ガバナンス・リスク管理・税務に関する社会的責任
ベンチマーク調査の結果では、多くの企業が税務ガバナンスやリスク管理、税務に関する社会的責任についての必要性を認識しているとしています。
ベンチマーク調査の結果では、多くの企業が税務ガバナンスやリスク管理、税務に関する社会的責任についての必要性を認識しているとしています。
近年、グローバル企業が各地域で納付している法人税額に注目が集まっています。税務責任者は、経営執行部、取締役会およびその他の利害関係者に対して、法人としての税務関連状況や姿勢を説明することが求められています。さらに、各国税務当局は、企業の税務コンプライアンスに関するリスクを評価する際、対象会社の税務ガバナンスや税務戦略の実態に着目し評価を行います。企業における透明性の向上や、税務に関する社会的責任など、企業の方針やスタンスをより明確に発信するよう、投資家、メディア、さらに一般市民からの要求は高まりを見せています。また、同時に、税務責任者は、効率的に税務を管理し、収集した情報を報告書やコンプライアンスのためだけでなくビジネス全体を向上させうる洞察をも引き出せるように、絶好の戦略的機会やビジネス上のパートナーを見出すという課題にも直面しています。
KPMGがグローバルで実施しているベンチマーク調査の結果では、税務ガバナンスやリスク管理、税務に関する社会的責任について強固な枠組みを示す必要性を、多くの企業が認識しているとしています。
このようなフレームワークには、取締役クラスの税務ガバナンスへの関与が不可欠となります。多くの税務責任者が戦略的な意思決定に深く関与していると言明するものの、多くの耳目を集めるリスク分野について、税務部門の関与は必須ではなくあくまでも推奨とされるにとどまり、いくつかの注目を集めるリスク分野であっても税務部門の関与が見過ごされている可能性も否定できません。
税務に関する取り組みとリスク管理
回答企業の55%近くが、税務戦略や、税務リスク等も含めた包括的な税務ガバナンスに関する方針を文書化しています。これらの企業のうち半数以上が、毎年これらの文書を検証し、更新しています。回答企業が、最重要課題としている税務戦略は、次の通りです(ランク順):
- 税務コンプライアンス
- 税務リスクの最小化
- 自社の税務対応に関する評判
回答企業の大半は、リスク許容度や税務判断に用いる社内税務規範を策定しており、その内30%の企業がCSRの一環として税務情報の一部を開示し、15%は公開しているとのことでした。また、1/3の回答企業が、今後、税務情報の開示を増やしていく方向であることがわかりました。
税務戦略における取締役会および事業部の関与
回答企業の60%で、取締役会メンバー(または同等の幹部)が税務に関する説明責任を負っています。
税務戦略やより広範な税務ガバナンスの文書において、各部署が税務部門を関与させるべきとする事業活動に、組織再編・M&A・移転価格や国外PE設立などのリスク分野を挙げています。一方で、同等のリスクも考えられるITシステムの変更や新製品の発売、人事異動等については、税務部門の関与を求める税務戦略文書は限定的となっています。
これらの事業活動に伴う税務部門の関与は一般的に任意とされており、法的拘束力のある社内規定において本社税務部門の関与を必須としているのは、回答企業のわずか30%でした。
“グローバルに透明性が高まる今日において、税務プロフェッショナルに求められているのは、いかに卓越したコミュニケーターであるか、およびブランドアンバサダーであるかということと思います。税務責任者の多くは、税務部門がどう組織の価値観を体現し、社会に貢献しつつ企業の価値を上げて行くかという方向性を内外に明確に示す必要性を認識しています。
Jane McCormick, Global Head of Tax, KPMG International”
重要なポイント
- 税務ガバナンスやリスク管理に関する強固な枠組みを示す必要性を、多くの企業が認識しています。
- 回答企業の半数以上が、何らかの形で文書化した税務戦略を有しています。中でも非常に重要な項目として税務コンプライアンス、リスク軽減、税務に関する評価・評判、グループ実効税率があげられています。
- 企業における各部署は、非公式ではあるものの、いわゆるリスクを伴う分野において、税務部門の関与を要求されています。最も一般的なものは、組織再編、M&A、移転価格、国外PEの設置となっています。
- 税務部門の半数が、業務運営計画/事業戦略に深く関与しており、過去2年間で関与割合が増加したと回答しています。