BEPS2.0の最新動向とテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響

BEPS2.0として現在世界各国が連携して所得配分の適正化と、最低法人税率15%の導入を目指した議論が継続しています。該当多国籍企業は早ければ2023年以降税務申告を含む対策が必要になります。

BEPS2.0として現在世界各国が連携して所得配分の適正化と、最低法人税率15%の導入を目指した議論が継続しており、該当多国籍企業は早ければ2023年以降税務申告を含む対策が必要。

1.BEPS2.0の概要

デジタル化とグローバリゼーションという大きな変化が、100年以上も続いてきた国際課税の枠組みへの挑戦をもたらし、BEPS(Base Erosion and Profit Shifting/税源浸食と利益移転)の機会を生み出したとされ、OECDとG20諸国が協力して2015年11月にBEPS行動計画に関するパッケージを公表しました。その後、IT企業を含む多国籍企業グループにおけるビジネスのデジタル化・電子経済化に伴う税務上の問題への対策を念頭に、BEPS2.0として、さらなる所得配分の適正化、最低税率の導入と、デジタル課税への対策が進められています。

BEPS2.0のうち、Pillar1とは、IT企業を含む多国籍企業グループが稼得した利益のうち超過利益の⼀定割合を関係各国に再配分する制度(利益A)と、消費者に対して直接アクセスしているか否かにかかわらず、多国籍企業における事業実態が認められる市場国に対する最適な所得配分(利益B)を目指す取組みを指しています。

利益AはGAFAMなどの非常に大規模なグローバルに展開する高収益企業を主に対象とした措置であり、グループの総売上高が200億ユーロ(約2.6兆円)超、かつ、税引前利益率が10%超の多国籍企業グループを対象に、利益(課税ベース)の10%を超える部分(超過利益)の25%相当額(利益A)が、課税する権利を有する市場国に売上等に応じて配分される仕組みです。利益Aは原則としてグループ(連結)ベースで適用されますが、適用除外業種があること(採掘業、規制された金融業等)、開示セグメント別に分けて利益Aを適用することがありうることが指摘されています。こうした個別論点は2022年5月末時点では一部のみしか開示されておらず、今後順次公開予定です。

図1 みなし残余利益のみなし残余利益のグループ内での再配分の仕組(利益A)

BEPS2.0の最新動向とテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響_図1

一方、利益Bは、ビジネスの電子化・デジタル化に伴い、サービスの提供をする企業・事業者と、その消費者が存在し実際にサービスが実施される国が異なる、いわゆる国境をまたいだサービスの提供が急拡大して、サービスの提供者が稼得する所得に対して、実際にサービスの提供を受ける消費者が所在する国における課税漏れが問題となっていたことへの対応を狙いとしています。したがって、「市場国」に、該当する多国籍企業の子会社や支店がなくても、一定以上の売上が発生した場合には、自国の消費者に対するマーケティングや流通にかかる活動に見合った最低限の利益を、市場国に対して配分・納税することを求める仕組みとなります。

図2 市場国におけるマーケティング・流通活動に対する適切な所得配分ルール(利益B)

BEPS2.0の最新動向とテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響_図2

一方、Pillar2は、多国籍企業グループの軽課税国への利益移転を抑制し、各国における法人税率の過度な引き下げ競争を防止すべく、多国籍企業が経済活動をいずれの国で行おうとも最低限の租税負担となるように、世界共通の最低法人税率の導入を目指す取組みです。

図3 Pillar2が目指す目的

BEPS2.0の最新動向とテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響_図3

原則的には、連結売上高が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループに属する構成事業体について、GloBEルール、いわゆる所得合算ルールと最低税率に関するルールが適用されます。ルールが適用される多国籍企業グループにつき、国・地域ごとにGloBEルールに従って計算される実効税率(以下、「ETR」)が最低税率である15%を下回る場合には、当該国・地域に所在する構成事業体についてGloBEルールに基づく課税が生じうることとなります。

図4 Pillar2-GloBEルール(最低税率)のイメージ図

BEPS2.0の最新動向とテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響_図4

2022年5月時点の最新状況としては、Pillar2に関してコメンタリーが公表され、より詳細な運用案が示されて、関係者からのコメント・意見が求められている状況ですが、現状では、GloBEルールに関する税務手続きは、GloBE情報申告書の提出を通じて行われるとされています。GloBE情報申告書は、その国・地域に所在する構成事業体またはその構成事業体の代理である指定現地事業体(Designated Local Entity)のいずれかが提出することが原則とされています。ただし、その報告会計年度において、最終親会社または指定申告事業体(Designated Filing Entity)が、年次GloBE情報申告書の自動交換規定を定める適格な権限のある当局間の合意(Qualifying Competent Authority Agreement)を締結している国・地域に所在する場合は、その最終親会社または指定申告事業体が包括して申告書を提出することができるとされています。したがって、実務的には、多国籍企業が展開するすべての国において、個別にGloBE情報申告書を提出することまでは求められないものと考えられますが、最終的な税務申告の手続きは、各国の税制に落とし込まれることで発効しますので、今後各国での制度化の動きを注視していく必要があります。

GloBE情報申告書は、会計年度の期末から15ヵ月以内(経過措置年度においては18ヵ月以内)に提出しなければならず、今後公表されるGloBE Implementation Frameworkに従って策定される標準テンプレートを用いて提出されることとなります。GloBE情報申告書に記載する内容は、以下の項目を含む見込みです。

  • 構成事業体の基礎情報(納税者番号や所在する国・地域など)
  • 多国籍企業グループの全体の企業ストラクチャー
  • 国・地域のETR、構成事業体およびJVグループの構成員のトップアップ税を算出するために必要な情報
  • IIRに基づくトップアップ税およびUTPRに基づくトップアップ税の配賦額
  • GloBEルールの規定に従って行われた選択(Election)の記録
  • GloBE実施フレームワークにおいて合意されたその他の情報

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2.テクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響

以下では、BEPS2.0(Pillar1およびPillar2)が、テクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターをはじめとする多くの企業に対して及ぼす影響について考察します。

2.1.Pillar1に関して

  • Pillar1の利益Aが適用される可能性のある多国籍企業は、利益Aの計算方法・納税手続きについて、今後の議論と制度化の進展を注視することが求められる。
  • 有価証券報告書等に基づき開示セグメントを作成している場合、セグメントごとに利益Aの適用をするか検討される。複数の異なる事業を有するIT・通信企業の場合、セグメント間の業務が相互に関連していることが想定されるため、セグメント間の費用配賦・付け替えの状況についても精査を行い、各セグメントの収益性を把握することが重要となる。
  • 利益Bは、その適用範囲に関して、企業規模や事業内容による制限が設けられない見込みであり、多くの多国籍企業にとって、各国・各市場における機能・リスクを踏まえた、移転価格・対価設定の管理がより重要となる。
    特に、プラットフォームやテクノロジーを通じて、国境をまたいだ電子サービスの提供やコンテンツの提供、ECビジネスを展開するようなビジネスモデルでは、その国に拠点がなくても利益Bの対象になる可能性が高いため、制度が導入された際の税務インパクトの試算と、商流や価格設定方針の見直しを検討することが推奨される。
  • あわせて、無形資産(商標やブランド、システムやノウハウ)が重要な収益の源泉となるテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターに属する企業では、無形資産に起因する所得配分・対価設定をどうするか、サプライチェーン全体を通じて、機能・リスクに見合った所得配分と対価設定をどう達成するのか、利益Bの制度導入にあわせて検討することも必要不可欠である。

図5 移転価格管理の重要性

BEPS2.0の最新動向とテクノロジー、メディア、通信(TMT)セクターへの影響_図5
  • さらに言えば、ITサービスの場合、無形資産の使用と、無形資産を用いたサービスとの線引きがあいまいであり、対価の回収方法・取引形態をどうするか、取引の種類ごとに設定することが、移転価格の観点のほか、間接税の観点からも重要である。したがって、サービスと無形資産取引に関してその区分を細分化し、利益B導入にあわせて取引ごとの対価設定を検討することが、予期せぬ税務リスクを排除するうえで重要となる。

2.2.Pillar2に関して

  • Pillar2については、最終親会社が各子会社の情報を収集し、その上で申告納税を行うという性質上、税額への影響と同様に、実務的な税務コンプライアンス対応の負担が懸念される。
  • 該当する企業においては、モデルルールに基づき、税額への影響の試算および実務的な税務コンプライアンス対応への検討、すなわちグローバル税務ガバナンス体制を整備した上での海外子会社の税務ポジションの理解や、GloBEルール上の各種選択の必要性についての検討などを進めることが肝要である。
  • 海外子会社・関連者の情報については、サブ連結している会社群の場合、傘下の各社の関連財務・税務情報の入手も必要になるため、連結決算の概念の枠を超えて、これまで以上に個別・個社の情報を効率的に取得するかといった、実務的な手間についても考慮しておく必要がある。

執筆者

KPMGジャパン
テクノロジー・メディア・通信セクター
パートナー 須崎 洋介

KPMG Japan technology insight