信用減損金融資産の治癒(IFRS第9号に関連) - IFRICニュース2019年3月 -アジェンダ却下確定
IFRS解釈指針委員会ニュース(2019年3月) - 信用減損金融資産の治癒(IFRS第9号に関連)については、2019年3月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
信用減損金融資産の治癒(IFRS第9号に関連)については、2019年3月のIFRS-IC会議で審議された内容を更新しています。
Article Posted date
10 April 2019
関連IFRS
IFRS第9号「金融商品」
概要
信用減損金融資産がその後に治癒した(すなわち、全額が返済されたか又は信用減損に該当しなくなった)場合に純損益計算書に認識される金額を、どのように表示すべきか。すなわち、IFRS第9号5.4.1項(b)により信用減損した金融資産の金利収益は、総額での帳簿価額に実効金利を乗じるのではなく、当該金融資産の償却原価(総額での帳簿価額から引当金を控除した額)に実効金利を乗じることによって計算される。これにより信用減損していなければ認識された金利収益とは差額が生じる。金融資産の減損が治癒した後に当該差額を、金利収益として表示できるか、それとも減損損失の戻入れとして表示することが要求されるか。
ステータス
IFRS-ICの決定
IFRS-ICは、2019年3月のIFRS-IC会議で、次の通り指摘した。
- 減損が治癒した場合にもはや不要となった損失評価引当金については、IFRS第9号5.5.8項に基づき、予想信用損失の戻入れとして純損益に認識する必要があるが、この戻入額には、金融資産が信用減損となった期間中の損失評価引当金に係る割引の巻戻しの影響も含まれるために、減損損失の戻入益が、資産の存続期間にわたり純損益に認識された減損損失を上回ることもある。これは、信用減損している金融資産については、総額での帳簿価額ではなく引当金が控除された償却原価に対して実効金利を乗じることによって金利収益が算定されていたので、引当金の割引の巻戻しから生じる減損損失は、総額での帳簿価額に対して算定されていれば認識されていた金利収益と相殺されており、過去に減損損失として明示的に認識されてこなかったためである。
- したがって、IFRS-ICは、純損益計算書において、信用減損金融資産の総額での帳簿価額に実効金利を乗じて計算される金利と、当該資産について償却原価に実効金利を乗じることで認識される金利収益との間の差額は、信用減損金融資産の治癒後には、(過去に認識されなかった金利収益を認識しなおすのではなく)減損損失の戻入れとして表示する必要があるとの結論を下した。
- なお、今後、IFRS-ICスタッフは当該アジェンダ決定における結論に関する教育的資料を作成する予定である。
IFRS-ICは、2019年3月のIFRS-IC会議で、現状のIFRS基準書の要求事項が十分な判断の基礎を示していると判断し、アジェンダに追加しないことを決定した。