国際会計基準審議会、IFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」を公表
国際会計基準審議会(以下、IASB)は2024年5月9日、IFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」(以下「本基準」という )を公表しました。本基準は公開草案(ED/2021/7)「公的説明責任のない子会社:開示」について寄せられたコメントを踏まえ、審議を重ねた結果として公表されたものです。
国際会計基準審議会は2024年5月9日、IFRS第19号「公的説明責任のない子会社:開示」(以下「本基準」という )を公表しました。
背景
本基準は、IASBが実施した意見募集「2015年アジェンダ協議」に対する利害関係者からのフィードバックに対応して開発されました。これらの利害関係者(主として財務諸表の作成者)は、IFRS®会計基準を適用して連結財務諸表を作成する親会社を有する子会社について、開示要求を削減したIFRS会計基準書の適用を認めるよう要望しました。子会社の多くは自社の一般目的財務諸表の作成に際して「中小企業(SMEs)向けIFRS会計基準」(以下「SMEs会計基準」という)を適用する要件を満たしており、その場合は開示を減らすことが可能です。しかしながら、SMEs会計基準の認識及び測定の要求事項にはIFRS会計基準と異なる部分があることから、親会社の連結財務諸表作成目的のために、子会社がIFRS会計基準に基づく追加の会計記録を維持する必要が生じる点に課題が認識されていました。
本基準の概要
企業は、報告期間の末日現在で次のすべての要件を満たす場合に、連結財務諸表、個別財務諸表又は単体財務諸表において他のIFRS会計基準の要求事項(開示を除く)を適用しながら、本基準の削減された開示要求の適用を選択することが認められます。
- 子会社である。
- 公的説明責任を有していない。
- IFRS会計基準に準拠した、一般の使用のために利用可能な連結財務諸表を作成する最終的な又は中間的な親会社を有している。
上記に係わらず、本基準書における具体的な開示要求事項への準拠のみでは、財務諸表の利用者が取引、他の事象及び状況が企業の財政状態及び財務業績に与える影響を理解できるようにするのに不十分となる場合には、企業は追加的な開示を提供すべきかどうかも検討しなければならないとされます。
次のいずれか※1である場合には、企業は公的説明責任を有しています。
- 企業の負債性金融商品又は資本性金融商品が公開市場(国内又は国外の証券取引所又は店頭取引市場(地方市場及び地域市場を含む))で取引されているか又は公開市場での当該金融商品の発行の過程にある場合
- 主要な事業の1つとして、外部者の広範なグループの受託者として資産を保有している場合(例えば、銀行、信用組合、保険会社、証券ブローカー/ディーラー、投資信託会社及び投資銀行等がこの2番目の要件を満たすことが多い)
※1 「公的説明責任」に関する上記の記述は、SMEs会計基準との整合性が図られています。SMEs会計基準の第2次包括レビューにおける検討が取り込まれており、SMEs会計基準には近く公表される第3版で反映される予定です。
本基準を適用する企業は、財務諸表がIFRS会計基準及び本基準の開示要求に準拠している旨の明示的かつ無限定の記述を注記において行わなければなりません。
本基準の維持方法
本基準は2021年2月28日以前に公表されたIFRS会計基準の開示要求を開示削減の考慮対象としています。それ以外の2024年5月までに追加又は改訂された開示要求の開示削減については、本基準を改訂する公開草案を今後可能な限り速やかに公表する予定です。また、今後新たなIFRS会計基準もしくは基準改訂を公表する際には、それに伴う本基準の改訂も併せて対処する予定です。
適用日
本基準は、2027年1月1日以降開始する事業年度から適用を選択することができます。早期適用も認められていますが、早期適用する場合には、その旨を開示する必要があります。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
アシスタントマネジャー 米田 祥隆