IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 形態の異なる政府援助を企業はどのように会計処理すべきか?
IFRS適用企業における、COVID-19が様々な政府援助の会計処理に及ぼす影響の解説記事です。
IFRS適用企業における、COVID-19が様々な政府援助の会計処理に及ぼす影響の解説記事です。
ハイライト
論点は何か?
世界各国の政府は、COVID-19コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた現状において、企業への支援を行うために、様々な考えうる対策を検討しています。
IFRSでは、政府援助の会計処理は援助の性質によって異なります。当該援助をいつ認識すべきか、またどのように測定すべきかについて、基準の要求事項は大きく異なります。したがって、企業は、適切な会計処理を決定するために、どの特定の基準が適用されるかを識別する必要があります。
政府援助の会計処理は、例えば、政府援助の性質と種類によって大きく異なります(例えば、補助金、融資、税制優遇または保証など)。適用される具体的な会計要件を識別することが重要です。
詳細説明
一般的な政府援助の形態の会計処理は以下のとおりです。このリストが全てではないことにご留意ください。
政府補助金
政府補助金とは、企業の営業活動に関する一定の条件を過去に満たしたこと又は将来において満たすことの見返りとして、企業に資源を移転することです。企業は、政府補助金の会計処理について、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」を適用します。
IAS第20号では、企業は、政府補助金が関連する条件を満たし、補助金を受け取ることについて合理的な保証がある場合に、政府補助金を認識します。企業は、政府補助金を規則的に、かつ、補助金で補填することを意図している費用の認識に従って、損益として認識します。[Insights into IFRS第16版 4.3.40]
所得税
企業の課税所得や当期税金負債に影響を与える可能性のある給付(特定の種類の所得に対する減税、追加の税額控除、軽減税率、繰越欠損金の使用期間の延長など)の形態での政府援助は、一般的にIAS第20号ではなく、IAS第12号「法人所得税」に従って会計処理されます。
例えば、政府が法人税率の引き下げのために法人税法の改正を予定している場合、企業は、IAS第12号の詳細な要求事項に従って、改正の影響を認識及び測定します。これには、繰延税金資産が回収可能かどうかの検討も含まれます。企業は、法改正が実質的に制定された場合にのみ、税率変更の会計処理を行います。[Insights into IFRS第16版 3.13.480]
政府の所有持分
企業の所有持分に対する政府の関与自体は、IAS第20号の適用範囲には含みません。例えば、政府が子会社の所有持分を取得した場合、親会社はIFRS第10号「連結財務諸表」を適用し、企業が子会社の連結を継続すべきかどうか評価し、該当する場合には処分又は一部処分の会計処理をする必要があります。
政府が企業に支援を提供しており、政府が当該企業の株主でもある場合、企業は、政府が株主としての立場で行動しているのか、政府としての立場で行動しているのかを評価する必要があります。これにより、企業が政府の支援をどのように会計処理するかが決定されるでしょう。[Insights into IFRS第16版 4.3.10]
財及びサービスの供給
企業の通常の取引活動と区別できない政府との取引は、政府補助金ではありません。
例えば、企業が通常の活動の成果物である財やサービスを政府に供給している場合、一般的にはIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を適用することになります。これには、IFRS第15号における契約の存在の規準を満たしている場合にのみ適用される、収益の会計処理が含まれます。
政府の融資と保証
企業は、IAS第20号に基づき、一般的に、市場金利よりも低金利の政府からの借入金による便益を政府補助金として会計処理します。企業は、IFRS第9号「金融商品」に基づき、当該借入金を会計処理します。政府補助金の便益は、当初認識時の借入金の公正価値と受け取った金額との差額として測定されます。同様の考慮事項は、企業が新たに行う借入に対する政府保証にも適用されます。
例えば、企業が政府保証付きの借入をしたとします。企業は、貸手から100を受け取ります。政府保証が付されていない借入金の公正価値は90です。当初認識時に、企業は90で測定された金融負債と10で測定された政府補助金を計上します。
開示
企業は、適用する基準の開示規定を適用します。例えば、企業が市場金利よりも低金利の政府からの借入金を受けた場合、IAS第20号で要求される開示とIFRS第7号「金融商品:開示」で要求される開示を行います。政府が株主でもある場合には、IAS第24号「関連当事者についての開示」に基づき、追加的な関連当事者の開示が要求される可能性があります。
また、IAS第1号「財務諸表の表示」では、企業による政府援助の用途を説明する追加的な開示が必要となる可能性があります。
経営者が今すべきこと
- 企業が受け取っている、又は受け取りを希望している政府援助の各形態の一覧を作成します。
- 取引によっては複数の基準が適用される場合があることに留意して、政府援助の各形態にどの基準が適用されるかを決定します。
- 政府援助の形態によっては認識日が異なる可能性があることに留意しながら、政府援助がいつ認識され、どのように測定されるかに焦点を当てて、関連する会計方針を策定します。
- 各関連基準で要求される開示の草案を作成します。
- 継続企業の評価に関して、企業による政府援助の用途および政府が行った措置の影響に関する包括的な開示の必要性を検討します。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部