本連載は、日刊工業新聞(2022年5月~8月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

エネルギーの地産地消による地域経済の活性化

燃料価格の高騰、卸電力価格の急騰などを理由に、電力会社から電気料金の値上げを迫られている企業が多いのではないでしょうか。ただ、より安い電気料金に切り替えようにも、大手電力会社すら追加の供給力を確保できる見通しが立たないため、特別高圧・高圧といった法人向け電力プランは新規受付を一時停止している状況です。
新規受付を再開した電力会社も一部出てきていますが、市場連動型プランが多く、卸電力価格の急騰リスクを企業が負う形態となっています。地政学リスクの長期化といった要因を踏まえると、卸電力価格が下落する可能性は低く、企業にとって電気料金をいかに抑制するかは重要なテーマとなっています。

企業での電気料金の抑制方法には、大きく分けて3つあります。

(1)電力消費量の削減。空調・照明・製造での高効率な設備への転換や導入による省エネ
(2)電力需要の抑制。空調・照明の調整・停止などの節電によるピークカット、生産・業務設備の計画変更によるピークシフトなど
(3)太陽光発電と蓄電池を活用した自家消費モデルによる、電力会社からの電力調達量の抑制。日中は太陽光発電で発電した電気を使用し、余剰電気を蓄電池に蓄電し、夜間などに放電して利用することで、電力調達量を削減するもの

二酸化炭素の削減で脱炭素にも貢献できることから、今後、企業は(3)の自家消費モデルを選択していくと考えられます。

電気料金の高騰は、企業にとどまらず、一般家庭も含めた地域全体の課題です。一般家庭でも前述した3つの抑制方法は有効ですが、広く地域全体でエネルギーコストを低減していくには、「エネルギーの地産地消」が重要となります。
これは、生産地と消費地を一致させる概念に基づき、発電した場所で電気を消費する考えです。電力需要の近くに、太陽光発電・風力発電・バイオマス発電などの再生可能エネルギー電源と蓄電池を設置し、需要と供給のバランスを取ることで、電力会社からの電力調達量を減らすことができます。
収益性を確保するには、再生可能エネルギー電源を、いかに多くその地域に設置できるかがカギとなります。たとえば、北海道の沿岸部は、洋上風力発電のポテンシャルが高い地域と言えます。ただし、供給に対して需要が少ない場合には、再生可能エネルギー100%電力や脱炭素貢献などをインセンティブとして、その地域外から企業を誘致し、電力需要を高めることになります。
エネルギーの地産地消は、エネルギーコストの低減だけではなく、再生可能エネルギーにかかわる産業の育成・発展、企業誘致による新たな産業創出などによる地域価値向上や地域経済の活性化も期待できます。

日刊工業新聞 2022年7月8日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
パートナー 伊藤 健太郎

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