストに敏感に反応するようになりました。小売業者や消費財メーカーは変化に合わせて戦略を調整していく必要があります。次の点を考慮することをお勧めします。

  • 収益成長管理戦略を強化する
  • 品ぞろえ拡大のあらゆる機会を最大限重視する
  • イノベーション、自動化、労務管理に力を入れる

 

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