本レポートは、学生・社会人・主婦など、職業・性別・国籍を問わない16歳~28歳のZ世代と呼ばれる方たちを対象に、Cocoroé社と共同で行った調査をまとめたものです。
物心ついた時からインターネットやSNSの存在がフツウであるZ世代が考える未来のまちとはどのようなものか?8チームに分かれ行われたワークショップを通じて考察しています。
最前線で取組みを進めている国、行政、民間企業が今後のまちづくりの方向性を検討するにあたり、本レポートが新たな視点を得るきっかけとなりましたら幸いです。
目次
- Z世代の思考傾向
- 「2100年フツウのまち」4つのビジョン
- 「2100年フツウのまち」4つのビジョン解説と考察
- 今後のまちのあるべき姿について
- Appendix:「2100 年フツウのまち」調査プロセス
Z世代の思考傾向
「2100年フツウのまち」4つのビジョン
ワークショップの結果から、Z世代が未来のまちにおいて「フツウ」であって欲しいと願うポイントは、以下の4領域に集約されました。
- 価値観を広げる出会いがあるのがフツウのまち
ワークショップ参加者の半数以上から挙がった意見です。10~20代という自己形成過程の最中で、個が尊重されながらさまざまなコミュニティを行き来することが求められています。 - チャレンジを生み出すのがフツウのまち
ワークショップの8チーム中、2チームから発表されました。スタートアップがしやすい、全員表現者になる、応援することで人と人がつながるなどの意見が挙がりました。 - 豊かな自然からひらめきを得るのがフツウのまち
ワークショップの8チーム中、1チームから発表されました。豊かな自然とテクノロジー、太陽光、風力など時間やタイミングによって使う・生み出すエネルギーが異なり、それらの違いをうまく活用する生活が理想といった意見が挙がりました。 - 救急医療・健康テックでご機嫌に生きるのがフツウのまち
ワークショップの8チーム中、1チームから発表されました。超高齢社会での救急医療の重要性、救急車の到着が遅いことは、世界共通の問題であるといった意見が挙がりました。
「2100年フツウのまち」4つのビジョン解説と考察
- 1のビジョン:自己形成の最中にいるZ世代思考が、ベースとなっていることの表れ
今回の調査に参加したZ世代は、高校生4名、大学生18名、社会人4名というメンバー構成でした。この年代は自己確立の途中段階のため、自身の在り方や模索のしやすさが大きなテーマでした。ワークショップではすべてのチームで、自己の確立のためにコミュニティがどうあって欲しいかが話題になりました。 - 2のビジョン:多種多様な情報や価値観と現状の日本社会の「はざま」で、Z世代が感じていることの表れ
Z世代は、スマートフォンから世界中の情報と価値観を吸収しながら情報感度を高めつつも、同調圧力の
強い日本社会で、素直な自分を表現することに制限を受けながら生活しています。このギャップから「個」を育むコミュニティ、好きな自分で居られるコミュニティ、冒険や挑戦ができるコミュニティを求める傾向が強まっていると考えられます。 - 3と4のビジョン:自然環境保全と超高齢社会の救急医療に対する考え方と多くの共感を得た背景から可視化されたビジョン
今回の調査の参加者である三島市で環境保護団体に参加している高校生や、屋久島で自然の循環を感じながら生活する社会人の方が、自然が与えてくれる新たな経験やインパクトの強さを語ってくれました。また、医学大学院生からは超高齢社会における救急医療の重要さが話題に挙がり、どちらもチームを超えて多くの共感を集めました。さらに後日の追加調査では、自然環境と救急医療にテクノロジーを歓迎する傾向も確認されています。最初の発端は少数だったものの、Z世代が考える未来イメージが反映されていたと捉え、ビジョンとして可視化しています。
今後のまちのあるべき姿について
これまで整理したビジョン1~4は実際のまちとどのように融合できるのでしょうか。2100年のフツウのまちでは、おそらくテクノロジーの進化により、大幅に時間や場所の概念が変わっていることが想像されます。
デジタルテクノロジーが発展することで、“タイムラグなく”、“瞬時に”、そして“どこにいても”同じモノが手に入り、同じコトができるようになりました。今後もデジタル化が加速していくなかで、現実世界でしかできなかったことが、人間の従来の感覚を通しても違和感のない形で、遠隔や異なる空間で実現できるようになるでしょう。
デジタル技術を活用すると容易にチューニングができ、少し離れた場所とアセットを共有してさまざまな人の悩みを一度に解決できる可能性があります。しかし、多くの装備を持ったまちは維持費がかさみ、時代の変化に合わせた取組みがしづらくなると考えられます。
そのため、まずはクイックにソフトコンテンツを利用して、まちの変化を人々に体験してもらい、ニーズが見えてからハードインフラを改修していくことが必要かもしれません。
また、異なる視点として、「大量の情報を自分のなかに取り込む」ことがフツウの世代にとって、オールマイティな、言い換えると特徴のないまちは魅力のないものとなるでしょう。
このように、仮想空間上でも現実と変わらない活動ができ、また物理空間においても移動の制約から解放されていくと、2100年のまちは、これまでのように、ある1つの場所で、仕事や家族との生活、趣味活動など、すべてが完結するオールマイティなまちを金太郎のようにたくさん作る必要はないと考えられます。
すでにあるアセットを活かしてもう少し機能を絞り、整理したビジョンのどれか1つがミニマムに実現されている、もしくは、今回は挙げられなかった他の側面が飛びぬけて素敵で個性的なまちを整備していくことにより、日本全体が柔軟でしなやかになるかもしれません。
Z世代の考える2100年フツウのまち:
こんな風に人が集まれば、まちはもっと素敵になれる会議
ビジョンレポート2022
※レポートの全文では、調査の詳細や各人のディープインタビューが掲載されています。ぜひご一読ください。
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