交通機関/モビリティ

地方都市における交通機関/モビリティへの満足度は、5大都市と比較して低い結果となりました。過疎化による公共交通サービス需要の減少、労働力不足による減便・撤退などに起因して中・小規模都市では移動が不便な状況に陥っています。さらに、高齢になった際に運転できなくなるかもしれないという不安を抱える住民の増加も満足度の低さに拍車をかけています。よって、このような状況が当てはまる地方都市では無人自動運転を活用した移動サービスが必要不可欠になると考えられます。また、5大都市と同様、地方においても「歩行者の安全性と快適性の改善」といったアクセシビリティの向上が重要視されています。5大都市のみならず、地方においても豊かな生活環境の構築に向けた都市の在り方を再考する時期に差し掛かっています。

教育:将来の労働力の育成

調査からは、教育の重要性に対する認識が十分ではないことが明らかになりました。多くの社会・地域の問題を抱える日本では、自ら課題を発見し取り組むことのできる人材が求められており、イノベーション文化と、それを醸成する教育が必要です。今回の調査では、市民のなかではその意識がまだ希薄であることを示す結果となりました。各地で進むスマートシティに向けた取組みが、イノベーションの社会実装を市民にとって身近なものとし、意識レベルを底上げしていくことが期待されます。

住環境

5大都市、地方都市のいずれも、高齢者、障害者、歩行者に対する優しい街づくりを期待し、さらに地方都市では渋滞緩和や公共交通機関の改善を望む声が高い結果となりました。この背景には、日本社会の高齢化、2021年に開催されたパラリンピック等の影響があると考えられます。また、今後地方都市における住環境のキーワードとして、「高齢者、障害者など多様な人が住みやすいインクルーシブな街づくり」、「MaaS、自動運転等による移動の最適化」、「脱炭素」が注目を集めるのではないでしょうか。

各分野における品質に対する満足度

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医療サービス

地方都市における医療サービスへの満足度は、すべての区分で5大都市を下回りましたが、人口規模に比例し、小規模都市ほど満足度が下がる結果となっています。今後、人口減少・高齢化が進行していくなかで、市民が一方的に医療サービスを享受するのではなく、主体的に健康を管理し、限りある医療資源を踏まえた社会全体の負荷を抑止していくことが重要です。感染症予防への関心の高まりを好機と捉え、健康に関するデータ(PHR: Personal Health Record)による健康・未病の重要性の訴求や遠隔医療等の推進と併せて、予防医療への市民の関心を高めるために官民が連携し、一体的に取り組んでいくことが期待されます。

エネルギー

2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。再エネの大量導入、省エネの推進などの環境変化に対して、企業だけでなく、市民の環境への貢献も求められています。取組みは始まったばかりですが、脱炭素社会への移行は加速しており、市民が世代別にさまざまな取組みを実施していくことで環境意識・行動が高まり、地方都市がより一層魅力的になることが、ひいては地方創生につながっていくものと考えられます。

各都市のエネルギーと資源管理の改善に必要なこと(世代別)

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テクノロジー

さまざまなテクノロジーの導入が進められるなか、調査で評価が高かった項目は、新規性や機能性を重視したものではなく、地域の課題や利用者視点で現状の課題やニーズに適切に対応しているものでした。個々にはレガシーテクノロジーの延長だったり、解決すべき課題の多いものでありますが、技術の進化や複数の技術を組み合わせることで、新たな価値を提供する仕組みとして構築していくことが求められています。新たな華々しいテクノロジーにとらわれることなく、現状の課題や利用者のニーズに適切に対応している試みに焦点を当てることが重要です。

スマートシティテクノロジーソリューションのプラスの影響

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都市課題の解決を目指したスマートシティ実現の方向性

今後、実証から実装へ移行する段階に入ることを踏まえて、課題オリエンテッドのアプローチにより、都市の住民が現時点で認識している課題だけでなく、今後の環境変化も見据えた上で将来的に影響を及ぼす潜在的な課題についても、住民意識の向上と併せた取組みが必要です。そして、産官学等が連携しながら場づくりと人づくりを進めるとともに、課題の明確化、事業化も含めた解決策の策定、地域の合意形成やデータ活用に係るルールづくり等について、地域特性を踏まえた最適解を模索していくことが重要となります。

新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが普及したことから、都市圏の郊外化や勤務地と居住地の分離が進む動向も見られ、郊外および地方都市としては都市中心部からの移住需要を取り込む好機が到来したと言えます。生活の質の向上をアピールすることで、住みたい街として選ばれる街になるためにもスマートシティに取り組むことが、今後より重要になってくると考えられます。

2022年2月25日に本ページに掲載しましたPDF内記載に一部誤りがございましたため、訂正版を掲載しております。
関係各位にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

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