本連載は、日刊工業新聞(2022年5月~8月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

都市機能の最適化を志向するスマートシティ

少子化による労働者不足、高齢化に伴う医療費増大、社会インフラの老朽化による維持管理・更新費増加など、わが国の地域課題は山積しています。これらの社会課題や多様化する住民ニーズに対して、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などのテクノロジーを活用したスマートシティ関連サービスの社会実装が期待されており、政府は2025年までに国内でスマートシティ100地域の構築を目指すとしています。 「スマートシティ3.0」とは、2000年代の「スマートシティ1.0」(再生可能エネルギーなど環境との共生を志向)、2010年代の「スマートシティ2.0」(ビッグデータ解析によるエネルギー分野以外の社会課題解決志向)に続く、分野横断のデータ利活用による都市機能の最適化を志向するスマートシティを指します。
またWeb3.0と言われる、情報を独占してきたテック巨大企業に対し、ブロックチェーン(分散型台帳)などを活用して情報の主権を民主的なものにしようという動きと同期します。

スマートシティに関連し、2022年3月には「スーパーシティ型国家戦略特区」および「スーパーシティ型革新的事業連携型国家戦略特別区域」に5自治体が選定されました。また、「デジタル田園都市国家構想」は、「新しい資本主義」の実現に向けた成長戦略の柱の1つです。地方の豊かさをそのままに、利便性と魅力を備えた新たな地方像を提示するもので、デジタル実装タイプのTYPE1~3、地方創生テレワークタイプの計4種類の交付金があります。TYPE1は、他の地域などですでに確立されている優良モデル・サービスを活用した実装の取組みで、行政サービス、住民サービス、健康・医療の順に採択件数が多くなっています。TYPE2と3はデジタル原則とアーキテクチャを遵守し、オープンなデータ連携基盤を活用する、モデルケースとなり得る施策で、スーパーシティに取り組んでいた複数の自治体が検討を進めています。

KPMGコンサルティングでは、スマートシティ、スーパーシティ、デジタル田園都市国家構想などに関する事業計画策定や事業性検討、実証支援といったアドバイザリーを公的機関や民間企業に提供しています。
本連載ではKPMGの各分野のプロフェッショナルがデータ連携基盤や通信、セキュリティ、財務などの視点から、スマートシティ3.0の実現に向けた解説をしていきます。

日刊工業新聞 2022年5月20日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
ディレクター 大島 良隆

進化するスマートシティ

お問合せ