日本の製造業に足りない「積極的な変革」

「製造業のDX ハイブリッド社会に向けて」第1回 - 国際競争力強化の一環としてデジタルトランスフォーメーションが掲げられている日本の製造業について、今後何をすべきなのかを考察する。

国際競争力強化の一環としてデジタルトランスフォーメーションが掲げられている日本の製造業について、今後何をすべきなのかを考察する

日本の製造業における国際競争力強化の一環としてデジタルトランスフォーメーション(DX)が掲げられている。ただ、この分野で先行する米欧、中国企業との比較では周回遅れである。日本の製造業はどう対応すべきか。本連載ではDXが日本の製造業にもたらす影響を「トレンド」「経営者」の視点から考察し、何をすべきなのかを6回に渡り考察する。

過去10年、世界では環境問題、都市部への人口流入、富の二極化が加速し、社会に与える影響が顕著になった。その影響で社会も、所有(消費)偏重から、利用と所有のバランスを重視するハイブリッド(併存)型社会へと大きく変化しつつある。
KPMGインターナショナルが2019年に最高経営責任者(CEO)に実施した調査では、⾃社が競合に破壊される前に、自らが業界の破壊者となるよう積極的に変革を推し進めていると報告した。かたや日本の経営者は、この変化に対して保守的で、変革への躊躇が見受けられる。

変化の1つである利用型サービスの市場規模は、ある調査会社によると2025年に約36兆円まで拡大するとの推定がある。年平均成⻑率は30%を超えており、その成長を支えている1つの要因がユニコーン企業だ。
調査会社の米CBインサイツの2019年の調査結果によると、世界の主要国におけるユニコーン企業数は335社。国別では米国・中国・英国・インドと続くが、その他の中にも日本企業は1社も入っていない。
ユニコーン企業で有名な米ウーバーの最大の特徴は「機動性」である。2009年3⽉に会社設立、2020年に11年目を迎えるが、2018年の売上高は約1兆2000億円、8年間で3つの事業を世界で展開している。

もう1社はもはやユニコーン企業を卒業してはいるが米アマゾン・ドット・コムである。利用型サービスとして代表的なものはアマゾンウェブサービス(AWS)だ。ただ、ここではあえて最大の特徴である多様性について言及したい。

同社は過去20年間、毎年商品種別が増えており、取扱い種類は2億種類以上にのぼる。2018年には人工知能(AI)スピーカーによって製造業への転身を果たした。同製品はAIを持ち、依頼者の利用頻度が増えれば、購買履歴や天候などの外部情報などの相関関係から次の購買行動を予測し、依頼者に合ったレコメンデーション(推奨)で商機を促す。家庭内にこのような製品の横展開が進みだすと、製品中心だった日本のエレクトロニクス企業は競合にすらなれないのが現実だ。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日刊工業新聞 2020年6月18日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日刊工業新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

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