IFRICアジェンダ決定

IFRS財団の基準設定マニュアルである「デュー・プロセス・ハンドブック(Due Process Handbook) 」のアップデートは、IFRS解釈指針委員会(以下「IFRIC」または「解釈指針委員会」という)及びそのアジェンダ決定の業務に焦点を当てています。

IFRS財団の基準設定マニュアルである「デュー・プロセス・ハンドブック)」のアップデートは、IFRS解釈指針委員会及びそのアジェンダ決定の業務に焦点を当てています。

ポイント

  • IFRICのアジェンダ決定の権限及び役割の確認
  • アジェンダの最終決定に関するデュー・プロセスの強化
  • 次のステップ - 企業がIFRICの審議及びアジェンダ決定に関与する必要性

IFRS財団の基準設定マニュアルである「デュー・プロセス・ハンドブック(Due Process Handbook)※1 」のアップデートは、IFRS解釈指針委員会(以下「IFRIC」または「解釈指針委員会」という)及びそのアジェンダ決定の業務に焦点を当てています。アップデートには、以下の事項が含まれています。

  • 企業が、アジェンダ決定に含まれる説明資料を反映したIFRS(R)Standard(以下、IFRS基準)の適用を要求されることの確認
  • 企業がアジェンダ決定の検討及び結果として必要となる会計方針の変更の適用に十分な時間を与えられることの説明
  • IASB(以下「ボード」という)をアジェンダの最終決定に正式に関与させることによるデュー・プロセスの強化

解釈指針委員会で審議される論点は重要であり、そのため結果としての会計方針の変更が企業の財務諸表に与える影響も重要となる可能性があります。次の財務諸表(期中または期末)になんらかの変更が必要となるかもしれません。

「IFRICのアジェンダ決定の権限及び役割はかつてないほど明確になっており、IFRICの審議及びその結果としてのアジェンダ決定に企業が関与する必要性も、かつてないほど高まっています。」

Brian O’Donovan,
KPMGパートナー兼IFRS解釈指針委員会メンバー

※1デュー・プロセス・ハンドブック(「ハンドブック」という)は、IASB及びIFRS解釈指針委員会に適用されるデュー・プロセス及び原則を記述しています。IFRS財団の評議員会に設けられているデュー・プロセス監督委員会(Due Process Oversight Committee, DPOC)は、デュー・プロセスの遵守状況の監視及びデュー・プロセス手続のレビューに責任を有しています。

IFRICのアジェンダ決定の権限及び役割の確認

解釈指針委員会が基準設定プロジェクトをアジェンダに追加しないと決定する場合は、その後に理由を説明する「アジェンダ決定」を公表し、IFRS基準の原則及び要求事項の適用方法を解説することもあります。

デュー・プロセス・ハンドブックのアップデートは、アジェンダ決定がIFRS基準の要求事項を追加または変更できないことを確認する一方で、適用の一貫性の改善を目的としています。ただし、アジェンダ決定の説明資料はその権威がIFRS基準から生じており、適用方法に関する追加的な洞察を提供することもあります。したがって、企業は、その会計処理がアジェンダ決定の内容と異なる範囲において、会計方針を変更することが予想されます。

アジェンダ決定の適用時期

アジェンダ決定には発効日や経過措置はなく、可及的速やかに、かつ遡及的に適用することが期待されます。

しかし実際には、アジェンダ決定の適用は難しい場合があります。特に、アジェンダ決定が期末日近くに公表される場合です。なぜなら、会計方針の変更を実施するためには、企業はいくつものステップに取り組まなければならないと考えられるからです(新しい方針の適用や開示の提供のための詳細な情報の収集、またはプロセスやシステムの変更等)。

デュー・プロセス・ハンドブックのアップデートは、アジェンダ決定の結果として会計方針を変更するか否か、及びその変更を適用するか否かを決定するために企業が「十分な時間」を与えられるべきであるというボードの見解を反映しています。

では「十分な時間」とは、何を意味するのでしょうか?解釈指針委員会の委員長であるSue Lloyd氏は、「Agenda decisions - time is of the essence」と題する論説の中で、ボードは「何年もではなく数ヶ月間と考えている」と述べています。

アジェンダの最終決定に関するデュー・プロセスの強化

IFRS基準の一貫した適用を支えるアジェンダ決定の重要性を考えると、このアップデートは、ボードをアジェンダの最終決定に正式に関与させることによりデュー・プロセスを強化しています。アジェンダ決定の公表前に、ボードメンバーは以下の事項に反対するか否かを問われます。

  • 基準設定プロジェクトをワーク・プランに追加するべきではないという解釈指針委員会の決定
  • アジェンダ決定はIFRS基準の要求事項に追加または変更を行わないという解釈指針委員会の結論

アジェンダ決定は、ボードメンバーの4名以上が反対する場合には公表されず、ボードは対処方法を決定します。  

企業がIFRICの審議に関与する必要性

企業は、アジェンダ決定の内容と異なる会計方針の有無を確認するために、アジェンダ決定の草案及び最終決定が公表されているIFRIC Updatesをレビューすることを推奨されます。解釈指針委員会が審議する論点は重要であり(例:リバース・ファクタリング及びクラウドコンピューティング)、したがって企業の財務諸表に与える影響も重要となる可能性があります。

アジェンダ決定には、規制当局その他が非常に関心をもっています。また企業は会計処理の適用に「十分な時間」を与えられますが、より多くの時間が必要であることを示す事実及び状況がある場合を除いて、企業は結果としての会計方針の変更を、アジェンダ決定の公表後の次の財務諸表(期末または期中)から適用すると予想されることになります。

英語コンテンツ(原文)

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