日台事前確認制度の概要と実務上の留意点(第1回)

日台事前確認制度(APA)の概要として、台湾における事前確認制度申請の要件と一般的なスケジュールについて紹介します。

日台事前確認制度(APA)の概要として、台湾における事前確認制度申請の要件と一般的なスケジュールについて紹介します。

1. はじめに

日本と台湾の間の経済交流は、半導体、自動車、電子部品などをはじめ多岐にわたる分野で行われていることは周知のとおりです。このような経済交流の発展に伴い、両地域間にまたがる国際取引に関する二重課税問題の解消を行うための制度の創設が求められていました。

2015年に双方の民間団体である公益財団法人交流協会と亜東関係協会は、『所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め』(以下、「日台租税協定」)に署名し、2017年より両地域において発効されました。これにより、両地域間での二重課税を排除するための仕組みの一つとして、事前確認制度(以下、「APA」)の運用が開始されました。

日本は世界で初めてAPAを導入した国・地域であり、多くの経験を有する一方、台湾の税務当局はAPAを含む相互協議の経験が浅く、試行錯誤の段階にあります。​

移転価格課税リスクが顕在化すると、非常に多額の課税ならびに長期に渡る調査対応が要求されます。このため、移転価格課税リスクを事前に排除し、税務ガバナンスの向上にも資するAPAに対して、多くの企業が注目しており、とりわけ日本との間で活発な経済交流が行われている台湾との間のAPAへの関心が顕著に高まっています。

​特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行以降、半導体産業を始めとしたエレクトロニクス産業における世界的な供給不足、インフレの進行などに伴い、エレクトロニクス産業の世界的な集積地である台湾の動向に対する注目は、日本を含む世界各国で高まっており、今後各国税務当局による台湾所在企業に対する取引への注目も増していくものと考えられます。

KPMGは、台湾における一国内APA(台湾にある企業が台湾の税務当局とのみ移転価格についての合意を得る方法です。締結国側での移転価格調整リスクは排除されますが、相手国側では引き続き移転価格調整リスクが残ります。)の締結経験、ならびに日台間での二国間APAの第1号、第2号案件を合意に導いた経験を有しています。日台間でのAPAの申請を検討している企業にとって有益な情報となるよう、二国間APAを中心に、日台APAの概要、APA申請にあたっての実務上の留意点を全3回にわたって解説します。

第1回では、日台APAの概要として、台湾におけるAPA申請の要件と一般的なスケジュールについて紹介します。

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