日本におけるサステナビリティ報告2020

本調査は、日経225の構成銘柄である225社のサステナビリティ報告の実態をさまざまな観点から定点観測し、その動向と課題を明らかにすることを目的としたものです。

本調査は、日経225の構成銘柄である225社のサステナビリティ報告の実態をさまざまな観点から定点観測し、その動向と課題を明らかにすることを目的としたものです。

サステナビリティ報告の全般的状況

日経225の構成銘柄225社のうち、223社がサステナビリティレポート、統合報告書、ウェブサイトのいずれか1つ以上でサステナビリティ情報を開示し、138社がサステナビリティ情報に信頼性を付与する第三者保証を受けていた。

  • サステナビリティ情報を開示する企業の割合は前年の97%から99%に上昇しており、サステナビリティ情報の開示は定着している。
  • 統合報告書にはサステナビリティ情報の概要のみを掲載し、詳細はサステナビリティレポートやウェブサイトで開示する企業が多かった。
  • サステナビリティ情報の信頼性に対する情報利用者の要請は高まっており、第三者保証を受けた企業は138社に増加した。
  • サステナビリティ報告においてGRIスタンダードを参考にする企業は多いものの、まだ少数である。
  • 重要課題の決定プロセスと特定された重要課題について開示する企業は169社に増加した。決定プロセスの説明はないが特定された重要課題を開示する30社を合わせると199社に上っている。

 

個別報告項目

気候変動、水資源、人権など、自社の操業やサプライチェーンで生じるインパクトへの対応が求められる領域が拡大している。こうした個別課題に関する開示は拡大傾向が顕著であった。

  • 温室効果ガス排出量の削減目標を開示する企業は、前年の177社から190社に増加した。化学、自動車、医薬品、電力・石油・ガス、商社、精密機器、不動産、繊維では、全企業が温室効果ガス排出量の削減目標を開示していた。
  • 気候変動に伴うリスクをどのように識別、評価、管理しているかを説明する企業は112社、気候変動のリスクと機会がもたらす影響を説明する企業は137社、気候変動のリスクと機会に係るガバナンスを説明する企業は129社と大幅に増加した。
  • TCFD提言が推奨する「2℃シナリオなどのさまざまなシナリオ下の影響」の開示企業は96社だった。今後、TCFD提言に沿った開示のさらなる増加が予想される。
  • 水使用量を開示する企業は190社であり、大きな変化はないが、水使用量に関する目標設定を行う企業は82社となり、前年より11社増加した。
  • 自社の操業における人権の尊重や保護に関する基本的な方針やコミットメントを表明する企業は前年から14社増加した。
  • 人権リスク評価や人権デューデリジェンスのプロセスを開示する企業は98社、人権に関するモニタリング結果を開示する企業は46社と増加している。
  • サプライヤー行動規範を開示する企業は168社、サプライヤーに対するアンケート調査やオンサイト調査を実施している企業は135社と半数を超える一方、サプライヤー調査の結果や是正措置について説明する企業は78社にとどまった。
  • 203社はダイバーシティに関する方針を開示しており、明記する要素として性別、障がい者、国籍、年齢、LGBT等への配慮が挙げられる。
  • 従業員の男女比率を開示する企業は増加しており、管理職の男女比率を開示する企業201社、従業員194社、新入社員の男女比率154社であった。
  • 自社活動をSDGsに関連付けて説明する企業は前年の150社から183社に、SDGsに基づいた重点課題の特定や見直しを行っている企業は前年の134社から159社に増加している。
  • SDGsに基づく目標設定を行っている企業は前年の83社から126社に増加し、半数以上がSDGsに基づき目標を設定し、取組みが行われている。

 

おわりに

日本企業のサステナビリティ報告は進展しているが、求められる水準も高まっており、以下の課題の検討が重要である。

  • 企業にはグローバル基準に準拠した報告が求められると推測され、より堅固な内部統制を整備する必要がある。
  • 情報利用者の期待に応えるには、社会パフォーマンス指標に対し幅広く保証を受けることが期待される。くわえて、企業が賛同する原則やフレームワークにより実施した取組みの定性的な記述情報保証の保証要請の増加も予想されるため、動向を注視する必要がある。
  • TCFD提言に沿った気候変動リスク情報の開示が促進されるとの予想から、TCFD提言に沿った情報開示を行う企業は増加するだろう。段階的な取組み・開示の実行が期待されている。
  • 情報利用者は、課題や問題に対し必要な是正措置が取られているかに注目している。企業には、サプライヤー評価の取組み・結果の情報開示の拡充が期待されている。

 

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