望まれる組織的対応~年金運用ガバナンスに関する実態調査2018(要約版)

年金運用ガバナンスに関する実態調査2018(要約版)

Article Posted date2019-03-29

企業年金の資産運用を担う方々に実施した調査結果を基に、企業が直面する課題やKPMGの提言をまとめました。

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「確定給付企業年金の資産運用に関する実態調査」の実施概要

調査の目的

2018年4月の確定給付企業年金法の改正でガバナンスの強化が求められたことに加え、企業のコーポレートガバナンス改革に伴って自社の企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮が求められており、企業年金運用に関するガバナンスが注目されています。そこで、年金資産運用ガバナンスの現状や課題を調査するため、企業年金の資産運用実務ご担当者に、標題調査に対するご協力をお願いしました。

調査の概要

調査対象

以下に該当する上場・非上場企業(約1,900社)の年金運用実務ご担当者

  1. 連結従業員数300名以上
  2. 有価証券報告書に退職給付制度に関する注記をしている
  3. 確定給付企業年金または厚生年金基金を実施している旨の注記がされている
調査期間 2018年10月 - 11月
調査方法 書面による回答
回答数 211名(回答率:11%)

回答者の属性

回答者の属性

Key Findings

1.多くの年金運用担当者は兼務者で、育成は自助努力:望まれる組織の支援

規模を問わず大半の企業では、他の業務を兼務しながら年金運用に従事している状況であり、かつ年金運用業務への従事割合も50%以下の方が大半となっています。

年金運用担当者の業務従事度

(N=207)

年金運用担当者の業務従事度
 0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%Show all
ほぼ専従 他の年金関連業務と兼務 年金業務以外と兼務

(参考:「年金業務以外と兼務」と回答された方についての当該業務への従事割合)

(N=119)

(参考:「年金業務以外と兼務」と回答された方についての当該業務への従事割合)
 0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%Show all
25%以下 25%超 50%以下 50%超 75%以下 75%超 100%以下

また、人材の配置時には適性や経験を踏まえて人材を選んでいる企業が多いものの、育成については本人の努力に委ねられている企業が多くなっています。

年金運用担当者の育成状況

(N=207)

年金運用担当者の育成状況
 0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%Show all
母体企業が育成を支援している 特に支援はしていない わからない/その他

人材育成の課題として「人材配置の重要性について理解が得られない」という声も目立っており、人材育成に関する組織的対応の確立が課題といえます。

年金運用人材の配置に関する課題

(N=163)

年金運用人材の配置に関する課題
素養にある人がいても教育が困難運用人材配置の重要性について理解が得られない素養のある人材がいない外部専門家の利用外部からの人材採用0%10%20%30%40%50%Show all

KPMGからの提言

企業は、年金運用担当者がより運用業務に注力できるような業務のアサインに留意する必要があります。
また、能力開発を支援する対応も必要と考えられます。実際の教育機会を企業が提供するのは難しいと思われますが、公的機関や外部団体等による年金運用教育機会が拡充され、そうした場への参加を企業が支援することが望まれます。
さらに、適材適所な役割付与を図るために、財務経理部門の参画や外部人材の採用などによってより素養のある人材を配置することも必要と思われます。

2.年金運用状況のマネジメント報告は企業間でばらつき

毎月または四半期ごとに担当役員への報告がなされ、年1回はトップマネジメントへの報告がなされる企業が多くなっていますが、こうした報告がなされていない企業もあり、対応にばらつきが見られます。

階層別に見た年金運用実績の社内報告頻度

(N=203)

階層別に見た年金運用実績の社内報告頻度
取締役会・経営会議CEO、CFO担当役員担当部長0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%Show all
数年に1回 毎年1回 半年ごと 四半期ごと 毎月 不定期 報告なし

KPMGからの提言

マネジメント自身が年金運用の重要性を認識し、定期的な実績報告態勢の整備や運用担当者の育成などを支援することが望まれます。
加えて、マネジメント層が年金運用や年金制度運営の概要を理解できるような取り組みとして、「マネジメント層を対象にした研修の実施」、「シンプルで分かりやすい運用報告の工夫」といった取り組みを推進することも必要と考えられます。

3.まだ認識が薄い利益相反管理

運用能力だけで委託先を決定している企業は全体の30%程度にとどまっており、特に規模の小さい企業で母体企業との取引関係が重視される傾向が見られます。

運用委託先決定における利害関係の考慮

(N=208)

運用委託先決定における利害関係の考慮
 0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%Show all
運用委託先は、母体企業との取引関係(融資・持株等)と無関係に、運用成績や能力を重視して決めている 運用委託先は、運用成績や能力に加え、母体企業との取引関係も勘案し総合的に決めている 運用委託先は、母体企業との取引関係を重視して決めている

KPMGからの提言

確定給付企業年金法で規定されている「受託者責任」を再確認し、加入者や受給者の利益に資するような運用受託機関の選任が図られるよう、選任基準の明確化や定期的な評価の態勢を整えることが必要と考えられます。

4.外部専門家の利用は限定的

外部専門家の利用は全体では40%程度の企業で行われていますが、大企業での利用が目立ち、規模の小さい企業ではあまり利用されていません。

外部専門家の利用状況

(N=206)

外部専門家の利用状況
利用なし独立系年金コンサルタント金融機関系年金コンサルタント受託金融機関その他機関会計ファーム個人の有識者0%10%20%30%40%50%60%70%Show all

KPMGからの提言

上述の取り組みを進めるには、年金運用や年金制度運営に関する専門知識や経験が必要になるため、必要に応じてこれらの事項に長けた外部機関のコンサルテーションを利用することが望ましいと考えられます。

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