法務業務DXを実現するためのリーガルオペレーションズとは
法務業務のDXの実現に向けて、法務機能の現状を整理する際に有効となるリーガルオペレーションズ(LO)について解説します。
法務業務のDXの実現に向けて、法務機能の現状を整理する際に有効となるリーガルオペレーションズ(LO)について解説します。
「新常態時代の企業法務」第14回。法務業務のDXを実現するためには、機能の現状を体系的に整理することが重要です。今回は、法務業務DXの鍵となるリーガルオペレーションズ(LO)について解説します。本連載は、日経産業新聞(2020年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。
日本企業で法務部門のデジタルトランスフォーメーション(DX)はあまり進んでいない。法務をIT(情報技術)で効率化する「リーガルテック」の企業が勃興する中、IT関連の知見を持ち合わせていない法務担当者では適切な評価・選定ができず、トライアルを繰り返すだけで本格導入に至らないケースが多いからだ。
ITの知識だけではない。複数部門にまたがる法務業務のDXを進めるにあたっては、社外を含む関係各所との調整が必要となる。ところが、法的な審査や助言を中心に業務をしてきた法務部門にとっては、こうした取組みはハードルが高いのである。
このような困難を乗り越えてDXを推し進めるには、各関係部署の理解・協力を得るべく、法務機能の現状・目指す姿を体系的に整理することが第一歩となる。機能の体系的整理にあたっては、「リーガルオペレーションズ(LO)」と呼ぶ手法が活用できる。
LOは、法務業務の効率化・高度化に向けた枠組みのことで、法務部門の業務・機能を12~15項目に整理している。LOに特化した非営利団体の「コーポレート・リーガル・オペレーションズ・コンソーシアム(CLOC)」や、世界最大級の企業内弁護士の団体「アソシエーション・オブ・コーポレート・カウンセル(ACC)」が提唱し、まとめた。
これらの機能のすべてを一企業の法務部門で整える必要はない。しかし、その企業の法務部門としてどんな役割を果たすべきなのか、ミッションやビジョンの設定には徹底してこだわりたい。法務業務を効率化・高度化するDXを実現するには、まずミッションを明確にすることが欠かせない。
たとえば、コスト効率を最大化しつつ事業部門における法的リスクを低減することをミッションとするのであれば、パフォーマンス(成果)分析や社外弁護士の管理、財務管理などが重要な機能となる。一方、法規制の変化に着目した新規ビジネス創出への貢献をミッションとするのであれば、計画策定や組織間コミュニケーションにより比重を置くこととなる。
DXはデジタルツールの活用が目的ではない。ミッション実現に向けて業務を効果的に遂行するデジタルツールを評価・選定するのが本来的なDXの検討ステップであり、設定したミッションは難しい変革を達成する礎ともなる。
リーガルオペレーションズで整理した法務の主な機能
戦略 | ミッション・ビジョンの設定、計画策定・進捗管理 |
業務プロセス | 業務の分割・割り当て、パフォーマンス分析 |
体制 | 他部門との連動、組織間コミュニケーション |
人材 | 人材育成、人事管理 |
外部リソース・コスト | 社外弁護士の管理、財務管理 |
情報・IT | ナレッジマネジメント(知識管理)、テクノロジー管理 |
執筆者
KPMGコンサルティング
コンサルタント 栗山 裕羽
日経産業新聞 2020年10月5日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。