金融庁、「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」を公表

ポイント解説速報 - 2019年10月25日、金融庁から「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」が公表されました。本調査報告は2017年の第一次報告に続くもので、監査法人のローテーション制度に限らず、より幅広く監査市場の在り方についての分析・検討を行う必要があるとされています。

金融庁が、2019年10月25日に公表した「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第二次報告)」の概要を解説します。

調査報告書のポイント

  1. パートナーローテーション等の実態調査の結果、大手監査法人ではパートナーローテーション制度を確実に遵守するようシステム整備も含めて対応していることが確認された。他方、パートナー以外の立場(監査補助者)で長期間従事していた者が引き続きパートナーに就任した事例など、全体としてみれば相当な長期間にわたり同一企業の監査に関与していたと見られる事例があった。こうした事例については、「新たな視点での会計監査」の観点から問題が生じるリスクが懸念されるため、制度趣旨に則った実効的な運用を行う必要があると考えられる。
  2. 監査法人の交代に関する実態調査を踏まえると、交代に向けて十分な準備期間を確保し、社内の体制整備を行うことが実務上の混乱等を最小限に抑える上で重要と考えられる。ただし、監査市場は寡占状態であり監査法人交代の選択肢が限られている点は、制度を検討する上で引き続き課題との認識が示された。なお、監査法人間の引継ぎに関しては、前任の監査調書を手作業で書き写す現状の方法が効率性・コストの面で適切か検討が必要と考えられる。
  3. 海外では、既に監査法人のローテーション制度を導入している英国において2019年4月に競争・市場庁(CMA)が調査報告書を公表している。英国では、強制ローテーション制度導入後においても、法定監査市場の寡占状態が改善されないことから、監査市場の競争性を高める観点から本調査報告書において幾つかの提案がなされている。なお、米国では、現在も強制ローテーション制度の導入に向けた議論は進んでいない。
  4. 今後の検討にあたっては、監査法人の交代に際して支障となり得る実務面の課題に対処しつつ、監査市場の寡占状態の改善や非監査業務の位置付けという観点も含め、海外の動向を踏まえながら、より幅広く監査市場の在り方についての分析・検討を行う必要がある。

日本公認会計士協会による会長声明のポイント

  1. 日本公認会計士協会は、監査人の独立性強化に向けて2018年4月に「独立性に関する指針」を改正している(2020年4月1日以後開始する事業年度より適用)。
  2. この改正では、監査業務の依頼人が大会社等である場合の業務執行社員等のローテーションを強化するほか、監査業務の担当者が長期間にわたって監査業務に関与する場合、必要に応じてローテーションを行うなどのセーフガードを適用することを求めている。
  3. 社会的影響度が特に高い会社の監査業務に当たっては、本規定の趣旨を理解した上で、これを確実に遵守するようお願いする。
  4. 日本公認会計士協会は、研修等を通じて、本規定に関する理解促進、周知徹底に努めるとともに、その遵守状況を確認、指導していく。

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