学校法人の勘定科目と会計上の留意点 第2回:収入(2/3)
収入に関する勘定科目のうち、補助金収入、付随事業・収益事業収入の内容と当該勘定科目における会計上の留意点を解説します。
収入に関する勘定科目のうち、補助金収入、付随事業・収益事業収入の内容と当該勘定科目における会計上の留意点を解説します。
ハイライト
補助金収入
(1)取引内容
補助金収入は、国または地方公共団体からの助成金をいい、日本私立学校振興・共済事業団及びこれに準ずる団体からの助成金を含みます。補助金収入の大部分を占めるのが、日本私立学校振興・共済事業団の私立大学等経常費補助金交付要綱で定められている私立大学等の経常的経費(専任教員等給与費、専任職員給与費、非常勤務教員給与費、教職員福利厚生費、教育研究経常費、厚生補導費、研究旅費)に対する補助金(経常費補助金)となります。
なお、都道府県から私立高等学校等に対する経常費補助金の補助対象経費については、各地方自治体により定められているため、各交付要網等で確認する必要があります。
科目名※ |
備考 |
---|---|
国庫補助金収入 | 日本私立学校振興・共済事業団からの補助金を含む。 |
地方公共団体補助金収入 |
※「科目名」は「学校法人会計基準 別表第一 資金収支計算書記載科目」より該当科目を抜粋したもの。
(以下同様)
(2)会計上の留意点
1.補助金を会計処理すべき年度
補助金は、交付決定があった日の属する年度の収入として計上します。したがって、交付決定通知を受けた補助金が期末時点で入金されていない場合は、未収入金を計上することになります。
2.寄付金として処理する必要がある助成金等
国または地方自治体、日本私立学校振興・共済事業団及びこれに準ずる団体以外からの助成金等は寄付金収入として処理します。このため、後援会や設立母体等からの継続的助成金であっても「寄付金収入」として処理することになります。
3.事業活動収支計算書における補助金の計上区分
事業活動収支計算書においては、補助金の計上区分に留意する必要があります。施設設備拡充等のためという目的(交付目的)が明確な場合のみ「施設設備補助金」として特別収支に計上し、それ以外の補助金については、教育活動収支に計上します。
種類 | 計上区分 |
---|---|
経常費補助金 |
|
利子補給を目的とした補助金 | 新校舎の建設の融資に係る利子の一部助成のための補助金については、施設の充実を図ること目的で補助されるものであるため、補助金の交付者の目的に基づき、「施設設備補助金」(特別収支)に計上する。 |
参考:「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)に関する実務指針(学校法人委員会 実務指針第45号)
4.学費軽減のための学校法人に対する補助金
学生生徒等の学費軽減のために、地方公共団体が学校法人に対し授業料等の一部負担等を助成した場合、当該助成金は補助金収入を計上し、授業料収入等を減額します。授業料収入を減額する場合、以下のいずれかの表示方法となりますが、いずれを採用するかは学校法人の任意です。但し、各都道府県からの指示がある場合はその指示に従う必要があります。
なお、当該補助金は交付対象が学校法人であるため、就学支援金の会計処理とは異なることになります。
会計処理方法 | |
---|---|
イ | 授業料収入から直接減額する方法。 |
ロ | 学生生徒等納付金収入の中に「補助金による軽減額」等の控除項目を用いて直接減額する方法 |
参考:寄付金収入・補助金収入に関する留意事項(学校法人委員会研究報告第31号)
5.補助金の返還時の会計処理
収受した翌年以降に補助金を返還する場合は、過年度に一旦確定し、収受したものを、返還命令決定通知に従って返金するため、過年度の修正には該当しません。このため、補助金の返還については、管理経費(支出)として計上し、事業活動収支計算書上も特別収支(過年度修正額)とはしません。
参考:寄付金収入・補助金収入に関する留意事項(学校法人委員会研究報告第31号)
付随事業・収益事業収入
(1)取引内容
付随事業・収益事業収入は、教育研究活動に付随する活動に係る事業の収入と収益事業会計からの繰入収入であり、具体的な科目例は以下のとおりです。
科目名 | 備考 |
---|---|
補助活動収入 | 食堂、売店、寄宿舎等教育活動に付随する活動に係る事業の収入をいう。 |
附属事業収入 | 附属機関(病院、農場、研究所等)の事業の収入をいう。 |
受託事業収入 | 外部から委託を受けた試験、研究等による収入をいう。 |
収益事業収入 | 収益事業会計からの繰入収入をいう。 |
(2)会計上の留意点
1.補助活動収入の基本的取扱いについて
課税上または管理上の理由から一般会計と別に、特別会計として区分経理している場合も、最終的には、一般会計と合算して計算書類を作成する必要があります。
2.補助活動収入の純額表示の方法と相殺の範囲
補助活動事業の収支は、原則として総額表示ですが、純額で表示することも容認されています。(但し、貸借対照表科目、貸借対照表に係る収支項目は相殺表示することは認められていません。)
収支を相殺できる範囲は、収入項目は売上高、受取利息、雑収入、支出項目は売上原価、人件費、経費(借入利息を含む)となっています。これらのうち、売上高と売上原価に属する項目は必ず相殺する必要がありますが、それ以外を相殺の範囲に含めるかは任意です。
純額表示をする場合の表示パターンは、収支相殺の結果によって、以下のように考えられます。
収支相殺の結果 | 大科目 | 小科目 |
---|---|---|
収入超過の場合 | 付随事業・収益事業収入 | 補助活動収入 |
支出超過の場合 | 管理経費支出 | 補助活動支出 |
支出超過の場合※ | 教育研究経費支払 | 補助活動支出 |
※全寮制宿舎等、教育活動の一環として行われている補助活動がある場合は、他の補助活動の収支と区別して相殺。
純額表示を採用する場合、重要であれば、重要な会計方針で純額表示している旨と総額で表示した場合の金額の注記を行う必要があります。
なお、原則どおり総額表示を採用する場合、売上高は「補助活動収入」、売上原価は「補助活動仕入支出(資金収支計算書)、補助活動収入原価(事業活動収支計算書)として表示されます。
参考:補助活動事業に関する会計処理及び表示並びに監査上の取扱いについて(学校法人委員会実務指針第22号)
3.補助活動と収益事業の違い
補助活動は教育活動に付随する収益目的外の事業であり、私学法上の収益事業とは「寄附行為」に規定し、所轄庁の認可を受けた収益目的の事業です。私学法上の収益事業は、学校会計とは別会計とし、企業会計原則に基づく、貸借対照表及び損益計算書を作成する必要があります。
また、補助活動として実施している事業であっても、法人税法上の収益事業に該当する場合には、課税対象になるため、税務申告等を行う必要があります。