日本企業の統合報告の取組みに関する意識調査2021

企業が統合報告書の発行を進める背景や、有価証券報告書の記述情報充実への取組み状況について、KPMG主催のセミナーでのアンケートから分析しました。

企業が統合報告書の発行を進める背景や、有価証券報告書の記述情報充実への取組み状況について、KPMG主催のセミナーでのアンケートから分析しました。

調査の概要

統合報告書の作成状況、統合報告の実現にあたっての課題、統合報告書と有価証券報告書の作成部門の連携状況など、8項目について、KPMGジャパンが2021年3月に開催した企業報告セミナーの申込者・参加者から得たアンケート結果を中心に、2012年から10年間のセミナーで得たアンケート結果(のべ3,222名分)を分析しています。

調査項目

Q1 「統合報告書」の作成状況は?
Q2 「統合報告書」の主要な読み手に誰を想定するか?
Q3 「統合報告書」はどの部門(誰)が主体となって推進すべきか?
Q4 「統合報告書」において、開示の充実を図りたい領域は?
Q5 統合報告の実現にあたって、最も大きな課題は?
Q6 有価証券報告書の記述情報の充実にあたっての課題は?
Q7 有価証券報告書の作成部門と統合報告書の作成部門の連携の状況は?
Q8 統合報告の信頼性を向上させる観点から、報告書の一部または全部を対象とした保証業務について、どう考えますか?

調査結果のサマリー

統合報告書における今後の課題は「マテリアリティ」

統合報告書において、最も説明の充実をはかりたい領域は「マテリアリティ」との回答が最多でした。「日本企業の統合報告に関する調査2020」の結果からも、マテリアリティの説明充実が、今後の課題であることがわかります。
また、拡充を図りたい領域として、次に回答の多かった「リスクと機会」、「戦略と資源配分」との関連性がわかる説明とするためには、コネクティビティも、この後の課題になっていくとみています。

図1

統合的思考にもとづく経営の実装が、統合報告の実現に向けた課題に

統合報告の実現にあたって最も大きな課題を聞いたところ、回答が最も多かったのは「統合的思考にもとづく経営の実装」となり、回答全体の約半数を占める結果となりました。統合的思考の実践を伴う、より本質的な取組みが必要だとの認識の高まりが反映されていると考えられます。このような取組みは、統合報告書だけでなく、有価証券報告書の記述情報を含む、企業のコミュニケーション全体の改善、さらには企業価値の向上に寄与するものと考えます。

図2

有価証券報告書の記述情報の充実のカギは、中長期的な視点と経営の実態を示す情報の反映

2020年3月期の有価証券報告書から「記述情報の開示に関する原則」が適用されたことに伴い、有価証券報告書の記述情報の充実にあたっての課題についても調査を行いました。最も多かった回答は、「取締役会や経営会議の議論を反映した中長期視点の情報の反映」、続いて「経営方針・戦略の進捗状況や、その達成度合いを示す指標の選定」、「有価証券報告書の記述情報に記載するマテリアルな情報の決定」となりました。中長期的な視点と経営の実態を反映した報告の推進をいかに反映するかが、有価証券報告書の記述情報充実のカギになるとの認識の高まりがみられます。

図2

詳細はPDFをご覧ください。

執筆者

KPMGジャパン
コーポレートガバナンス センター・オブ・エクセレンス(CoE)
統合報告タスクフォース

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