ACGAが日本のプライム企業のジェンダーダイバーシティ推進に向けた提言を公表

アジア企業統治協会(ACGA)は、企業価値の長期的な維持・向上の観点から、多くの機関投資家の賛同を得て、ジェンダー・ダイバーシティのさらなる推進に向けた提言を公表しました。

アジア企業統治協会(ACGA)は、企業価値の長期的な維持・向上の観点から、多くの機関投資家の賛同を得て、ジェンダー・ダイバーシティのさらなる推進に向けた提言を公表しました。

2022年10月19日、アジア企業統治協会(Asian Corporate Governance Association、 以下「ACGA」)は「東証プライム市場上場企業取締役会におけるジェンダー・ダイバーシティ推進の提言(公開書簡)」(以下「同文書」)を公表しました。これは、ACGAの会員である機関投資家のうち、有志のメンバーで構成する日本ワーキンググループの見解および提言として、企業価値の長期的な維持・向上の観点から取りまとめられたものです。

同文書は、日本企業の取締役会に占める女性比率は上昇している一方で、他の先進国の水準を依然大きく下回り、また他のアジア諸国と比較しても低い現状を指摘するとともに、取締役候補となりうる女性執行役員の比率の引き上げが急務である点にも言及しています。

そのうえで、具体的には、以下の内容を提案しています。
 

東証上場審査基準(対象:東証プライム市場上場企業)
  1. 東証プライム市場に新規上場する企業の取締役会が同性のみで構成されている場合、上場を認めないこととする。
  2. すべての東証プライム市場上場企業に対し、可能な限り早期に少なくとも1名の女性取締役を、またその2~3年後といった合理的な期間内に、少なくとも2名の女性取締役の就任を義務付ける。
  3. すべての東証プライム市場上場企業に対し、2030年の年次株主総会終了時までに、女性取締役比率30%の達成を義務付ける。

 

日本のコーポレートガバナンス・コード
改訂予定:2024年6月
野心的な目標:すべての東証プライム市場上場企業に対し、可能な限り早期に女性取締役比率30%の達成を義務付け、その他の上場企業に対しても2名以上の女性取締役の任命を促す。
改訂予定:2027年6月
野心的な目標:すべての上場企業に対し、可能な限り早期に女性取締役比率30%の達成を義務付ける。


同文書は、東京証券取引所の審査基準や、コーポレートガバナンス・コードの改訂内容を具体的に提案しているため、先ごろ、国際コーポレートガバナンスネットワーク(International Corporate Governance Network、 以下「ICGN」)が公表した「ICGN 日本のガバナンスの優先課題 (以下「ICGNの優先課題」」より、さらに踏み込んだ内容を提示しているともいえます。その一方で、同文書において、ACGAが、ジェンダー・ダイバーシティを強化するための方策として列挙した取締役のスキルマトリクスの活用、指名委員会の実効性の向上、取締役研修の充実、ダイバーシティに関する方針や目標の設定、取締役に関する開示の充実などは、ICGNの優先課題にて挙げられた推奨事項にも含まれており、責任ある投資方針を擁するグローバルな投資家の期待が、現状よりさらに高い水準に置かれていることが理解できます。

同文書の原文は、以下から閲覧できます。

英語版:ACGA Open Letter: Gender Diversity in TSE Prime Market Boards
日本語版:東証プライム市場上場企業取締役会におけるジェンダー・ダイバーシティ推進の提言(公開書簡)

執筆者

あずさ監査法人
KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン
シニアマネジャー 橋本 純佳

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