「ネットゼロ」実現に向けた取組み~政策立案・予算執行視点から見た主要論点~
「ネットゼロ」実現に向けた取組みと今後の課題について、民間部門の「取組み(変革)」を後押しする政策立案・執行現場の視点から、「サステナブル投資資金調達環境の整備」、「イノベーション創出環境の整備」、「「取組み」の新たな価値とリスク対応」の主要論点について考察します。
「ネットゼロ」実現に向けた取組みと今後の課題について、民間部門の「取組み(変革)」を後押しする政策立案・執行現場の視点から考察します。
民間部門(経済・金融・産業)の主体的な「取組み」なくして、ネットゼロを実現することは困難です。機関投資家等からの開示要請等により、民間部門においてもネットゼロに向けた「取組み」をコミットする動きが増えていますが、「全体でみるとまだまだ取組みが十分でないこと」は明らかです。
民間部門の「取組み(変革)」を後押しする政策立案・予算執行現場(パブリックセクター)では、様々な視座を併せ持ちながら、この「取組み」実行を後押ししていく必要があります。例えば、「GHG排出削減量」はわかりやすいKPIですが、政策立案の現場においては、深刻な影響を受ける産業・地域等の保護や激変緩和措置も考慮しなければならないのです。
ESG対応については、海外規制動向、GHG排出量の削減手法、未対応リスク、開示規制、技術動向等から語られることが多かったように思います。本紙では、「ネットゼロ」実現に向けた取組みと今後の課題について、政策立案・執行現場の視点から考察してみたいと考えています。
政策立案・執行視点で見た「ネットゼロ」実現取組みの主要論点
- サステナブル投資資金調達環境の整備
サステナブル投資資金は堅調に推移。開示の活性化に向けたツールの整備が期待される。 - イノベーション創出環境の整備
革新的技術や新たな事業創出・育成に向けた政策は今後も注力される領域である。 - 「取組み」の新たな価値とリスク対応
サステナブルインパクト指標等、新たな価値評価指標が生み出されている。サステナブル投資機会の創出・育成やトランジション対応、地方創生への波及等複数の視座からみた取組みにしていく必要がある。
I.要旨
(1)政策立案・執行における「ネットゼロ」取組み視点
ネットゼロ(GHG排出量実質ゼロ)達成を公約として表明する国は増加していますが、民間部門(経済・金融・産業)の「取組み」なしに、ネットゼロを実現することは困難です。機関投資家等からの開示要請等により、民間部門においてもネットゼロに向けた「取組み」をコミットする動きが増えている一方、移行に向けた対応状況は業界・各社さまざまです。そして、「全体でみると、まだまだ取組みが十分でないこと」は明らかです。
一方、民間部門の「取組み(変革)」を後押しする政策立案・執行現場(パブリックセクター)では、さまざまな視座を併せ持ちながら、この「取組み」実行を後押ししていく必要があります。
例えば、「GHG排出削減量」はわかりやすいKPIですが、政策立案の現場においては、深刻な影響を受ける産業・地域等の保護や激変緩和措置も考慮しなければなりません。この「取組み」に必要不可欠なイノベーション創出のための資金支援や民間資金導入サイクルを確立する必要もあります。規制や財源措置を導入した場合の経済的・社会的影響を考慮しなければなりません。そして何よりも、これらの「取組み」に対する予算執行が、官民双方にとって、中長期的に社会的価値を創出し続けるものであることを示し続ける必要があるでしょう。
(2)政策立案・執行視点で見た「ネットゼロ」実現取組みの考察
ESG対応については、海外規制動向、GHG排出量の削減手法、未対応リスク、開示規制、技術動向等から語られることが多かったように思います。本紙では、「ネットゼロ」実現に向けた取組みと今後の課題について、以下の視点から考察してみたいと考えています。
- サステナブル投資資金調達環境の整備
ESG投資資金の推移、調達促進に向けた政策検討上のポイント - イノベーション創出環境の整備
革新的技術や新たな事業創出・育成に向けた政策事例と今後のポイント - 「取組み」の新たな価値創出とリスク対応
サステナブルインパクト指標等、新たな価値評価指標の潮流とESG規制が既存産業に与える影響
図表1 政策立案・執行視点で見た「ネットゼロ」の取組み論点
執筆者
KPMGジャパン ガバメント・パブリックセクター
ディレクター 林 哲也
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