グローバル
ベンチャーキャピタルによる年間投資額が過去最高となり、グローバルベンチャーキャピタル市場は記録更新ラッシュ
2021年第4四半期(2021年10-12月)における世界のベンチャーキャピタル(以下、VC)による投資総額は、過去最高に迫る1,714億ドルとなりました。資金調達がしやすかったこと、年間を通してイグジットによる大きなリターンが得られたこと、企業やファミリーオフィスやその他多様な非従来型の投資家の参加が増えたことなどが市場全体の魅力を高めました。
- 2021年:記録更新の年
- VC投資急増のカギはユニコーン企業
- 引き続き増すESGの重要性
- 記録的な数字で締めくくられた2021年
2022年に注目すべきトレンド
2022年もVCによる投資は世界の大半の地域において堅調に推移すると予想されており、アフリカ、中東などの発展途上にある地域に投資家の注目を集めると考えられます。また、フィンテックは、引き続き最も注目される投資分野であり、ESGに沿ったVC投資も増加するものと予想されます。
米国
米国のVC投資は4四半期連続で記録更新
米国のVC市場は、2021年第4四半期に4年連続でVC投資額の記録を更新しました。核融合発電開発会社Commonwealth Fusion Systems、フードデリバリー・消費財企業のGopuff、宇宙旅行企業のSierra Space、サイバーセキュリティ企業のLacework、電子商取引アグリゲーション企業のThrasioなどが10億ドル以上の資金調達を行いました。
- 資金調達は1,000億ドルを超えて急増
- フィンテックは統合を視野に入れる構え
- 米国でのイグジット活動は記録を大きく更新
- VC投資家の興味を引くクリーンテックの定義の進化
- 2021年第4四半期はVC投資が過去最高になる見込み
2022年に注目すべきトレンド
米国でのVCによる投資は2022年第1四半期も堅調に推移し、ヘルステック、B2Bサービス、クリーンテックなどが勢いを増すと予想されます。
南北アメリカ
南北アメリカでのVC投資は引き続き堅調、ラテンアメリカでは4つの新たなユニコーン企業が誕生
2021年第4四半期の南北アメリカにおけるVC投資は非常に好調でした。カナダも、VC投資額の第4四半期ベースでは過去最高となりました。ブラジルは2021年第4四半期では多少低下したものの、同国のVC投資額としては過去2番目に良い四半期となりました。
- 超大型取引が引き続き大口取引である一方、初回の資金調達は記録的な成長を遂げる
- カナダのベンチャー企業への投資には時間がかかるが、投資家の関心は高いまま
- 急速に成熟するラテンアメリカのVC市場
- 四半期だけで投資額が950億ドルを超える
2022年に注目すべきトレンド
南北アメリカでは、2022年第1四半期に向けて活発なVC投資が見込まれています。今後も米国がこの地域のVC市場の中心であり続けると予想されますが、ラテンアメリカには強力で国際競争力のある企業が続々と登場すると考えられます。
ヨーロッパ
ヨーロッパ全体では2021年に記録的な投資が集まる
2021年を通してヨーロッパにおけるVCによる投資は非常に活発で、英国、ドイツ、イスラエル、アイルランド、フランス、スペイン、北欧地域など、多くの国・地域で記録的な投資が行われました。堅調な資金調達環境、評価額の上昇、ユニコーンの増加により、ヨーロッパのVC投資家にとって絶好の機会であることが浮き彫りになりました。
- デジタルバンクによる2021年第4四半期の大規模な資金調達ラウンドでフィンテック分野がより活発に
- 急成長を遂げるヨーロッパのHRテック事情
- COP26によって高まるESGへの関心
- 英国の年間VC投資額が過去最高の約2倍に
- ドイツではVCからの資金調達が大幅に増加
- イスラエルでのVC投資は四半期最高額を記録
- 国際的な投資家の注目を集める北欧地域
- 政府によるスクーター規制の整備が進むアイルランドではマイクロモビリティに注目
- ヨーロッパでは2021年に史上最高を記録
2022年に注目すべきトレンド
ヨーロッパにおけるVCとCVCの投資は、2022年の第1四半期も引き続き堅調に推移すると予想されます。フィンテック、デリバリー、ヘルステックは引き続き注目分野ですが、インシュアテックやESG投資も勢いを増し、アグテック(AgTech:Agriculture Technology)も大きく注目されると考えられます。
アジア
2021年第4四半期のアジア地域でのVC投資の好調により年間記録を更新
アジアでのVCによる投資は、2021年第4四半期は堅調を維持し、VCによる年間投資総額は過去最高を更新しました。インドネシアのJ&T Express(25億ドル)、中国のRegor Therapeutics(15億ドル)、GTA Semiconductor(12億5,000万ドル)、Nanjing LingHang Technology(12億ドル)、シンガポールのMoonPay(5億5,500万ドル)、インドのPharmEasy(3億5,000万ドル)など大規模な資金調達が行われました。
- AIで成功した中国は2021年第4四半期の投資に注力
- インドでは過去最高の前四半期の記録を下回るが、VCによる投資は堅調
- 2021年第4四半期にインドでのIPO活動が急増
- 堅調に終わった2021年
日本のVC市場は記録を更新し、成熟を維持
日本は、2021年第4四半期もVC投資が活発に行われ、過去最高の45億ドルを呼び込みました。スタートアップエコシステムの急速な進化、新興企業数の増加、資金調達額の増加は、日本への注目を集め、海外からのVC投資をもたらす助けになりました。2021年第4四半期には、バイオテック企業のAculysPharmaとスニーカーマーケットプレイス企業のSoda Incが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから日本のスタートアップとして初めて投資を受けました。
2022年に注目すべきトレンド
アジアにおけるVC投資は、2022年第1四半期に向けて堅調に推移するものと予想されます。中国では経済のグリーン化に力を入れており、電気自動車(EV)の最大市場を目指していることから、投資の増加が見込めます。インドでは、ユニコーン数のさらなる増加が期待されています。フィンテック、エドテック、eコマースは、引き続きVC投資家の注目分野ですが、これらは小規模な企業が規模を拡大したり、資本力のある大企業に買収されたりすることで統合が進む可能性があります。