今は小売セクターにとって、自分たちのビジネスの今後について深く考えなければならない時です。小売業者は、将来に影響を与えるトレンド、長期的な事業戦略、および今後の方向性を考える能力を新たに見直す必要があります。
本稿では、現在世界の小売セクターを取り巻く環境に影響を与えている変化を示す重要なシグナルと、市場が変化している理由を探り、将来の有望なビジネスモデルがどのようになるかを解説します。また、今日の「現状維持」から明日の「あるべき将来」に移行する方法を探り、組織を将来へと動かすために必要な、主要な機能と戦略について考察します。

中村 吉伸

KPMG FAS 執行役員パートナー/KPMGジャパン ターンアラウンド&リストラクチャリング(事業再生・事業変革)サービス統括

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ポイント

  • 小売業者が将来的に成功するには、「プラットフォームとしてのエコシステム」、「真のオムニチャネルプレーヤー」、または「ニッチな市場に焦点を当てた小規模なスペシャリスト」のいずれかになる必要がある。
  • 顧客の期待とニーズは急速に変化しており、購入意思決定の主要な要因は、「Value」、「Convenience」、「Experience」、「Choice」、「Privacy and security」、「Purpose」の6つになると考えられる。
  • 小売業者はコストの最適化をさらに進める必要があり、コストの持続的な削減には、「範囲と品揃え」、「不動産の再検討」、「労働力の最適化」、「テクノロジーとサプライチェーンの改善」の4つの手段がある。
  • 組織は、パーパスの測定と評価を計画する方法や、その結果を紹介するために使用するコミュニケーションの仕組みについて検討する必要がある。
  • 小売業者は成功する未来のために、どのビジネスモデルを採用するか決定し、選択したビジネスモデルに必要な機能を強化することが重要である。

変化の兆候 — なぜ小売市場が変化しているのか?

ビジネスモデルとパートナーシップ
実店舗を基礎とした小売業者がその最盛期を過ぎ、オムニチャネルに代表されるプラットフォームとしてのエコシステムが成長するとともに、新たな競争とビジネスモデルの発展が起こっています。小売業者が将来的に成功するには、速度を上げて進化し、プラットフォームとしてのエコシステム、真のオムニチャネルプレーヤー、またはニッチな市場に焦点を当てた小規模なスペシャリストのいずれかになる必要があります。ニューリアリティに向けて変革していくことを選択した小売業者は、将来のビジネスモデルにおいて、プラットフォームをどのように利用すべきかを決定する必要があります。

顧客
小売業が「プッシュ(つまりB2C)」モデルから「プル(C2B)」モデルに移行するにつれて、顧客の期待とニーズは急速に変化しています。今後、消費者の購入意思決定の主要な要因は、「Value」、「Convenience」、「Experience」、「Choice」、「Privacy and security」、「Purpose」の6つになると考えられます。

事業を行うコスト
マージンに対するプレッシャーが高まり続け、バリューチェーンの複数の側面でコストが増加しているという環境において、従来のコスト削減策では、マージンを増加させ、将来の環境変化に対応するには十分ではないと、多くの人々が認識しています。私たちの見解では、今日の環境でビジネスを行うコストを持続的に削減するためには、「範囲と品揃え」、「不動産の再検討」、「労働力の最適化」、「テクノロジーとサプライチェーンの改善」の4つの手段があります。

存在意義(パーパス)
パンデミックは、パーパス主導型の組織に対する消費者の好みをより鮮明にしました。調査によると、パーパス主導型のブランドは、より高い価値の上昇、より良いKPI、およびウォレットシェアの向上に繋がる可能性のある好循環を享受しています。組織は、パーパスの測定と評価をどのように計画するかを検討する必要があります。また、これらの結果を多様な人々に紹介するために使用するコミュニケーションの仕組みについても慎重に検討する必要があります。

未来への展望 — 小売市場はどのようになるか

今後5年から10年の間に、小売業者が変化する顧客の期待と市場のダイナミクスに対応しようと進化するにつれて、7種類のビジネスモデル(「プラットフォームベースのビジネス」、「ブランド」、「多国籍小売業者」、「バリュー小売業者」、「カテゴリースペシャリスト」、「独立系企業/協同組合」、「国民の信頼を得た企業」)が出現する、と私たちは予想しています。小売業者は、将来どのビジネスモデルを採用するか決定する必要があり、そうしないとビジネスが失敗するリスクがあります。
選択したビジネスモデルによって、ビジネスを遂行するために必要な基本的な機能はそれぞれ異なります。私たちは、将来の「消費者向け商取引」への道を切り開くために非常に重要となる主要な機能を定義しました。「インサイト主導型戦略とアクション」、「革新的な商品・サービス」、「顧客経験価値を中心とした考え方」、「シームレスな取引と情報連携」、「柔軟なオペレーションと業務プロセス」、「生産性の高い組織体制と人材」、「デジタルを活用したテクノロジーアーキテクチャ」、「パートナーシップ・アライアンス・エコシステム」の8つの機能です。これらの機能を強化することで、小売業者は、組織のすべてのプロセス、機能および関係を、顧客の期待に応え、ビジネス価値を創出し、持続可能な成長を推進することに集中させることが可能となります。

今日から明日への移行 — どのように移行を実現するか

明日の「あるべき将来」に移行するための最初のステップは、どの有望なビジネスモデルが組織に適しているかを判断することです。その際、何を達成したいか、どこで勝負したいか、そして、どのように実行して勝ちたいかに留意する必要があります。次に、主要な関連する機能のそれぞれが成功にどのように影響するかを検討します。現在の機能、将来の必要事項、およびギャップを評価するための実用的かつ全体的なアプローチを採用し、この情報を活用して成功への明確なロードマップをデザインすることが重要です。そして、優先度の高い機能の領域で戦略をテストおよびパイロット運用し、戦略を検証するだけでなく、組織全体の変化のより大きな可能性を活用する機会を明らかにします。最後に導入です。企業全体の戦略を活性化し、調整し、改善することが重要です。